引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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ソータたちが先程エンジらが見た方へ進むと、確かに地下に繋がる入口が床にあった。ソータが鍵を差し込むと、あっさり開く。

「よし、開いたな」

扉を開けようとすると、思いの外重たかった。ソータがなんとか扉を開ける。地下はますます暗い。そして、重苦しい嫌な気配を感じた。

「私が先に行きます」

パペが先陣を切る。周りに気配がないか確認しながら、ハシゴを降りた。

「大丈夫です!降りてきてください」

皆が順にハシゴを降り、ソータもパペの手を借りて下に降りた。

「うわー、なんかいますよって感じ」

ロニが震えている。

「行きましょう」

パペの先導のもと、一行は歩き出した。ここは望遠鏡の動力源の管理をするための場所らしい。いくつか管理するための小さな部屋がある。

「こっちです」

パペが小部屋に皆を先導する。向こうから誰かがライトを照らしながら歩いてくる。

「イジョウナシ」

それはまた遠ざかっていく。

「あれ、本物の人間か?」

エンジの疑問は最もである。人間の形をしていたが、動きになにか違和感があった。

「どうも人形みたいですね。魔力を流し込んでつくられているかと。ただし」

パペがチャキ、と何かを構える。

「ちょ、パペそれ」

ロニが止める間もなく、パペがカチ、と引き金を引く。キュンと空気を切り裂く音がして、人形はばたり、と倒れた。どうやら当たったらしい。パペが持っているのはサイレンサー付きの銃である。

「ぱ、パペさん、それ?!」

「物騒だな!」

パペは特に表情も変えず、冷静に次の弾を補充している。

「人形は司令塔からの魔力で動いています。つまり、本丸に近付けば近付くほど精度の高い人形がいる、というわけです。でもリーナ姫様の魔力を得ている割には弱すぎる気もしますが…」

ふうむ、とパペが首を傾げた。

「とりあえず先に進みましょう」

一行は走り出した。人形がいればパペが銃を使い、打ち倒す。しばらく走ると大きな何かがある。

「キメル!!」

ソータは駆け寄った。キメルは意識を失う前に幻獣の姿になっている。ソータの前で人型にならない。キメルはそう決めているのだ。

「キメル、やだ。目を開けて」

ソータが泣きながらキメルの頭を抱えると、キメルは薄目を開けた。

「ソータ…来てくれたのか」

「当たり前でしょう!ひどい怪我…こんなに殴られて」

ソータは泣きながらも治癒の魔法を掛け続けている。傷はみるみるうちに塞がっていく。

「ソータ、もういい。あとは自力で出来るから」

キメルはひょい、と立ち上がった。

「大丈夫なのか?キメル?」

「おい、エンジ。あんまり俺を侮るなよ?」

「はいはい」

こっちだ、とキメルは皆を先導した。

「よく分かったな、俺がここにいること」

キメルに問われ、ソータは笑った。

「リーナ姉様が助けてくれたんです」

「リーナか…じゃああいつは誰なんだ?」

「あいつ?」

ソータはハッとなって立ち止まった。大きな気配があるのに気が付いたからだ。ずる、ずる、と何かを引きずる音。

「ギィィメェェルゥゥ!!!」

巨大な人形が現れる。背中に管が繋がっていた。エネルギーを補給するためのものだろうか。キメルを探しに来たらしい。

「おいおい、あんなのに好かれたくないんだが」

キメルがため息混じりに言う。

「キメル、下がっていてください。ここは私たちが」

「あぁ。任せた」

キメルはやはり消耗している。彼にしては素直に下がった。ソータはすでに詠唱を始めている。

「彗星よ・・この地に降り注げ!ハレイション!」

人形に火をまとった岩が降り注ぐ。ソータの火魔法の中でかなりの火力を持つ魔法だ。

「ギャアアアア」

「このまま畳みかけます!」

パぺが銃で人形の急所と思われる頭を狙う。だが人形は倒れてくれなかった。

「ギィィメェェルゥゥ」

人形が咆哮を上げている。その凄まじさにソータたちは動けない。

「さすがに手ごわいな、よし、俺もだ」

エンジが剣を振りかぶった。人形に剣を振り下ろしても、相手は思いの外、固い。

「式神たち、ここにおいで」

「俺も久しぶりに切るじゃなくて殴ってみようかね」

シオウが式神を呼び出し、レントが槍を取り出した。

「俺があいつを解体するね」

ロニもスパナを手に、やる気満々である。

「あぎゃぎゃ」

ドラゴがぼっぼっと口から火を噴き出している。どうやら彼もやつを倒すのに協力してくれるらしい。
ソータたちは一斉に攻撃を仕掛けた。
ガキンとロニが器用に部品を外していく。

「うん、かなり精巧な人形みたいだ」

部品を見つめてロニが言う。

「ガエゼエエ」

「わ!」

ロニに人形が拳を振り上げている。咄嗟のことだった。エンジが拳を剣で受け止めている。

「エンジ兄ちゃん!」

「ロニ、こいつを壊せ」

「うん」

シオウの式神が人形の周りをくるくる回り始める。そして真っ白だった体を赤く染めた。

「式・肆!烈火!!」

ゴウウと式神が人形に向けて火を放ち始める。ソータも更に火魔法を人形にぶつける。
レントが追加で槍をぶつける。

「おお、固い」

「だから固いって言っただろう」

エンジが言いながら更に剣で人形を殴っている。

「ミナゴロシ」

人形の声にノイズが混じり始めている。どうやら限界が近いらしい。

「なにかしてくるな」

「それをされるのはまずいんじゃない」

「管を壊してみるよ」

ロニがそう言って人形の後ろに滑り込んだ。

「ググ」

人形は力を溜めているようだ。ロニが管を一本破壊する。

「コザカシイコゾウ」

ロニは人形の拳をひょいと躱して、更にもう一本管を破壊する。ソータたちも人形の邪魔をするべく攻撃を続ける。

いよいよ最後の管を落とした。

「グガ・・・」

人形が停止する。ホッとしたのも束の間、人形からブザーが鳴り響いた。

「やばい、こいつ自爆する気じゃ」

「逃げろ!!!」

ソータたち一行は全力で走った。ドオオオンと後ろで大きな爆発音が響いた。
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