君とレモンスカッシュ〜ずっと片想いしていました〜

はやしかわともえ

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23話

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教室で僕たちはお弁当を広げている。お母さんに今日は絶対に鶏の唐揚げを入れてねと僕はお願いしていた。その甲斐もあって、甘じょっぱいタレがかかった大きな唐揚げが入っている。これはテンションが上がる。唐揚げを頬張って白米をかきこむ。最高だ。
「奏、腹減ってたんだな」
海咲にしみじみ言われて、僕は急に恥ずかしくなった。
「う、うん、そうなの。僕、まだ綱引きしかしてないんだけどさ」
海咲に呆れられたかな?と心配していたら、海咲がニっと笑った。その顔がカッコよくてドキッとする。
「綱引き頑張ったもんな。よく勝てたよ」
「うん、そうだよね。あ、お昼休憩の後、すぐ綱引きの決勝か」
「よし、いっぱい食って勝とう」
「うん!」

午後になり、外の気温は更に上がっているようだった。この中で僕たちは戦わなければならないのか。
綱を皆が持つ。ホイッスルが鳴り響き、いよいよ勝負が始まった。お互いに一歩も引かない。暑いし、だんだん手が痺れてきた。ぐん、と急に引きずられてしまう。やばい、おさえなくちゃ。綱をなんとか持ち直す。引っ張り直した。でもまた引きずられる。ホイッスルが鳴り響いた。
「A組の勝利!」
向こうで歓声があがる。あぁ、負けてしまった。悔しいけど僕たちは正々堂々と戦った。
綱を置いてお互いに頭を下げる。その場で解散になって、僕は海咲を探した。
「奏!こっちだ」
海咲が駆け寄ってくる。僕は手を振った。
「いやぁ、負けたな!」
「惜しかったよね」
「とりあえず何か飲まないか?」
「本当だ。喉渇いてる」
僕たちは校舎内に戻った。水分を摂りながら次の競技まで涼むことにする。
「次は大縄跳びか」
「確か、体育館だよね」
「あぁ。外も暑いし、一番最後のリレーは体育館でやるみたいだぞ」
「熱中症、危ないもんね」
リレーはバレー同様、学年対抗だ。海咲は3番目に走るらしい。アンカーはもちろん、陸上部の子だ。餅は餅屋というやつである。
「俺、本当はアンカーやりたかったんだよなー」
「えぇ?そうなの?」
「まぁ単純に速さで負けたけどな」
海咲のことだ。勝負をふっかけたのだろう。
「悔しいけど、上には上がいるよな」
「勝負事はどうしてもね」
海咲に急に手を取られて、僕は驚いた。
「なぁ奏。リレーも応援してくれるか?」
僕はドキドキしながら頷いた。
「そ、そんなのもちろんだよ。僕の応援で良ければ」
「奏の応援がいいんだ」
待って、海咲。そんな事言われたら照れちゃうよ。僕の顔は既に熱くなっている。
「よし、勝てそうな気がしてきた。奏、ありがとう」
いつの間にか海咲に抱きしめられている僕がいる。海咲の鼓動を感じる。見上げると海咲の顔があった。
「奏、絶対に勝つからな!見ていてくれ!」
「うん」
海咲のこういう真っ直ぐな所、好きだな。

体育祭ももう終盤に差し掛かっていた。いよいよ最後の競技であるリレーが始まる。全校生徒が見守る中、選ばれた選手、全12名が走るのだ。体育館内がざわつく中、生徒たちが位置につく。
「勝てよ!」
「頑張れー!!」
吹奏楽部によるファンファーレが鳴り響いた。
「位置について!よーい!」
パンっと空砲が鳴り響く。選手たちが走り出した。2年生の選手は綺麗にスタートダッシュを決めた。そのすぐ後を3年生の選手が追い掛ける。
「いけー!!」
声援が響く中、バトンが渡されていく。次は海咲の番だ。バトンが上手く渡ればいいんだけど。僕が1人でドキドキしていると、海咲は上手くバトンを受け取って走り出した。いいぞ!
このまま1位をキープ出来そうだ。僕は先程の海咲との会話を思い出していた。僕に応援して欲しいって、海咲は言ってくれた。
「海咲くん!頑張れ!!」
周りの声に負けじと声を張り上げる。僕がこんなに大きな声を出すなんて滅多にない。海咲が更に走るスピードを上げた。
「海咲ー!このままいけー!1位だぞ!!」
いよいよアンカーにバトンが繋がる。まだ勝負は分からない。すぐ後ろに3年生がいる。1年生の選手も諦めていない。僕たちは選手たちを精一杯応援した。

「やったな!海咲!」
海咲たち、2年生の選手が同じ学年の生徒たちに取り囲まれている。僕はそれを遠目から見ていた。クラスのカースト制度くらい僕にだって分かっている。
もちろん僕は下層で、海咲は上層にいる。クラスメイトにとって僕は、ただ勉強が出来る都合の良い存在なだけだ。酷いと怒ってくれる人も中にはいるけれど、大抵はそうなんだと僕に関わらないようにしてくる人が多い。人間は思いのほか非情なものなのだ。
海咲は僕を見つけると駆け寄ってきた。え?待って、なんでこっちに来ちゃうの?
「奏!勝ったぞ!!」
海咲が僕の腕を掴んで揺する。
「う、うん、すごかったよ」
僕には戸惑うことしか出来なかった。海咲が変な目で見られたらどうしようと思ったのだ。僕はここで、ちょうどいい言い訳を思いついた。
「海咲くん、閉会式が始まるよ」
「そうか。もうおしまいだもんな」
海咲が列に並んだので僕はホッとした。

「むうぅ」
可愛らしく頬を膨らませているのは海咲である。今は帰り道だ。
「海咲くん?カッコいいお顔が台無しになってるけど」
僕が苦笑しながら突っ込んでみたけれど海咲の怒りは収まらないようだ。時間を置けば気分が変わるかな?と僕は気楽に捉えていた。海咲がずっと怒っているところを見たことがなかったからかもだけど。
「奏!俺を邪魔だと思ったんだろ!!」
むすー、と膨れながら海咲が言う。そんなつもりは全然なかったので僕は驚いてしまった。
「ごめんね。海咲くんはカッコいいから僕といると悪く言われるかなって」
「そんなことないー!」
あ、これ幼児化してるぞ。参ったなぁ。
「海咲くん、本当にごめんね、よしよし」
海咲の頭を背伸びして撫でてみたけど、海咲の膨れ面は変わらなかった。それどころかこんなことを言ってきた。
「ぎゅってしてキスしてくれなきゃやだ」
はいぃぃ??海咲、ワガママかよ!
「き、キスって…」
僕が困っていると海咲がむううと膨れる。あ、これはやらないと機嫌が一生直らないやつですわ。
「…ほ、ほっぺならいいよ?」
「やった!」
海咲の機嫌が急に良くなる。何かの罰ゲームかなにかかもしれない。そうじゃないことを祈る。海咲が屈んでくれたので、僕はほっぺにそっとキスをした。
「ぎゅってして!」
「はいはい」
海咲姫はワガママなんだから。僕が海咲を抱きしめると海咲にぎゅむうと抱き着かれている。ライオンさんを抱っこしたらこんな感じになるんだろう。怖い。
「奏、俺頑張ったよな?」
「うん。頑張ったよ」
「文化祭も頑張ろうな!」
体育祭が終わって気が緩んでいたけれどこれから文化祭が控えている。
「うん、頑張ろ!」
2人で笑い合った。
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