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第二話
対神装備
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千尋は食事をしていた。
相変わらず美味しいとも思わないのだが、腹は減る。その欲求には抗えず、機械的に食べ物を口に運んだ。
「ねえ、千尋?」
中からこうしてハルカに話しかけられるのにも慣れてきた。
「なんだ…」
「私の完成させた対神装備をもっと見たいと思わない?」
千尋はしばらく考える。ふと脳裏を加那太がよぎる。
「あぁ、見てみたいな」
ハルカは楽しそうに笑った。
今はこうしてハルカの思うようにさせればいい。
少しずつ彼女から力を奪い取る。今できるのはそれだけだ。
(俺の中には少ししかハルカの力を貯められない)
それは千尋の中にハルカがいるせいである。
それだけハルカは巨大な容量を使うということだ。トレント戦で分かったが、あれだけの力が出せるのだから無理もない。
「アオイ!」
ハルカが呼ぶと、あの少女が現れた。
「ハルカ様、なんでしょうか?」
「あなたにも装備をあげる」
「え……?」
アオイと呼ばれた少女は戸惑っているようだ。
「ですが、対神装備は選ばれた者しか使えないのでは…?」
ハルカがくすくす笑う。
「私もあれから改良を加えたの。
もっと強力に容易に扱えるように。
次の神は地の神より強大よ。あなたも力を貸して頂戴」
「わ、わかりました…」
それから千尋と同じように彼女も装備を手に入れた。
それは青い色をした弓矢だった。
「青い焔。素敵ね、アオイ」
「は、はい」
千尋は黙ってそれを眺めていた。
✢✢✢
加那太は地図を見つめていた。
「どうしたの?加那太」
ハルカが話しかけてくる。
「うん、寺院の位置を確認してる。
次はどこが狙われるのかなって」
「私のことだから水の神を司るゴルド寺院かな。そんなに離れていないし」
加那太はゴルド寺院を探した。
確かにシルヴァ寺院からあまり離れていないようだ。
だがここからは十分距離がある。
シルヴァ寺院は歩いていける距離だったから良かったが、どうするべきだろうか。
そんな加那太の考えに気が付いたのかハルカは言った。
「大丈夫、レオならどこの宿屋にでも泊まれるから」
やはりお金持ちは違う。
そんなことを思っていたらバタバタと足音がした。
「加那太ー!だめだった!!」
レオはびしょびしょだ。
加那太はギョッとした。
「どうしたの?レオ?」
「いや、人を集めようと思ってギルドに行ったんだけど、みんな忙しいみたいでさ。
仕方なくこの辺り一帯を一人で探してみたんだけど、水たまりに落ちて」
「それは大変だったね。とにかく着替えたほうがいいよ」
「あぁ!」
レオが着替えをしに部屋から出ていく。
ハルカが中で笑っていた。
「レオは相変わらずなのね」
加那太をさらったとはとても思えない。
加那太も耐えきれずに一緒に笑った。
しばらくして着替えを終えたレオがやってくる。
「加那太、何をしてるんだ?」
「うん、千尋が次にどこに現れるかなって」
「それは大事だな!
