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第一章バカヤロウやらかし編
やらかし6:バカヤロウ、スタンピードの原因となる
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テスターがマーガレットとの会話で、己のあり方を見つめ直した頃、別の場所でもとある人物が大きな変化を実感していた。
「これは、この力は一体どういう事だ」
薬草の採取地内で暮らす一匹のゴブリン。彼の名はブリダイコン。彼は今、己の急成長に驚き震え上がっていた。彼の周囲には、無数のゴブリンが気を失い倒れていた。
数日前、銃により自滅したテスターの脳を一口食べたブリダイコンは、その暫く後に急に力が湧き上がって来た。その力を試したいと思った彼は、仲間のゴブリン達を集めて力比べをしてみたらご覧の有様と言う訳である。
「こりゃまた派手にやっちまったのう」
自分の力に困惑するブリダイコンの前に、年老いたゴブリンが現れた。彼はブリダイコンの祖父であり、この地のゴブリンのリーダーだった。
「なあ、ブリダイコン。お前さんはいつの間にそんな強くなったんじゃ?」
「三日ぐらい前に、ここに来た人間を食った。それが原因かも知れない」
「ほー、どんな人間だったのじゃ?」
ブリダイコンは、これまでの経緯を振り返り、あの人間がどんな奴だったかを必死で思い出すが、中々一言では説明できない存在だった。
「正直、どんな人間か説明し辛い」
「諦めず、一つ一つ特徴を言ってみい」
「そうだな…、その人間は死んでも生き返ったな。一回死んだけど、別の日にまた来たんだ」
「ほほう、それならその人間は聖女かもしれんなあ」
聖女かもという発言を聞き、ブリダイコンはそうかもと思った。一度死んだ後でまたやって来た事がずっと不思議だったが、聖女だったのなら説明が付く。しかし、あれは聖女では無いという思いもまた存在した。
「でもな、じっちゃん。そいつは自分自身の能力らしきもので自滅したんだよ」
「じゃあ聖女じゃないのう。聖女は皆頭が良かったからの」
「後、死んだ時に暫くしたら死体が消えたんだ」
「じゃあ聖女じゃ!聖女は死んでも死体を残さないと聞いた事があるわい」
「それと、そいつ金髪だった」
「なら聖女じゃないわい!聖女は大体が黒髪だったと言われとる!」
「あ、大事な部分言い忘れてた。その人間は男だ」
「それを最初に言わんかー!男なら絶対聖女じゃないわい!」
色々と話し込んだ結果、聖女ではなくても正体不明のやべー奴がいると考えるべきという結論に辿り着いた二匹は、気絶していた仲間を起こし緊急会議を開く。
「皆聞け。ワシの孫が強くなったんは、変な人間を食ったからじゃ!そして、そいつは聖女の亜種かもしれん!実際、生き返つたりしたらしい!」
ゴブリン達が神妙な顔つきになる。聖女とは、神が送り込む人類の救世主。もし、その人間が新たな聖女かそれに類似する者だったら、ここにいる自分達は明日にも全滅させられるかも知れないのだ。
「これからワシらがやらねばならん事は三つある!一つ目はこの件を魔王様に報告する事!二つ目はこの地を離れ、新たな住処を確保する事!そして三つ目は、正体不明の人間が力をつける前にこちらから攻める事じゃ!」
リーダーの指示により、女子供と一部の若者はこの地を去り、魔王城へ向けては伝令役が数名向かった。
「残った者たちよ、相手が聖女ならば勝ち目は殆ど無いが、今はまだそれ程強くないのが孫からの情報で分かっとる。ならば、成長する前に一番近くにいるワシらが挑むしか無い。聖女っぽい奴を復活せんように肉片すら残らず食らいつくし、奴の住む町に火を放つ。成功率は限りなく低いが、それでも残ってくれた事を改めて感謝する」
「じいちゃん、いつ決行するんだ?」
「明日の夜。人間が寝静まった頃に、ここにいる全員で町を襲う」
