引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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ここは聖域。キメルは木々の間から射し込む陽射しの下に座って寛いでいた。ソータが旅立って、間もなく一月が経とうとしている。彼にとっては長い一月だった。ソータのいない生活はものすごく退屈だ。

「キメル様!ソータナレア様より伝言です!」

飛んできたのはフクロウだ。まだ昼間だというのに、彼は元気である。

「ソータはなんだと?」

「は、キメル様がお元気かと案じられておりました。鬼様と獅子様がソータナレア様に接触してきた模様です」

「あいつら…」

思わず脱力したキメルである。彼らはキメルの弟分とも呼べる相手である。キメルはそれだけ古い神だ。ソータには自分はただの幻獣だと伝えている。だからソータのそばに今までずっといられたのだ。もし正体を明かしたらソータは怒るだろう。だが、このまま神々を放置しておくのも良くない気がする、とキメルは静かに立ち上がった。

「き、キメル様?」

急に立ち上がったキメルにフクロウは驚いたらしい。
キメルは人の姿になっていた。長い銀髪が風になびく。白いシャツに黒いスラックスというシンプルな出で立ちだが、それがますます彼の美麗さを強調していた。

「行ってくる」

「い…行ってくるって…」

フクロウは慌ててキメルの前に立ち塞がった。

「この森はキメル様の力がなくては維持できません!どうか思いとどまって頂きたい!」

「そういえばそうだったな」

キメルは笑ってフクロウを指差した。

「お前に任せる、頼んだぞ」

フクロウのソータナレア様ー!と言う悲鳴が聞こえたが、キメルは気にしなかった。今はソータが最優先である。聖域である森に人間は立ち入らないが、一応姿を隠すことにして、そのまま飛んだ。
普段は翼をしまっているが、今日は有効活用できそうである。たまには翼を日光にでも当ててやろう、そんな気持ちで翼を開いたら、久しぶり過ぎて使い方を忘れていた。そのまま真っ逆さまに落ちそうになったがなんとか勘を取り戻す。

「よし、いいぞ」

キメルは自分にそう声をかけて先を急いだ。

✢✢✢

「むっ…」

獅子の出した果物にかぶり付いていたソータは何かを察知した。

「どうした?ソータ」

隣に座っていたエンジが魚を片手に話しかけて来る。

「僕のフクロウに何かあったようです」

「フクロウ?なんだ?何かの暗号か?」

「僕の小さい時からのお友達です」

エンジがきょとん、としてソータの顔を覗き込んでくる。

「え、友達にフクロウがいるのか?そういう名前じゃなくて?」

「フクロウです」

ソータはここでも、自分と一般的な社会のズレに気が付いていた。普通の人間はフクロウと友達にならないのである。

「やっぱり僕って変なんですね」

しょんぼりしてしまったソータの頭を獅子が撫でる。

「気にすんな。ソータのそういう所、可愛いと思うぜ!」

「獅子様…わ!」

獅子に軽々と抱き上げられてしまう。そのまま抱きしめられていた。

「ソータには触れる時に触っとかないと。やっぱり、ソータは可愛いなあ」

「獅子様…」

ソータは獅子にどう声を掛けたものか迷った。

「ブル…」

流石の獅子も後ろに誰がいるのか分かったらしい。
そっとソータを下ろして、両手を挙げた。ゆるゆる振り返る。

「キメルにい!!なんで!!」

「キメル、森は?」

キメルは獅子を一瞥した後、ソータに駆け寄る。ソータはキメルの首に抱き着いた。

「ブルル…」

「え、フクロウに森を任せたの?あの子で大丈夫?」

「ブル」

「お前がキメルか?」

遠巻きに見ていたらしいエンジたちが近寄って来ていた。ソータがキメルの脇にどく。

「エンジ様、この子が僕の友人のキメルです。フクロウと同じくらい一緒にいます」

「へぇ、馬?とは違うよな?」

「ペガサスだよ。ね、ソーちゃん」

「えーと…僕にもよく分からないのです。ねえ、キメルってなんなの?確か、幻獣だよね?」

「…」

ソータの問いかけにキメルも黙ってしまった。

「二人は本当に仲良しなんだね」

ふふ、とシオウが噴き出した。他の者もつられたように笑い出す。

「はい、キメルと僕は仲良しなのです!」

「ブルル!」

ソータとキメルはうんうんと頷いた。

「で、キメル兄は急にどうしてここに?」

「…」

獅子にそうはっきり尋ねられて、キメルはじいっと獅子を見つめた。

「え…?もしかして俺のせいなのか?」

「キメル、獅子様を睨むなんて」

ソータは事情を知らないのだ。キメルは面白くなくて、ぷいっと顔を背けた。

「ソータ、キメル兄を怒らないでやってくれ。俺も久しぶりにシャバに来て羽目を外しちまったからな。
ヤム島に関してはまぁ適度にやるよ」

「獅子様!本当ですか?」

「あぁ」

ソータはわぁと手を打った。

「でも贄の儀式はもうやらない。まさか悪用する人間がいるなんて思いもよらなかったぜ」

シオウがおずおずと前に出る。

「あの、色々聞いてもいいですか?私はシオウという者です。神々について調べていて」

「あぁ。俺に分かることならな」

シオウが目を輝かせる。そしてメモ帳とペンを取り出し、獅子を質問攻めしたのだった。
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