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悪夢が続く エイミーside 3
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そうして日々が過ぎ去っていく中、お父様は田舎に別荘を作らせた。
近くには小さな森と綺麗な湖があって、夏場はそこで遊べるよって、笑いながらみんなに言った。
お姉様ははしゃいでいた。私も一緒になってはしゃいだ。
お母様は、うっすら顔に笑みを浮かべた。
お父様はにっこりと笑った。
私はお父様と出かけてばかりであまり気にしていなかったのだけど、お母様はいつもお部屋にこもっている。時々お医者様が家にきては、顔色の悪いお母様を診ていた。
お母様が元気になったらいいなぁと思いながら、私はお父様の話を聞いた。
「今は家を建てている途中でね、夏になったら出来上がるそうだよ。自分の部屋の内装はお前たちが決めておくれ。あとでカタログを届けさせよう。」
「カタログですって! 素敵ね、エイミー。後で私の部屋にいらっしゃいよ! 2人で見合いっこしましょう?」
お姉様が珍しく言った。目がキラキラと輝いていて、眩しかった。久し振りに声をかけてくれたから、私はすごく嬉しかった。
「うん!」
嬉しくって、頰が赤くなっていくのがわかる。お姉様と、2人で決める。お姉様の部屋に招待された。そのことが嬉しくて嬉しくて。
新しいドレスを注文するような、あの不思議な感情に包まれる。
わくわくして、どきどきして、でも、どこか怖い。
不安も横切るような、そんな不安定な幸福感に満たされる。
夕食が終わった後、2人で手を繋いでお姉様の部屋に向かった。
分厚いカタログを使用人に運んでもらって、お姉様の部屋のソファの上に乗る。
「見て! これ、小さな花柄になってるわ! 小さなチューリップで一杯ね……!」
お姉様の上ずった声が、耳に心地よい。
「エイミーはどんな壁紙がいいの?」
「私、なんでもいいの。でもお姉様とお揃いにしたいわ……。」
小さな声で言ってしまった。大好きなお姉様と、一緒のものがいい。頰に熱が集まっていくのがわかった。
「お姉様はお嫌……? わがまま言ってごめんなさい。お姉様が嫌だったら、無理に一緒にしようとはしないわ。ちょっとだけそう思ってしまったの。」
少し顔が強張ったのが分かった。
でも、言ってしまったものはもうなかったものにはできない。
お姉様は少し難しい顔をした後、「エイミーが私の選んだ壁紙でもいいと言うのなら、一緒にしてもいいわ。」と呟いた。
それは小さな小さな声だったけど、私の心を喜びで満たすには充分なものだった。
「ええ、ええ! もちろんよ、お姉様。お姉様が選んで下さった壁紙で私の部屋を彩れるのね。なんて素敵なの…! お姉様は、どんなものがお好き? どれも素敵だから……」
ここまで話したあと、興奮のあまり調子に乗って話すぎてしまった事に気がついた。
少し気まずく感じて、なんと言っていいのかよく分からなくなってしまう。もごもごと最後を締めくくって、無理やりにっこりと笑った。
それでもお姉様は、私に微笑み返してくださった。それは天使のようで、この世のものとは思えないほど美しかった。純粋無垢で、なんの汚れも知らないような真っ白な笑み。
お姉様がカタログを暫く眺めて、あるデザインを見てそれを指差した。
「素敵なデザインだわ……! エイミー、これなんてどうかしら。落ち着いていて、少し暖かさも感じるでしょう? エイミーは習ったかしら、先先代の王様のお妃様のこと。……そう、シフォンヌ様よ。シフォンヌ様の時代に流行った模様を少し取り入れて、また違った新しいデザインになっているの、わかる? シフォンヌ様はクリーム色がお好きだったでしょう? クリーム色が下地になっている上に青味がかったグレーの草花が描かれている物ばかり、身の回りに置いていたんですって。それに少し色をくわえているわね。濁った桃色だわ。柄と色のバランスがとても良いから、これなら落ち着いていて、それでも淑女らしい美しい部屋になるに違いないと思うの。」
お姉様の持っているカタログを見ようと机の上に身を乗り出し、その壁紙を見た。
それは目を奪われてしまうほど高貴な柄のように感じた。なんだか自分には似合わないような、そんな柄。お姉様には似合うけれど、わたしには相応しくないような。
壁紙なんかに似合う似合わないなんてないのではないかと思ったけれど、そうではないような気がする。
それでも、これはお姉様の選んだものなのだから。お姉様が2人で一緒にしても構わないと言って選んでくれたものだから。
私はそれがどれだけ身の丈に合っていない物のように感じても、それを選ばないという選択肢などなかった。
「とっても素敵だわ! お姉様みたいに美しいのね! これが私の部屋になったら、私は毎日これを眺めてしまうと思うわ……。それ程までに素敵なものじゃない? それに、この壁紙は……言い方がおかしいかもしれないけど、お姉様に似ている気がするの。これが私の部屋の壁紙になったら、いつもお姉様と一緒にいる気分になれるわね。それってとっても嬉しい事だわ……! お姉様がお忙しいときも、私がお姉様に会えない時も寂しくないもの。」
心からの笑みが浮かんできて、お姉様にその顔を向けた。引け目を感じるだなんて変な感情だったのだ、と自分の心を落ち着かせながら。
その後、お姉様と一緒にお父様の部屋に行って、壁紙のお願いをした。
お父様は笑っていた。
私の好きな柄だね、と言って。
最初は「お義姉様」になっていたのですが、ここら辺から(これより少し前でしょうか…)「お姉様」になってしまっていることに気がつきました。本編完結致しましたら直そうと思います(道のりが長い…)。読みづらくしてしまって申し訳ございません🙇♀️