こうしてゴブリン達によるスタンピードが確定した翌日、その原因となったテスターは何も知らずのんびりしていた。
「今まで死に急いてたからなあ。今日はのんびりするか」
スタンピードまで残り十八時間。
「これは、この力は一体どういう事だ」
薬草の採取地内で暮らす一匹のゴブリン。彼の名はブリダイコン。彼は今、己の急成長に驚き震え上がっていた。彼の周囲には、無数のゴブリンが気を失い倒れていた。
数日前、銃により自滅したテスターの脳を一口食べたブリダイコンは、その暫く後に急に力が湧き上がって来た。その力を試したいと思った彼は、仲間のゴブリン達を集めて力比べをしてみたらご覧の有様と言う訳である。
「こりゃまた派手にやっちまったのう」
自分の力に困惑するブリダイコンの前に、年老いたゴブリンが現れた。彼はブリダイコンの祖父であり、この地のゴブリンのリーダーだった。
「なあ、ブリダイコン。お前さんはいつの間にそんな強くなったんじゃ?」
「三日ぐらい前に、ここに来た人間を食った。それが原因かも知れない」
「ほー、どんな人間だったのじゃ?」
ブリダイコンは、これまでの経緯を振り返り、あの人間がどんな奴だったかを必死で思い出すが、中々一言では説明できない存在だった。
「正直、どんな人間か説明し辛い」
「諦めず、一つ一つ特徴を言ってみい」
「そうだな…、その人間は死んでも生き返ったな。一回死んだけど、別の日にまた来たんだ」
「ほほう、それならその人間は聖女かもしれんなあ」
聖女かもという発言を聞き、ブリダイコンはそうかもと思った。一度死んだ後でまたやって来た事がずっと不思議だったが、聖女だったのなら説明が付く。しかし、あれは聖女では無いという思いもまた存在した。
「でもな、じっちゃん。そいつは自分自身の能力らしきもので自滅したんだよ」
「じゃあ聖女じゃないのう。聖女は皆頭が良かったからの」
「後、死んだ時に暫くしたら死体が消えたんだ」
「じゃあ聖女じゃ!聖女は死んでも死体を残さないと聞いた事があるわい」
「それと、そいつ金髪だった」
「なら聖女じゃないわい!聖女は大体が黒髪だったと言われとる!」
「あ、大事な部分言い忘れてた。その人間は男だ」
「それを最初に言わんかー!男なら絶対聖女じゃないわい!」
色々と話し込んだ結果、聖女ではなくても正体不明のやべー奴がいると考えるべきという結論に辿り着いた二匹は、気絶していた仲間を起こし緊急会議を開く。
「皆聞け。ワシの孫が強くなったんは、変な人間を食ったからじゃ!そして、そいつは聖女の亜種かもしれん!実際、生き返つたりしたらしい!」
ゴブリン達が神妙な顔つきになる。聖女とは、神が送り込む人類の救世主。もし、その人間が新たな聖女かそれに類似する者だったら、ここにいる自分達は明日にも全滅させられるかも知れないのだ。
「これからワシらがやらねばならん事は三つある!一つ目はこの件を魔王様に報告する事!二つ目はこの地を離れ、新たな住処を確保する事!そして三つ目は、正体不明の人間が力をつける前にこちらから攻める事じゃ!」
リーダーの指示により、女子供と一部の若者はこの地を去り、魔王城へ向けては伝令役が数名向かった。
「残った者たちよ、相手が聖女ならば勝ち目は殆ど無いが、今はまだそれ程強くないのが孫からの情報で分かっとる。ならば、成長する前に一番近くにいるワシらが挑むしか無い。聖女っぽい奴を復活せんように肉片すら残らず食らいつくし、奴の住む町に火を放つ。成功率は限りなく低いが、それでも残ってくれた事を改めて感謝する」
「じいちゃん、いつ決行するんだ?」
「明日の夜。人間が寝静まった頃に、ここにいる全員で町を襲う」
こうしてゴブリン達によるスタンピードが確定した翌日、その原因となったテスターは何も知らずのんびりしていた。
「今まで死に急いてたからなあ。今日はのんびりするか」
スタンピードまで残り十八時間。
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