夕夏と4人のプリンセス~不思議な贈り物~

はやしかわともえ

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第三話

アバター夕夏

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カウンセリングを終えて、家に帰ってきた私は、ぼーっとベッドに横になっていた。なんだかすごく疲れた。
今日も暑いなぁ。この部屋にも空調はあるけれど、起き上がってつける元気が私にはなかった。
課題も始めないといけないのに、体が動かない。私っていつもこうだ。やだなあ。

「ゆうかさま!」

「リゼ?」

部屋に入ってきたリゼが空調を付けてくれる。

「ゆうかさま、疲れちゃったなら私たちに言ってくれればいいのに。
今、ミカエルがレモンシャーベットを作ってるの。
食べるよね?」

シャーベットかぁ。なかなか魅力的だ。

「うん、食べる」

リゼが笑って、ベッドの上に上ってくる。私のベッドは大きい。

「ほらゆうかさま、リゼが膝枕してあげる」

「うん」

私の周りの女の人ってみんな綺麗でいい匂いがする。

「ねえ、リゼ?」

「なあに?」

「今日ウル様とトパエルに行くの」

「うん、ウルくんから聞いたよ。
さっき、ゆうかさまのアバターをミカエルが作ってくれてた」

「ウル様、本当に付いてきてくれるんだ」

「当たり前じゃん。大好きなゆうかさまのためだもん」

「嬉しい」

私の目から涙が溢れて止まらなかった。
リゼは何も言わないでずっと頭を撫でていてくれた。
ウル様の優しい気持ちが本当に嬉しい。
私もちゃんと気持ちを返したい。
はっきりそう思った。

寂しいって思っているのは私だけだって勝手に決め付けていた。
ウル様も同じくらい私を想ってくれていた。

「ウルくん、ゆうかさまからなるべく離れたくないからって、毎日お仕事頑張ってるんだよ」

「うん、知ってる」

「この屋敷のみんなは、みんな、ゆうかさまが大好きだからね!」

「ありがとう」

ドアがノックされる。

「はーい」

泣いている私に代わって、リゼが応えてくれた。

「リゼ、夕夏はどうしたんだ?熱中症か?」

ウル様が寝転んでいる私を見て慌てている。

「おかえりー、ウルくん。
今いちゃいちゃしてたとこ、うらやましい?」


「当たり前だろう」

ウル様が唸って小声で言う。可愛い。

「ウル様」

私は起き上がってウル様にしがみついた。

「お帰りなさい、ウル様」

「夕夏、ただいま。元気かい?」

そう言って頬を撫でられる。

「夕夏にシャーベットがあるとミカエルが言っていたよ」

「うん、食べる。リゼも行こう」

「はーい」

私たちは階下に向かった。

「ミカエル、例のものは?」

「はい、ここに」

ミカエルさんが差し出してきたもの、それはピンク色の端末だった。

「夕夏、動かしてごらん」

私は端末を受け取って、ボタンを押した。
画面が明るくなる。

そこにいたのは猫耳の女の子だった。どことなく私に似ている。

「夕夏様いかがでしょうか?」

「うん、可愛い。ありがとう、ミカエルさん」

「よかった」

ミカエルさんがほっと息をついた。

「ミカエル、ありがとう」

「いえ、とんでもありません。すぐに飲み物の用意をします」

「頼む」

ミカエルさんなりに悩んで作ってくれたアバターだ。
大切にしないと。
ウル様も私の後ろから端末を覗き込んでいる。

「ウル様、私のアバター可愛いよね」

そう見上げて言ったら、ぎゅ、と抱きしめられた。

「夕夏は今の夕夏が一番可愛いよ」

「ありがとう」

ウル様にそう言われるとドキドキする。
それからみんなでシャーベットを食べた。
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