くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ

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くまさんのマッサージ♡4(大地のこと③)

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涼奈の小さい手を握って、大地はサイン会が開催される書店に向かっている。

「翼お兄ちゃん、緊張してるかなー?」

涼奈は翼の心配をしている。ませていると翼は言っていたが、こういうところか、と大地は納得した。

「涼奈ちゃんは翼さんが大好きなんだね」

「うん、翼お兄ちゃん、涼奈にすごく優しいの。涼奈、お兄ちゃん大好き」

ちょっとヤキモチを妬いてしまいそうになった大地だが、なんとかこらえる。子供相手に大人気ないと思ったのだ。

「でも大地君と付き合ってるんだよってお母さん言ってたの。だから涼奈、2人を応援する!」

「ありがとう、涼奈ちゃん」

「えへへ」

「お、あそこだ」

大地がマップを確認してみると間違いなくここだった。既に行列が出来ている。青年漫画雑誌というジャンルも相まって、色々な年代の人が男女関係なくいるようだった。

「涼奈、サインもらえる?」

「もし無理なら後で書いてもらおうか」

「いいの?」

「涼奈ちゃんは翼さんにとっても特別だから」

涼奈の顔がパッと晴れる。

「大地君は優しいんだね」

「涼奈ちゃんはいい子だからね」

涼奈いい子にする!と宣言され、大地は笑ってしまった。まだ7歳のはずなのに、しっかりしているなと大地は感じている。

「涼奈ちゃんは小学生?」

「うん。2年生だよ」

「一番好きなお勉強は?」

「図工が好き」

「いいねえ」

「涼奈も翼お兄ちゃんみたいに絵を描くお仕事したいの!」

「そっかぁ」

翼を見ているとイラストレーターはなかなか厳しい仕事だと大地は実感している。だが、涼奈の夢を否定するつもりはない。

「今から努力すればきっと叶うよ」

「うん!」

2人が列に並びしばらく経つと、前に進みだした。サイン会が始まったらしい。涼奈は緊張してきたのか表情が固くなってきている。

「涼奈ちゃん、大丈夫だよ」

大地が握っていた手を揺すると、涼奈は頷いた。しばらくすると、翼の声がする。お礼を言ったり握手をしたり、まるでアイドルのようだ。

「お兄ちゃんいた」

涼奈が呟く。いよいよ大地たちの番になり、大地はコミックスを差し出した。涼奈はもうカチカチである。

「大地君、ありがとうね」

カチカチになっている涼奈に翼は気付いたらしい。サインを書き終えて、涼奈の方に身を乗り出した。

「涼奈ちゃん、大丈夫かな?」

「お兄ちゃん、サインありがとう」

「いいえー」

握手をして、終える。大地は涼奈をおぶった。あまりにぼーっとしていたからだ。

「涼奈ちゃん、大丈夫かな?」

「うん」

脈も測ってみたが少し早いくらいで異常はない。緊張しただけだろう。

「涼奈ちゃん、ドーナツ食べる?」

「うん」

近くにドーナツ屋がある。大地は店に入った。翼も直に来るだろう。メールで所在を報せた。

✢✢✢

「大地君、涼奈ちゃん、ただいま」

しばらくして翼がやって来る。涼奈は大地に抱えられて眠っている。どうやら疲れたらしい。

「涼奈ちゃん寝ちゃったかぁ」

「翼さん、涼奈ちゃんにあげるものはおもちゃじゃ駄目かもよ?」

「え?」

大地はそっと机の上を指差した。そこには涼奈が書いたものと思われる絵が置かれている。まだ途中らしい。

「わ、上手いなぁ。これライヤだよね?もしかして模写?」

「そう、翼さんのキャラクターが大好きなんだって」

「嬉しい」

「涼奈ちゃんも自分のキャラクターを考えたらしくてね」

「見たい」

「まだ駄目って断られちゃった」

翼がそうか、と手を打つ。

「深めてる最中なのかも?」

「?」

「えーと、うまく言えないけれど、キャラクターの細かい性格とか仕草とか口調とか?」

「それは大事な作業だねぇ」

「でしょう?」

涼奈がもぞ、と動いたので、大地は慌てて抱え直す。

「起きたの?涼奈ちゃん」

「うん」

大地が椅子に座らせてやると、涼奈は欠伸をしながら色鉛筆を片付け始めた。

「涼奈ちゃん、絵上手いねえ」

翼に言われ涼奈は顔を赤らめる。

「涼奈、お兄ちゃんみたいになりたいから」

「ありがとう」

初めはショッピングモールへ行こうと計画していたが、変更して文房具屋に行ったのだった。
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