夕夏と4人のプリンセス~不思議な贈り物~

はやしかわともえ

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第四話

不動の山

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「ここがエメレシア…!」

私は大きな山を船から見上げていた。
こんもりとした大きな丸い山が突然海にぽっかり浮いているのだ。島というより、苔玉の大きいバージョンに見える。
そう思うとなんだか可愛らしいイメージだ。でも実際は、厳かで重々しかった。
木々が島を覆うように茂っている。


「あぁ、そうだよ。夕夏ちゃん」

ナミネ姫が山を手のひらで示す。

「こここそが堅牢の国、エメレシアさ」

「けんろうの…くに」

堅牢と言われてもすぐには理解が追いつかなかった。
そんな私を見て、ナミネ姫が優しく微笑む。

「夕夏ちゃんに説明するとしたら、ここを陥落することは不可能、と言ったほうが早いかもしれないね」

「そんなに強い国なの?」

怖くなって尋ねたらナミネ姫は首を横に振る。

「違う。この国は戦乱の時代、唯一動かないことを選んだのさ。自分たちを護るために」

「じゃあここの姫君は…」

ナミネ姫が頷く。

「記録にはないが、周りは姫君が行くのを止めたんじゃないかな」

だとしたら、姫君を喪って周りの人はどれほど悲しんだことだろう。しかも自分たちが関わらないことに決めた戦乱によってだ。

「エメレシアの姫君の名前は?」

「エメラ」

ナミネ姫の言った名前を私は何度も繰り返した。なんだか聞き覚えのあるような名前だ。なんでなんだろう。

「エメレシアにはどうやって入るの?」

「この山はそのまま直接国を護っていてね」

ゴゴゴと山の一部がこちらへ向かって下りてくる。
それはあっという間に簡易的な港に変貌した。
なんだかすごい。
ヒーローものに出てくる合体するロボットみたいだ。

向こうからおじさんが走り寄ってくる。

「港の管理をしてくださってる方だ。
おーい!!」

ナミネ姫が手を大きく振るとおじさんも振り返してくれた。

「ナミネ姫様ー!ようけ来たっペー」

船を港につけて私達はエメレシアへ入国した。
改めて思うけど、本当にいろいろな国があるなぁ。

「夕夏ちゃん、これを着なさい」

「え?」

ナミネ姫に渡されたもの。それは黒いジャージだった。

「これから山の奥に行くからね。虫に刺されてはいけないから」

エメレシアは涼しい。長袖でも問題なさそうだ。
私は言われた通りジャージに着替えた。
ロゼはパンツスーツを着ているから問題ないだろう。

「さて、行こうか」

ナミネ姫が軽快に歩き始める。
ナミネ姫はいつもと同じ露出が高い服を着ているけど大丈夫なのかな?

「ナミネ姫は虫に刺されないの?」

そっと聞いたら彼女は笑った。

「虫ごときが私に触れられるはずがないよ」

そんな意味深なことを言って彼女は歩き出してしまう。
私とロゼは慌てて後を追うのだった。
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