あなたのお姫様になりたい

はやしかわともえ

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『お前はいちいち考え過ぎなんだよ』

「そうかな?」

オレが電話をかけた相手、それはリーダーのタクマだった。
やはりリーダーを務めているだけあって、そういう相談はよく聞いてくれる。高校の頃、タクマとアカリは付き合っていた。
だからなおさらだ。

「あーちゃん、怒ってて」

あー、とタクマ。
なにか分かったのなら是非教えてほしい。

「教えてよ!タクマ!」

タクマは大きくため息をつく。
そして言った。

『アカリはお前に怒ってんじゃないから。オレに言えるのはそれだけだ』

「そんな」

『そんでさ、アカリ、元気なの?』

二人がなんで別れたのか、オレは知らなかった。
タクマはまだアカリが好きなのかな、と思う時がある。
アカリになぜ別れたのか聞いても教えてくれなかった。
だから二人の事情はよくわからない。

「うん、元気だよ。
毎日会社行ってる」

『だー、そうじゃねえよ!』

「え?」

タクマが何を聞きたいのか、ようやくわかる。

「彼氏はまだいないみたいだけど」

一応声を潜めて言うと、タクマは安心したように頷いた。

『アカリにまた連絡してみるわ』

「ん」

もしかしたらまた二人は付き合い始めたりするのかな。
アカリには幸せになってほしい。
オレは兄貴なんだからアカリには笑っていてもらいたい。

(もう、あーちゃんに聞いてみる!)

タクマに話して気持ちが整理されたのもあって、オレは少し強気になっていた。

自分の部屋を出て居間に戻る。
アカリはテレビを見ていた。

「あーちゃん?」

オレが声をかけると、彼女はこちらを見る。
そんな彼女が今日はすごく綺麗に見えて、オレは言葉が継げなかった。

「アオ?」

黙っているオレを見かねたのか、アカリが声をかけてくれる。

「おやすみ、あーちゃん」

「おやすみ」

オレは再び自分の部屋に戻った。
やっぱりオレはヘタレだ。
情けない。
アカリに理由も聞けない、新さんにメールも送れない。
なにも進展してないじゃないか。

(このままじゃいけない)

オレは勢いのまま、メール画面を開いた。
そして思いついた文章を打ち込んでいく。
新さんと仲良くなりたいのは事実だ。もしだめになっても仕方ない。
それくらいには自棄になっていた。

文章を読み直して、何回か直す。

(よし)

送信ボタンを押して、オレはベッドに潜り込んだ。
返事が返ってくるかはわからない。
新さんは人気声優なんだから。

でも、それでもチャンスがあるのならオレは頑張ってみたい。
アカリは怒るかもしれない。そしたらちゃんと話そう。
それでちゃんと、新さんと仲良くなろう。
オレはそんなことを考えながら眠りについた。
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