近くには小さな森と綺麗な湖があって、夏場はそこで遊べるよって、笑いながらみんなに言った。
お姉様ははしゃいでいた。私も一緒になってはしゃいだ。
お母様は、うっすら顔に笑みを浮かべた。
お父様はにっこりと笑った。
私はお父様と出かけてばかりであまり気にしていなかったのだけど、お母様はいつもお部屋にこもっている。時々お医者様が家にきては、顔色の悪いお母様を診ていた。
お母様が元気になったらいいなぁと思いながら、私はお父様の話を聞いた。
「今は家を建てている途中でね、夏になったら出来上がるそうだよ。自分の部屋の内装はお前たちが決めておくれ。あとでカタログを届けさせよう。」
「カタログですって! 素敵ね、エイミー。後で私の部屋にいらっしゃいよ! 2人で見合いっこしましょう?」
お姉様が珍しく言った。目がキラキラと輝いていて、眩しかった。久し振りに声をかけてくれたから、私はすごく嬉しかった。
「うん!」
嬉しくって、頰が赤くなっていくのがわかる。お姉様と、2人で決める。お姉様の部屋に招待された。そのことが嬉しくて嬉しくて。
新しいドレスを注文するような、あの不思議な感情に包まれる。
わくわくして、どきどきして、でも、どこか怖い。
不安も横切るような、そんな不安定な幸福感に満たされる。
夕食が終わった後、2人で手を繋いでお姉様の部屋に向かった。
分厚いカタログを使用人に運んでもらって、お姉様の部屋のソファの上に乗る。
「見て! これ、小さな花柄になってるわ! 小さなチューリップで一杯ね……!」
お姉様の上ずった声が、耳に心地よい。
「エイミーはどんな壁紙がいいの?」
「私、なんでもいいの。でもお姉様とお揃いにしたいわ……。」
小さな声で言ってしまった。大好きなお姉様と、一緒のものがいい。頰に熱が集まっていくのがわかった。
「お姉様はお嫌……? わがまま言ってごめんなさい。お姉様が嫌だったら、無理に一緒にしようとはしないわ。ちょっとだけそう思ってしまったの。」
少し顔が強張ったのが分かった。
でも、言ってしまったものはもうなかったものにはできない。
お姉様は少し難しい顔をした後、「エイミーが私の選んだ壁紙でもいいと言うのなら、一緒にしてもいいわ。」と呟いた。
それは小さな小さな声だったけど、私の心を喜びで満たすには充分なものだった。
「ええ、ええ! もちろんよ、お姉様。お姉様が選んで下さった壁紙で私の部屋を彩れるのね。なんて素敵なの…! お姉様は、どんなものがお好き? どれも素敵だから……」
ここまで話したあと、興奮のあまり調子に乗って話すぎてしまった事に気がついた。
少し気まずく感じて、なんと言っていいのかよく分からなくなってしまう。もごもごと最後を締めくくって、無理やりにっこりと笑った。
それでもお姉様は、私に微笑み返してくださった。それは天使のようで、この世のものとは思えないほど美しかった。純粋無垢で、なんの汚れも知らないような真っ白な笑み。
お姉様がカタログを暫く眺めて、あるデザインを見てそれを指差した。
「素敵なデザインだわ……! エイミー、これなんてどうかしら。落ち着いていて、少し暖かさも感じるでしょう? エイミーは習ったかしら、先先代の王様のお妃様のこと。……そう、シフォンヌ様よ。シフォンヌ様の時代に流行った模様を少し取り入れて、また違った新しいデザインになっているの、わかる? シフォンヌ様はクリーム色がお好きだったでしょう? クリーム色が下地になっている上に青味がかったグレーの草花が描かれている物ばかり、身の回りに置いていたんですって。それに少し色をくわえているわね。濁った桃色だわ。柄と色のバランスがとても良いから、これなら落ち着いていて、それでも淑女らしい美しい部屋になるに違いないと思うの。」
お姉様の持っているカタログを見ようと机の上に身を乗り出し、その壁紙を見た。
それは目を奪われてしまうほど高貴な柄のように感じた。なんだか自分には似合わないような、そんな柄。お姉様には似合うけれど、わたしには相応しくないような。
壁紙なんかに似合う似合わないなんてないのではないかと思ったけれど、そうではないような気がする。
それでも、これはお姉様の選んだものなのだから。お姉様が2人で一緒にしても構わないと言って選んでくれたものだから。
私はそれがどれだけ身の丈に合っていない物のように感じても、それを選ばないという選択肢などなかった。
「とっても素敵だわ! お姉様みたいに美しいのね! これが私の部屋になったら、私は毎日これを眺めてしまうと思うわ……。それ程までに素敵なものじゃない? それに、この壁紙は……言い方がおかしいかもしれないけど、お姉様に似ている気がするの。これが私の部屋の壁紙になったら、いつもお姉様と一緒にいる気分になれるわね。それってとっても嬉しい事だわ……! お姉様がお忙しいときも、私がお姉様に会えない時も寂しくないもの。」
心からの笑みが浮かんできて、お姉様にその顔を向けた。引け目を感じるだなんて変な感情だったのだ、と自分の心を落ち着かせながら。
その後、お姉様と一緒にお父様の部屋に行って、壁紙のお願いをした。
お父様は笑っていた。
私の好きな柄だね、と言って。
最初は「お義姉様」になっていたのですが、ここら辺から(これより少し前でしょうか…)「お姉様」になってしまっていることに気がつきました。本編完結致しましたら直そうと思います(道のりが長い…)。読みづらくしてしまって申し訳ございません🙇♀️
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