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「皆ー、課題集めるよー」
僕、一ノ瀬奏は今日の日直だった。昨日、英語の課題が出ていたので、朝のホームルーム前に、皆からノートを預かる。高校2年生になって、もう3カ月経過している。そろそろ進路を決めるようにと先生からも言われているので、時が経つのはあっと言う間だ。
「一ノ瀬!悪い!もうちょい待ってくれ!」
「俺も!頼む!!」
「えぇ…もうホームルーム始まっちゃうよ?」
「奏、こいつらの分は俺が職員室に持ってくから、先に行ってろ」
そう言ってくれたのは、高市海咲だった。彼の言葉に僕はドキドキしてしまう。何故なら僕は彼にずっと片想いをしているからだ。初めて会ったのは小学校4年生の時。海咲は都内から引っ越してきたのだ。カッコいい彼は勉強もスポーツもなんでも出来た。だから皆の人気者になるのもすぐだった。僕はそれをそっと陰から見守ることしか出来なかった。話したいなとは思うのだけど、いざ彼を目の前にすると、上手く話せないのだった。
僕が海咲に恋をしたのは小学校6年のある夏の日だ。その日は大型の台風が来ていて、すごい大雨だった。そんな中で、小学校から苦戦しながら下校している途中、僕は段ボールの中で鳴いている子猫を見つけた。朝は見かけなかったから、昼間くらいに捨てられたのだろうか。何もこんな台風の日にと僕は1人、途方に暮れていた。お母さんは動物が嫌いだし、どうしようと思ったのだ。
「あれ、奏?どした?」
そこで声を掛けてくれたのが海咲だった。
「あ、高市くん。猫が捨てられてて」
「は?こんな時にか?」
「僕の家じゃ飼えないんだ。どこかに避難させてあげたいんだけど思いつかなくて…」
「俺の家、猫10匹いるから1匹くらい増えてもいける」
「え?」
海咲が躊躇わず段ボールを持ち上げる。
「奏、お前も一緒に来いよ」
「えぇ?」
早くしろ、と海咲に急かされて、僕は慌てて海咲の背中を追いかけた。
海咲の家は僕の家からそんなに離れていなかった。なんで今まで知らなかったんだろうと不思議に思うくらいだった。
「本当に猫が10匹もいるの?」
「あぁ、いるぞ。お前、猫アレルギーじゃないよな?」
「大丈夫だと思う」
「ならよかった」
海咲が笑う。僕はその笑顔にまたドキドキした。
✢
「ただいま」
「お邪魔します」
海咲が玄関のドアを開ける。奥からやってきたのはエプロン姿の長い髪の女の人だ。綺麗な人で僕はびっくりした。
「あら、海咲。お友達連れてくるなんて珍しいじゃない」
「母さん、子猫拾ったんだ。まだ元気だけど多分、腹減ってると思う」
「大変。すぐご飯にしないとね。ゆっくりしていってね。タオルも持ってくるわ」
「あ、はい。その、お邪魔します」
海咲のお母さん綺麗だなぁと僕はぼうっと考えた。
海咲のお家は広かった。海咲に案内されて彼の部屋に入る。確かにあちらこちらに猫ちゃんたちがいた。色々な柄の猫ちゃんがいる。
「僕がいると猫さんが嫌がらない?」
心配になって聞いたら、まさかと海咲は笑った。
「皆、お前に興味津々なんだよ。なんだ、この人間はってな」
「そうなんだ」
海咲がちょっと待ってろと部屋を出て行った。
「みぃ」
1匹の猫ちゃんが僕のそばに駆け寄ってくる。僕は座っていたので、太ももに小さな前脚をかけられた。それだけで可愛いのに、他の子も来たそうにしている。
「えーと、撫でていいのかな?」
「み」
恐る恐るよしよし、と頭を撫でてみると、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
「可愛い。僕、猫さんに初めて触った!」
1人で喜んでいると、海咲がお盆を手に現れた。
「ほら、猫たち、奏のこと嫌ってないだろ?」
「……」
はしゃいでいるのを海咲に見られて僕は恥ずかしくなった。俯くと海咲に頭を撫でられる。
「とりあえずこれ飲めよ。暑いだろ?」
その時に飲んだのがレモンスカッシュだった。甘酸っぱいシュワッとした感覚。僕はあのレモンスカッシュの味を忘れることが出来ない。いつの間にか、僕は海咲の事が大好きになっていた。もちろん恋愛対象として。あれから海咲とは軽く雑談くらいは出来るようになっていた。僕のパッとしない人生の中で唯一キラキラしている部分だ。海咲の存在は陰にいる僕を照らしてくれる。それは今でも。
「奏!間に合ったか?!」
海咲が数冊のノートを僕に渡す。僕は慌てて先生のデスクにノートを置いた。
「チャイム鳴っちゃう!早く戻ろ!」
「おう!」
僕たちは無事教室に戻ることが出来た。
