僕と君を絆ぐもの

はやしかわともえ

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二話

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「ふふふ、航太くん、そこ違うよ」

「じゃあどうすりゃいいんだよ」

「ここはねー」

ゆえるくんと航太くんが図書室内で勉強しながらいちゃいちゃするのも日常になってきている。
にしても、すごく暑いし、そろそろエアコンの電源を入れるかな。
こんなに暑いのは目の前の二人の熱気がすごいせい?全く、ラブラブなのも考えものだ。

僕たちも中学生の時、周りからこう見られてたのか。
改めて恥ずかしくなる。
黒歴史ってやつだ。
戯れてるなんてレベルじゃない。
正にいちゃいちゃだ。

「二人共、勉強の合間にちゃんと水分摂ってね?」

「はーい!」

もう六月も終わりだ。
あれから、ゆえるくんにはすっかり懐かれているけれど、航太くんは違うようだった。
いつもじろっと睨まれる。毎日だしいい加減それにも、もう慣れてきた。
彼は体も大きいから迫力もあるけど、まだ中学生だし全然怖くない。
高身長の人には千尋で慣れているし。
そういえば航太くんは、部活は何にしたんだろう?
今は期末試験前だし部活は休みのはずだ。
相変わらず、日に焼けているからスポーツ系なのは想像がつく。

ゆえるくんは美術部に入ったと嬉しそうに話してくれた。
うん、可愛い。

エアコンの温度を調整する。
とにかく二人共、試験を頑張ってほしい。
それが本分だしね。

「わぁ、涼しいねー」

ゆえるくんから歓声が上がる。

「月、ここはどうするんだよ?」

「えっとねー」

二人は下校時刻ギリギリまで勉強していた。
偉いな。
僕なんて千尋にヤマを張ってもらったりしていたな。懐かしい。

「加那先生、また来ます!」

「気を付けて帰るんだよ」

二人以外にも数人、本を借りたり勉強したりする生徒がいた。
もっと沢山の子に本を読んでもらいたいな。
そんなことを考えていると、誰かが駆け寄ってくる。
しかも全速力だ。
えぇ?どうすれば正解?

「先生!!」

走ってきた彼にがしぃ、と両肩を掴まれた。
ジャージを着ているし生徒だよね?
思っていたよりおっきいな。

「探したい本見つけてくれるって本当っすか?」

「えぇと?」

僕はまだ事態を飲み込めていなかった。

「航太から聞いたんです!本田先生に本のことを聞いたらいいって。俺の話も聞いてください」

それって。

(航太くんは僕を試そうとしている)

彼らしい試し方だ。
賢い子だな。
僕は笑った。

「僕にもできないことがあるよ?」

「でもどうしても知りたいんです」

彼は引き下がらなかった。
うーん。どうしたもんかなあ。

「とりあえず今日はもう帰って。明日改めて聞くから」

生徒はみんな可愛い。少なくとも僕はそう思っている。

「ありがとうございます!」

彼はしっかりお辞儀をして走っていった。
礼儀正しい子だ。
困ったことになったけど仕方ない。
僕は図書室の鍵をかけて帰る支度をした。

僕は非常勤だ。
長くいる方だとは思うけど。
とりあえず帰ることにして僕は支度をした。
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