いちゃらぶ②(日常パート)

はやしかわともえ

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真司×千晶&千尋×加那太

加那太のゲーム部屋②

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「かなさーん!」

「あきくん!!」

僕は手を振った。向こうにいたあきくんも振り返してくれる。真司さんも手を振ってくれた。

「あけましておめでとうございます」

お互いに新年の挨拶を済ませた。こういうの大事だからね。年賀状届いたかな、帰ったら見てみよ!

「じゃ、行きましょうか」

「うん!」

僕たちはこれから一緒に初詣にいく。小さな神社だけど、とても縁起がいい名前で、人気がある。きっと混んでるんだろうな。おみくじも引きたいし、お守りも千尋にあげたい。

通り過ぎる景色を見ながら僕はぼうっと考えていた。さっき、あんなに外の空気が冷たかったのに、電車内は暖かいからなんだか変な感じだ。僕はそこでハッとなった。

「あきくん、具合大丈夫?」

そっと隣りにいた彼に声を掛けたら、小さく頷かれた。あきくんはお兄さんの死を今でも引きずっている。毎年この季節が辛いって前に言っていたから気になっていた。あきくんはすごく周りに気を遣える子だからなおさらだ。僕達の前でくらい辛い気持ちを吐き出してほしい。

「かなさんが俺の担任の先生だったらよかったな」

あきくんがポツッと言ってニコっと笑った。その笑顔が可愛すぎて僕は初照れをした。これを間近で毎回食らってる真司さんはすごいな。
もしかして、慣れるのかな?僕には一生無理そうだけど。

「かなさん?」

照れて固まった僕を、あきくんが不思議そうに見上げてくる。
可愛い。

「あ、えーと、僕はと、図書室の先生だから」

しどろもどろになりながら言ったら、あきくんが笑う。

「図書室を利用する生徒さん増えたんでしょう?」

「ぜ、前任の先生がうまくパスしてくれたから」

「かなさんはすごいです。パワフルだし、色々作り出してるし」

あきくんにそう思われてるなんて、かなり嬉しい。

「あ、あきくんだってお仕事早いって聞いたよ」

「先輩がすぐサボるから」

あきくんのサポート力半端ない。
話を聞いていたらしい真司さんが困ったなって呟いていておかしかった。千尋も仕事に関して手を抜くときは全力で抜くから、石田さんが頑張るらしい。二人共要領いいよね。っていうかやってくれる人がいて、羨ましいよね。そんなことを話しているうちに、神社の最寄り駅に着いた。

さすが観光地。沢山人がいる。僕達もその波に乗るように神社に向かって歩き出した。花火の打ち上がる音がしている。
今日はやっぱり特別なんだ。なんだか嬉しいな。

「あ、改修工事終わったみたいですね」

あきくんがそう言って僕たちは階段のさらに上を見上げた。前まで工事をしていて、神社の一部が見えなくなっていたのだ。改めて立派な造りだなって思う。沢山のひとが、長い間大切にしてきたものだ。それにご利益がないはずがない。
僕達はまず手水場に向かった。
手と口を清める。水が冷たくて体が震えたけど、清められた!っていう感覚がなんだか気持ちいい。
列に並んでお参りの順番を待つ。
何をお願いしようかな。
僕はいつもそうだ、いざとなると何をお願いしたらいいか分からなくなる。

「神様、また来ます」

結局なにも思いつかなくて、神様のスケジュールも知らないのに、また会う予告をしてしまった。図々しかったかな。
でも僕を見て欲しかったから、こういう形になった。

「加那、おみくじするんだろ?」

「うん、みんなは?」

「新年一発目の運試しですね」

「俺も引いてみるか」

結局全員が引いてみることになった。ここのおみくじは箱から取るタイプの物らしい。こういうのは決断力が物を言うと僕は勝手に思っているので、最初に手に触れたおみくじを選んだ。
さぁ、何が出るかな?
おみくじを開くと吉と書かれている。吉ならまだいいかな。
詳しく運勢が書かれているので、それも読んでみる。

なかなかいい感じだ。嬉しいな。

「俺は末吉だった」

「俺は小吉だ」

千尋と真司さんがおみくじを見せてくれる。あきくんは?

「俺、大吉でした」

「すっごーい!絶対にいい年になるよ!」

あきくんが顔を赤らめる。可愛い。今日は可愛いあきくんが沢山見られるな。

「ちょっと休憩しましょうか」

あきくんの提案で近くの甘味処に入った。お店の中はやっぱり暖かい。

「クリームぜんざい…おしるこ…迷う」

あきくんがすごく悩み始めてしまった。どっちも美味しいもんね。
しばらくしてあきくんがメニューを閉じる。決まったらしい。あきくんがお店の人を呼ぶ。

「クリームぜんざいとおしるこ、あとクリームあんみつを3つください」

え…ぜんざいとおしるこ両方行ったよ、この子。さすがスイーツブロガーさんだ。

「あきくんって結構量食べる方だよね?」

すごく痩せてるけど。

「割と食べますね」

「千晶には甘い物用の胃袋があるからな」

「俺は牛じゃないですよ」

むー、とあきくんが膨れている。可愛いな。真司さんは弄り慣れてるな。それも愛かなって思ったらなんだか嬉しくなった。

「かなさん、食べたら電気屋に行きましょうね」

そう、今日のメインイベントはそれだ。ワクワクしてきた。

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