僕、一ノ瀬奏は今日の日直だった。昨日、英語の課題が出ていたので、朝のホームルーム前に、皆からノートを預かる。高校2年生になって、もう3カ月経過している。そろそろ進路を決めるようにと先生からも言われているので、時が経つのはあっと言う間だ。
「一ノ瀬!悪い!もうちょい待ってくれ!」
「俺も!頼む!!」
「えぇ…もうホームルーム始まっちゃうよ?」
「奏、こいつらの分は俺が職員室に持ってくから、先に行ってろ」
そう言ってくれたのは、高市海咲だった。彼の言葉に僕はドキドキしてしまう。何故なら僕は彼にずっと片想いをしているからだ。初めて会ったのは小学校4年生の時。海咲は都内から引っ越してきたのだ。カッコいい彼は勉強もスポーツもなんでも出来た。だから皆の人気者になるのもすぐだった。僕はそれをそっと陰から見守ることしか出来なかった。話したいなとは思うのだけど、いざ彼を目の前にすると、上手く話せないのだった。
僕が海咲に恋をしたのは小学校6年のある夏の日だ。その日は大型の台風が来ていて、すごい大雨だった。そんな中で、小学校から苦戦しながら下校している途中、僕は段ボールの中で鳴いている子猫を見つけた。朝は見かけなかったから、昼間くらいに捨てられたのだろうか。何もこんな台風の日にと僕は1人、途方に暮れていた。お母さんは動物が嫌いだし、どうしようと思ったのだ。
「あれ、奏?どした?」
そこで声を掛けてくれたのが海咲だった。
「あ、高市くん。猫が捨てられてて」
「は?こんな時にか?」
「僕の家じゃ飼えないんだ。どこかに避難させてあげたいんだけど思いつかなくて…」
「俺の家、猫10匹いるから1匹くらい増えてもいける」
「え?」
海咲が躊躇わず段ボールを持ち上げる。
「奏、お前も一緒に来いよ」
「えぇ?」
早くしろ、と海咲に急かされて、僕は慌てて海咲の背中を追いかけた。
海咲の家は僕の家からそんなに離れていなかった。なんで今まで知らなかったんだろうと不思議に思うくらいだった。
「本当に猫が10匹もいるの?」
「あぁ、いるぞ。お前、猫アレルギーじゃないよな?」
「大丈夫だと思う」
「ならよかった」
海咲が笑う。僕はその笑顔にまたドキドキした。
✢
「ただいま」
「お邪魔します」
海咲が玄関のドアを開ける。奥からやってきたのはエプロン姿の長い髪の女の人だ。綺麗な人で僕はびっくりした。
「あら、海咲。お友達連れてくるなんて珍しいじゃない」
「母さん、子猫拾ったんだ。まだ元気だけど多分、腹減ってると思う」
「大変。すぐご飯にしないとね。ゆっくりしていってね。タオルも持ってくるわ」
「あ、はい。その、お邪魔します」
海咲のお母さん綺麗だなぁと僕はぼうっと考えた。
海咲のお家は広かった。海咲に案内されて彼の部屋に入る。確かにあちらこちらに猫ちゃんたちがいた。色々な柄の猫ちゃんがいる。
「僕がいると猫さんが嫌がらない?」
心配になって聞いたら、まさかと海咲は笑った。
「皆、お前に興味津々なんだよ。なんだ、この人間はってな」
「そうなんだ」
海咲がちょっと待ってろと部屋を出て行った。
「みぃ」
1匹の猫ちゃんが僕のそばに駆け寄ってくる。僕は座っていたので、太ももに小さな前脚をかけられた。それだけで可愛いのに、他の子も来たそうにしている。
「えーと、撫でていいのかな?」
「み」
恐る恐るよしよし、と頭を撫でてみると、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
「可愛い。僕、猫さんに初めて触った!」
1人で喜んでいると、海咲がお盆を手に現れた。
「ほら、猫たち、奏のこと嫌ってないだろ?」
「……」
はしゃいでいるのを海咲に見られて僕は恥ずかしくなった。俯くと海咲に頭を撫でられる。
「とりあえずこれ飲めよ。暑いだろ?」
その時に飲んだのがレモンスカッシュだった。甘酸っぱいシュワッとした感覚。僕はあのレモンスカッシュの味を忘れることが出来ない。いつの間にか、僕は海咲の事が大好きになっていた。もちろん恋愛対象として。あれから海咲とは軽く雑談くらいは出来るようになっていた。僕のパッとしない人生の中で唯一キラキラしている部分だ。海咲の存在は陰にいる僕を照らしてくれる。それは今でも。
「奏!間に合ったか?!」
海咲が数冊のノートを僕に渡す。僕は慌てて先生のデスクにノートを置いた。
「チャイム鳴っちゃう!早く戻ろ!」
「おう!」
僕たちは無事教室に戻ることが出来た。
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