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食事を食べ終えたソータたちは、再び礼拝堂に戻ってきている。屋根裏でキメルは一人、がたがたなにかを探し回っていた。大丈夫だろうか、とソータは心配になったが、ここでずっと立ち尽くしていても仕方がない。とりあえず礼拝堂の掃除をしようと壁に立て掛けてあった箒を手に取った。
「あぎゃ!」
ドラゴが一緒に手伝ってくれるらしい。
「ありがとう、ドラゴ」
礼拝堂の中を箒で掃いて、綺麗に掃除する。とはいってもそこまで汚れていないので、掃除はすぐ終わってしまった。
「あったあった」
がたがた言わせながらキメルが屋根裏からひょいと身軽に下りてくる。
「探し物あったの?」
「ぎゅあ?」
キメルが見せてきたもの、それは分厚い本だった。
「これが鍵?」
「新月の晩にこの世界と向こう側の世界は繋がるんだ。で、これはそれを繋ぐ道になる」
「新月って…」
キメルはニヤッと笑った。
「つまり、明日の夜だ。まあ墓参りするくらいだし、すぐ帰ってこられるだろ」
「キメル…?」
ソータはどうしようかと迷ってぎゅ、と唇を噛み締めた。聞いていいものか分からない。
「ソータ、なにか俺に聞きたいことがあるのか?」
「その・・・お墓って誰の?」
絞り出すように尋ねると間近にキメルの顔があった。ソータは驚いた。
「そんなに驚かなくても・・・俺の親父だ」
「ごめん。キメルのお父様・・私をここまで運んでくれたひと?」
「ああ、そうだよ。俺はまだ小さかったしな」
「なんで亡くなったの?」
キメルが唸る。言おうかどうか迷っているようだ。しばらく間を開けて、キメルが口を開く。
「…病気だった。人間でいうところの癌みたいな病気だ」
「神々にも病気があるの?」
ソータは驚いてしまった。キメルが頷いた。
「ああ、あるぞ。親父も俺と同じ半人前の神だったから」
「じゃあキメルもその病気になるかもしれないってこと?」
ソータの頭はパニックになっている。
「俺はまだ若いから大丈夫だと思うがな」
うーん、とキメルが考える。ソータは更に質問をぶつけた。
「その半人前ってどうやったら一人前になれるの?」
「あぁ、簡単だぞ。俺の爺に勝てば良いんだ。親父は、その試練を受ける前に病気になってな」
「そうだったんだ…それにキメルのお祖父様、相当強いんじゃ?」
「まあ古い神だしなぁ。でも俺だって強いし」
キメルは自信満々だ。
「とりあえず俺は爺に勝つ。大丈夫だ、ソータ。安心しろ」
ソータには彼を信じることしか出来ない。その日は聖域で休むことにした。
✢✢✢
「んー」
起き上がったソータは両腕をぐぐ、と伸ばした。
森の中で木の葉を集めて作った簡易ベッドはまずまずの寝心地だ。キメルも幻獣の姿で寝そべっている。彼がこうしてそばにいるだけで暖かい。
「すぴー」
ドラゴはまだ眠っている。まだほとんど赤ちゃんのドラゴはよく眠り、よく食べる。ソータはドラゴをよしよしと撫でた。ドラゴの尻尾がソータの腕に巻き付く。愛情のしるしらしい。キメルも目を覚ましたようだ。
「おはよう、キメル」
「あぁ、おはよう、ソータ。向こう側に行く準備をしないとな」
「鍵だけじゃ駄目なの?」
「墓参りといえば?」
あ、とソータは頷いた。
「お花がいるよね!」
「あぁ、あと綺麗な水だな。聖域にあるだろ?」
「うん、あるよ、あ」
ドラゴがぱちぱちと目を瞬かせている。何が起きたのだろう?と二人を円らな瞳で見つめている。
「あぎゃ」
ボッとドラゴは小さく火を噴いた。
「ドラゴ、火が出せるの?」
「あぎゃ?」
ソータがすごーいとドラゴを抱き上げるとドラゴが首を傾げている。
「ドラゴ、これからお水とお花を取りに行くよ。お腹空いてるだろうけど、途中に甘い木の実が生ってるからね」
