4 / 12
2/6
しおりを挟む
夕方、加那太は仕事から帰ってきて干してあった洗濯物を畳んでいた。テレビで天気予報が流れている。週末、都内近郊にあるこの辺りに雪がちらつくらしい。洗濯が出来ない時はコインランドリーに行くのがこの家の通例である。
「にぃ」
洗濯物を畳み終える頃、飼い猫のタマが加那太の隣にちょん、と座る。加那太はそのタイミングの良さに笑ってしまった。
「タマー、週末、雪だってー」
「に?」
タマは首を傾げている。加那太は立ち上がって猫のおやつを取りに行った。タマのおやつの催促の上手さは世界一かもしれないと、飼い主馬鹿を発揮しつつだ。
「タマー、マグロでいいー?」
「に!」
「あ、次おやつ買わなくちゃな」
「にぃ」
タマは相変わらず人の言葉を理解しているようだ。そこがまた可愛らしい。加那太はタマを抱き上げた。タマがぺろりと顔を舐めてくる。
「タマー、バレンタイン大丈夫かなあ?」
「に!」
タマは大丈夫だと言わんばかりに鳴いてくれた。
「うん、僕デート頑張るよ」
✢✢✢
「デートプランは決まりましたか?」
そんなメッセージが千晶から来たのは、加那太がそろそろ横になろうとした時だった。やはり心配してくれている。
「うん、モールに併設されている映画館に行って
みようかなって。夜はあきくんが紹介してくれた
ホテルのディナービュッフェに行くつもり」
「映画ってもしかして今流行りのあの純愛ものですか?」
「うん」
「一緒に見ると恋人とのムードがよくなるって評判ですよね」
「そうだったんだ」
さすが千晶はネットに明るい。
「かなさん、当日が楽しみですね」
「上手くデートに誘えなくてグダグダした」
そんなメッセージと共に泣き顔を送ると千晶がネットスラングで笑っている。そのすぐ後に、かなさん可愛いとメッセージが送られてくる。
「13日はいつものスーパーで待ち合わせしましょう」
「分かった」
加那太はスマートフォンを脇に置いて目を閉じた。千尋はまだPCで仕事をしている。なんだか千尋のことが気になって、加那太はベッドから這い出た。
「加那?寝たんじゃなかったのか?」
「うん、喉乾いたからお茶飲む」
「おう」
冷蔵庫からペットボトルの緑茶を取り出して、グラスに注いだ。千尋の対面に座る。千尋はずっと画面を見ている。
「ねえ、千尋?今度のお出かけなんだけどさ、映画でも良い?」
千尋が画面から顔を上げた。
「あぁ。いいぞ。映画なんて久しぶりだし楽しみだな」
千尋がそう思ってくれるだけでホッとする。
「昼飯はショッピングモールで食って、その後、夜は?」
「ここに行こうと思うの」
加那太はスマートフォンを操作してディナービュッフェの画面を出した。
「へえ、いいじゃないか。なら電車移動か」
「うん」
千尋はいつも自分といる時、ニコニコしている。
普段から穏やかな人だが、千尋だって人間だ。喜怒哀楽だってあるはずだ。
「千尋ってもしかして、悟りを開いてる?」
「は?仏様じゃないぞ、俺は」
何言ってるんだとムッとされ加那太は笑ってしまった。
「千尋、お仕事もいいけど、程々にね。おやすみ」
「おう、おやすみ」
自分は千尋のために何か出来ているのだろうか、ふと不安が過ったが、考えても解決しないものは意外と多い。加那太は気にしないようにベッドに潜り込んだ。
「にぃ」
洗濯物を畳み終える頃、飼い猫のタマが加那太の隣にちょん、と座る。加那太はそのタイミングの良さに笑ってしまった。
「タマー、週末、雪だってー」
「に?」
タマは首を傾げている。加那太は立ち上がって猫のおやつを取りに行った。タマのおやつの催促の上手さは世界一かもしれないと、飼い主馬鹿を発揮しつつだ。
「タマー、マグロでいいー?」
「に!」
「あ、次おやつ買わなくちゃな」
「にぃ」
タマは相変わらず人の言葉を理解しているようだ。そこがまた可愛らしい。加那太はタマを抱き上げた。タマがぺろりと顔を舐めてくる。
「タマー、バレンタイン大丈夫かなあ?」
「に!」
タマは大丈夫だと言わんばかりに鳴いてくれた。
「うん、僕デート頑張るよ」
✢✢✢
「デートプランは決まりましたか?」
そんなメッセージが千晶から来たのは、加那太がそろそろ横になろうとした時だった。やはり心配してくれている。
「うん、モールに併設されている映画館に行って
みようかなって。夜はあきくんが紹介してくれた
ホテルのディナービュッフェに行くつもり」
「映画ってもしかして今流行りのあの純愛ものですか?」
「うん」
「一緒に見ると恋人とのムードがよくなるって評判ですよね」
「そうだったんだ」
さすが千晶はネットに明るい。
「かなさん、当日が楽しみですね」
「上手くデートに誘えなくてグダグダした」
そんなメッセージと共に泣き顔を送ると千晶がネットスラングで笑っている。そのすぐ後に、かなさん可愛いとメッセージが送られてくる。
「13日はいつものスーパーで待ち合わせしましょう」
「分かった」
加那太はスマートフォンを脇に置いて目を閉じた。千尋はまだPCで仕事をしている。なんだか千尋のことが気になって、加那太はベッドから這い出た。
「加那?寝たんじゃなかったのか?」
「うん、喉乾いたからお茶飲む」
「おう」
冷蔵庫からペットボトルの緑茶を取り出して、グラスに注いだ。千尋の対面に座る。千尋はずっと画面を見ている。
「ねえ、千尋?今度のお出かけなんだけどさ、映画でも良い?」
千尋が画面から顔を上げた。
「あぁ。いいぞ。映画なんて久しぶりだし楽しみだな」
千尋がそう思ってくれるだけでホッとする。
「昼飯はショッピングモールで食って、その後、夜は?」
「ここに行こうと思うの」
加那太はスマートフォンを操作してディナービュッフェの画面を出した。
「へえ、いいじゃないか。なら電車移動か」
「うん」
千尋はいつも自分といる時、ニコニコしている。
普段から穏やかな人だが、千尋だって人間だ。喜怒哀楽だってあるはずだ。
「千尋ってもしかして、悟りを開いてる?」
「は?仏様じゃないぞ、俺は」
何言ってるんだとムッとされ加那太は笑ってしまった。
「千尋、お仕事もいいけど、程々にね。おやすみ」
「おう、おやすみ」
自分は千尋のために何か出来ているのだろうか、ふと不安が過ったが、考えても解決しないものは意外と多い。加那太は気にしないようにベッドに潜り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
先輩のことが好きなのに、
未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。
何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?
切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。
《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。
要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。
陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。
夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。
5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
愛と猛毒(仮)
万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。
和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。
「……本当、バカだよな。お前も、俺も」
七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。
その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる