引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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「っ…はぁ…くそ…いてえなぁ…あの女マジ許さねえ…」

キメルは苦しみに喘ぎながらなんとか歩いていた。男たちに鞭で散々打たれ腹や背中を蹴られた。お陰で、体中が痛い。だがちゃっかり男たちに枷を壊させていた。枷が壊れた瞬間、魔法でそれを悟らせないように工夫したのだ。どうやら男たちは作られた木偶のようだった。キメルの魔力にすら気付かない。ここは地下だ。キメルは地上を目指そうとしていたが感覚がなかなか戻らない。

「…あれはリーナじゃない。じゃあ誰だ?」

キメルはずっとおかしいと感じていた。リーナはあの女より、遥かに賢い。まず、自分に会ったら名前を呼んで笑顔で抱き着いてくるだろう。ソータ以外にそれが出来る女性はそうそういない。

「リーナは…ソータのとこか」

リーナは神の生まれ変わりだ。同じ神であるキメルとは根深い所で繋がっているから分かる。ともかく、ソータの所にリーナがいるなら安心である。では、自分を拐ったリーナは誰なのか?

「くそ、腹減ったな」

壁にもたれ、キメルはズルズルと崩れ落ちた。体力的にも限界である。今、意識を失うのはまずい。そう思ったがまぶたが自然に下がってくる。キメルは知らず知らずのうちに、意識を飛ばしていた。

✢✢✢

「リーナ姫は本当にすごいな」

エンジが彼女の描いた地図を眺めながら言った。リーナ姫の描いた地図の正確さに驚いたらしい。

「はい。地形もほぼ一致してますね。子供が描いたとは思えません」

パペが頷く。

「なんで秘密基地が、月って名前なんだろ?」

ロニが首を傾げると、エンジが笑った。

「姫の秘密基地は、天文台の地下にあるみたいなんだ」

「え!あぁ!なるほど!!」

ロニが納得したと手を打つ。幼いリーナ姫の足で行ける場所だ。城からあまり離れていない場所に天文台はあった。

「キメル…」

ソータがぎゅ、と胸の前で拳を握ると、ロニにその手を優しく握られる。

「大丈夫だよ、ソータ。だってキメルだよ?」

「うん、そうだね」

ロニはいつもこうして自分を励ましてくれる。それがとても有難い。
天文台というだけあって、この建物の中に、大きな望遠鏡があるようだ。中に入ると、上に続く螺旋階段と地下に繋がる階段があった。リーナ姫の秘密基地はそこにあるのだろうか。一行は階段を下った。
地下の道はフォッシルの塔で経験したが、こちらの方はしっかり空調が効いており過ごしやすい。
しばらく歩くと道が二又に分かれている。ソータはキメルを思念伝播の魔法で呼んだ。だが彼からの反応はない。

「キメル、もしかしたら倒れているのかも」

「…もしここに敵さんがいると厄介だな」

ううむ、とエンジが唸る。

「丁度6人いますし、3人ずつ別々に分かれましょう。皆さん思念伝播の魔法は使えるようですし」

パペの提案に皆が頷いた。

「ソータナレア様、シオウ様、ロニで一組。エンジ様、レント様、私で分かれましょう」

「分かった。キメルを見つけたり敵が出てきたら報せる」

「承知なのです」

ソータたちは左の道、エンジたちは右の道を探索することになった。
地下の道には時折ぼんやりした灯りがあるが、それだけではさすがに暗い。ソータは魔法で辺りを照らして進んだ。

「キメルはどこにいるのかな」

「もし、乱暴なことをされていたら許しません」

ソータが杖をぎゅっと握りしめて言うと、ロニがぎょっとしたように言う。

「ソータがめちゃくちゃ怒ってる」

「ソータさんにとってキメルさんは大事な人だから」

シオウは優しい。

「分かるなー!」

「あぎゃ」

急にドラゴが走り出していく。

「待って!ドラゴ!!」

「急いで追いかけなくちゃ!」

3人はドラゴを追った。ドラゴは足が短いが速い。彼はてちてち走る。

「あぎゃ!!」

しばらく行った先で、ドラゴが鳴いている。ソータたちが近寄ると鍵らしきものが落ちていた。

「どこの鍵かな?」

「この下にもまだ地下があったからそこのかもね」

シオウがふんわり言う。

「え、シオウ兄ちゃん、もうここの地図覚えてるの?」

「一応」

ロニが尊敬の眼差しでシオウを見つめて言った。

「シオウ兄ちゃんすげー!」

「私は地図が好きだからね。とりあえず奥まで行ってみようか」

「はい」

ソータたちは奥まで行ってみた。特に変わったものはない。とりあえず引き返すことにした。

「望遠鏡のスケールがでかすぎて俺、びっくりなんだけど」

ロニが驚くのも分かる。望遠鏡の動力源が地下にまで及んでいるのだから。

「確かに世界で一番大きい望遠鏡だといわれているからね。宇宙進出もそこまで遠くないのかも」

「そうなのですか?すごい」

「お、戻ってきたか」

エンジたちが声を掛けてくる。なんだか表情が険しい。

「何かあったの?」

シオウが尋ねるとエンジが頷いた。

「あぁ。パペが警戒してる。もしかしたらキメルもいるかもしれない。どうも地下に行けるらしいんだ。ただ鍵がかかっていて」

「キメル…エンジ様、地下のなら鍵をおそらく見つけました」

エンジが表情を明るくした。

「本当か!」

「さっすがソーちゃん!」

レントも笑う。

「早速行ってみましょうか、皆で」

皆が頷く。
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