「ぎゅあ」
ドラゴの瞳が甘い木の実と言った瞬間からキラキラし始めた。
「良いかチビ、ちゃんと言う事聞くんだぞ」
「ぎゅう!」
成長したらドラゴはキメルより遥かに大きくなるのだが、それは指摘しないでおく。
ソータはドラゴを布でくるみ、背中に背負った。
「いい?ドラゴ。大人しくしていてね」
「ぎゅう」
ソータたちは聖域を歩き始めた。聖域として広がる森はかなり広い。聖域のため、魔物はいないが、野生の動物はいる。キメルはいつもの幻獣の姿でソータの後ろを歩いていた。ぐきゅるるといよいよドラゴの腹の虫が鳴き出した。
「ドラゴ、もう少しだよ。頑張ろう」
「ぎゅう」
しばらく行くと甘い香りがする。木の実の匂いだ。鳥が突いたり、他の動物がかぶりついたりして、腐っている物もある。ソータはその中から綺麗な実を採りローブの袖で拭いた。それにかぶり付く。大丈夫だとソータは判断した。
新しい木の実を採って、ドラゴに渡す。
「はい、ドラゴ」
「ぎゅああ」
ドラゴが思い切りかぶり付いた。じゅわりと果汁が口の周りに付く。ソータはそれを拭ってやった。
「はい、キメル」
「ありがとうな」
キメルはソータの手から直接木の実を食べた。ソータも木の実に噛り付いた。甘くて美味い。前にこれによく似た木の実を食べたら毒のあるものだった。ソータは毒に耐性があったので平気だったが、一緒にいたフレンはもろに毒をくらい、しばらく嘔吐が止まらなかった。
「フレン兄様あの時、可哀想だったなあ」
「ふ、あのすかした奴がな」
キメルが鼻を鳴らす。
「ぎゅあ」
ドラゴはもりもり木の実を食べた。そしてすやすやと丸くなって眠り始めた。
「ドラゴ、いい子。すごく穏やかな子だよね」
小声でキメルに言うと、キメルががぶとドラゴを甘噛みしている。
「今なら柔らかいし食えるな」
「キメルってば」
キメルの感情表現は乱暴だ。照れくさいせいだとソータは理解しているが、なかなか周りにそれは伝わらない。
「さ、先に進もう」
「うん」
二人は歩き始めた。
「あぎゃ!」
ドラゴが一緒に手伝ってくれるらしい。
「ありがとう、ドラゴ」
礼拝堂の中を箒で掃いて、綺麗に掃除する。とはいってもそこまで汚れていないので、掃除はすぐ終わってしまった。
「あったあった」
がたがた言わせながらキメルが屋根裏からひょいと身軽に下りてくる。
「探し物あったの?」
「ぎゅあ?」
キメルが見せてきたもの、それは分厚い本だった。
「これが鍵?」
「新月の晩にこの世界と向こう側の世界は繋がるんだ。で、これはそれを繋ぐ道になる」
「新月って…」
キメルはニヤッと笑った。
「つまり、明日の夜だ。まあ墓参りするくらいだし、すぐ帰ってこられるだろ」
「キメル…?」
ソータはどうしようかと迷ってぎゅ、と唇を噛み締めた。聞いていいものか分からない。
「ソータ、なにか俺に聞きたいことがあるのか?」
「その・・・お墓って誰の?」
絞り出すように尋ねると間近にキメルの顔があった。ソータは驚いた。
「そんなに驚かなくても・・・俺の親父だ」
「ごめん。キメルのお父様・・私をここまで運んでくれたひと?」
「ああ、そうだよ。俺はまだ小さかったしな」
「なんで亡くなったの?」
キメルが唸る。言おうかどうか迷っているようだ。しばらく間を開けて、キメルが口を開く。
「…病気だった。人間でいうところの癌みたいな病気だ」
「神々にも病気があるの?」
ソータは驚いてしまった。キメルが頷いた。
「ああ、あるぞ。親父も俺と同じ半人前の神だったから」
「じゃあキメルもその病気になるかもしれないってこと?」
ソータの頭はパニックになっている。
「俺はまだ若いから大丈夫だと思うがな」
うーん、とキメルが考える。ソータは更に質問をぶつけた。
「その半人前ってどうやったら一人前になれるの?」
「あぁ、簡単だぞ。俺の爺に勝てば良いんだ。親父は、その試練を受ける前に病気になってな」
「そうだったんだ…それにキメルのお祖父様、相当強いんじゃ?」
「まあ古い神だしなぁ。でも俺だって強いし」
キメルは自信満々だ。
「とりあえず俺は爺に勝つ。大丈夫だ、ソータ。安心しろ」
ソータには彼を信じることしか出来ない。その日は聖域で休むことにした。
✢✢✢
「んー」
起き上がったソータは両腕をぐぐ、と伸ばした。
森の中で木の葉を集めて作った簡易ベッドはまずまずの寝心地だ。キメルも幻獣の姿で寝そべっている。彼がこうしてそばにいるだけで暖かい。
「すぴー」
ドラゴはまだ眠っている。まだほとんど赤ちゃんのドラゴはよく眠り、よく食べる。ソータはドラゴをよしよしと撫でた。ドラゴの尻尾がソータの腕に巻き付く。愛情のしるしらしい。キメルも目を覚ましたようだ。
「おはよう、キメル」
「あぁ、おはよう、ソータ。向こう側に行く準備をしないとな」
「鍵だけじゃ駄目なの?」
「墓参りといえば?」
あ、とソータは頷いた。
「お花がいるよね!」
「あぁ、あと綺麗な水だな。聖域にあるだろ?」
「うん、あるよ、あ」
ドラゴがぱちぱちと目を瞬かせている。何が起きたのだろう?と二人を円らな瞳で見つめている。
「あぎゃ」
ボッとドラゴは小さく火を噴いた。
「ドラゴ、火が出せるの?」
「あぎゃ?」
ソータがすごーいとドラゴを抱き上げるとドラゴが首を傾げている。
「ドラゴ、これからお水とお花を取りに行くよ。お腹空いてるだろうけど、途中に甘い木の実が生ってるからね」
「ぎゅあ」
ドラゴの瞳が甘い木の実と言った瞬間からキラキラし始めた。
「良いかチビ、ちゃんと言う事聞くんだぞ」
「ぎゅう!」
成長したらドラゴはキメルより遥かに大きくなるのだが、それは指摘しないでおく。
ソータはドラゴを布でくるみ、背中に背負った。
「いい?ドラゴ。大人しくしていてね」
「ぎゅう」
ソータたちは聖域を歩き始めた。聖域として広がる森はかなり広い。聖域のため、魔物はいないが、野生の動物はいる。キメルはいつもの幻獣の姿でソータの後ろを歩いていた。ぐきゅるるといよいよドラゴの腹の虫が鳴き出した。
「ドラゴ、もう少しだよ。頑張ろう」
「ぎゅう」
しばらく行くと甘い香りがする。木の実の匂いだ。鳥が突いたり、他の動物がかぶりついたりして、腐っている物もある。ソータはその中から綺麗な実を採りローブの袖で拭いた。それにかぶり付く。大丈夫だとソータは判断した。
新しい木の実を採って、ドラゴに渡す。
「はい、ドラゴ」
「ぎゅああ」
ドラゴが思い切りかぶり付いた。じゅわりと果汁が口の周りに付く。ソータはそれを拭ってやった。
「はい、キメル」
「ありがとうな」
キメルはソータの手から直接木の実を食べた。ソータも木の実に噛り付いた。甘くて美味い。前にこれによく似た木の実を食べたら毒のあるものだった。ソータは毒に耐性があったので平気だったが、一緒にいたフレンはもろに毒をくらい、しばらく嘔吐が止まらなかった。
「フレン兄様あの時、可哀想だったなあ」
「ふ、あのすかした奴がな」
キメルが鼻を鳴らす。
「ぎゅあ」
ドラゴはもりもり木の実を食べた。そしてすやすやと丸くなって眠り始めた。
「ドラゴ、いい子。すごく穏やかな子だよね」
小声でキメルに言うと、キメルががぶとドラゴを甘噛みしている。
「今なら柔らかいし食えるな」
「キメルってば」
キメルの感情表現は乱暴だ。照れくさいせいだとソータは理解しているが、なかなか周りにそれは伝わらない。
「さ、先に進もう」
「うん」
二人は歩き始めた。
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