距離的にはゴルド寺院が近い。
もし行くならすぐ動かないと間に合わない」
レオの意見は最もだった。
加那太は言っておくことにした。
「レオ、僕の中にハルカさんがいる」
「えぇ?!ハルカ?」
レオの驚きぶりは凄まじかった。
「ハルカ!会いたかった!!」
そう言って加那太に抱き着いてくる。
「レオ、その前にまずは私を止めなくちゃ」
ハルカの言葉にレオは頷いた。
「その通りだな!よし準備して早速ゴルド寺院に向かおう!」
こうして進路が決まったのだった。
「にしてもさー、神さえ殺す装備にどう対抗すればいいんだ?」
レオの疑問も最もだった。
加那太は考える。
「多分、あの武器はハルカさんの魔力を基礎にして作られている。つまり」
レオもハッとしたようだ。
「ハルカの魔力を失くせば…!」
「うん、もしかしたら壊せるかもしれない」
ハルカが言う。
「私の魔力は私が奪う。
任せておいて」
「上手く行くといいけれど」
この前の千尋の立ち回りを思い出す。
全く無駄がなかった。
だがやるしかない。
(今できる最善の方法を試すしかない)
加那太はそう決意した。
相変わらず美味しいとも思わないのだが、腹は減る。その欲求には抗えず、機械的に食べ物を口に運んだ。
「ねえ、千尋?」
中からこうしてハルカに話しかけられるのにも慣れてきた。
「なんだ…」
「私の完成させた対神装備をもっと見たいと思わない?」
千尋はしばらく考える。ふと脳裏を加那太がよぎる。
「あぁ、見てみたいな」
ハルカは楽しそうに笑った。
今はこうしてハルカの思うようにさせればいい。
少しずつ彼女から力を奪い取る。今できるのはそれだけだ。
(俺の中には少ししかハルカの力を貯められない)
それは千尋の中にハルカがいるせいである。
それだけハルカは巨大な容量を使うということだ。トレント戦で分かったが、あれだけの力が出せるのだから無理もない。
「アオイ!」
ハルカが呼ぶと、あの少女が現れた。
「ハルカ様、なんでしょうか?」
「あなたにも装備をあげる」
「え……?」
アオイと呼ばれた少女は戸惑っているようだ。
「ですが、対神装備は選ばれた者しか使えないのでは…?」
ハルカがくすくす笑う。
「私もあれから改良を加えたの。
もっと強力に容易に扱えるように。
次の神は地の神より強大よ。あなたも力を貸して頂戴」
「わ、わかりました…」
それから千尋と同じように彼女も装備を手に入れた。
それは青い色をした弓矢だった。
「青い焔。素敵ね、アオイ」
「は、はい」
千尋は黙ってそれを眺めていた。
✢✢✢
加那太は地図を見つめていた。
「どうしたの?加那太」
ハルカが話しかけてくる。
「うん、寺院の位置を確認してる。
次はどこが狙われるのかなって」
「私のことだから水の神を司るゴルド寺院かな。そんなに離れていないし」
加那太はゴルド寺院を探した。
確かにシルヴァ寺院からあまり離れていないようだ。
だがここからは十分距離がある。
シルヴァ寺院は歩いていける距離だったから良かったが、どうするべきだろうか。
そんな加那太の考えに気が付いたのかハルカは言った。
「大丈夫、レオならどこの宿屋にでも泊まれるから」
やはりお金持ちは違う。
そんなことを思っていたらバタバタと足音がした。
「加那太ー!だめだった!!」
レオはびしょびしょだ。
加那太はギョッとした。
「どうしたの?レオ?」
「いや、人を集めようと思ってギルドに行ったんだけど、みんな忙しいみたいでさ。
仕方なくこの辺り一帯を一人で探してみたんだけど、水たまりに落ちて」
「それは大変だったね。とにかく着替えたほうがいいよ」
「あぁ!」
レオが着替えをしに部屋から出ていく。
ハルカが中で笑っていた。
「レオは相変わらずなのね」
加那太をさらったとはとても思えない。
加那太も耐えきれずに一緒に笑った。
しばらくして着替えを終えたレオがやってくる。
「加那太、何をしてるんだ?」
「うん、千尋が次にどこに現れるかなって」
「それは大事だな!
距離的にはゴルド寺院が近い。
もし行くならすぐ動かないと間に合わない」
レオの意見は最もだった。
加那太は言っておくことにした。
「レオ、僕の中にハルカさんがいる」
「えぇ?!ハルカ?」
レオの驚きぶりは凄まじかった。
「ハルカ!会いたかった!!」
そう言って加那太に抱き着いてくる。
「レオ、その前にまずは私を止めなくちゃ」
ハルカの言葉にレオは頷いた。
「その通りだな!よし準備して早速ゴルド寺院に向かおう!」
こうして進路が決まったのだった。
「にしてもさー、神さえ殺す装備にどう対抗すればいいんだ?」
レオの疑問も最もだった。
加那太は考える。
「多分、あの武器はハルカさんの魔力を基礎にして作られている。つまり」
レオもハッとしたようだ。
「ハルカの魔力を失くせば…!」
「うん、もしかしたら壊せるかもしれない」
ハルカが言う。
「私の魔力は私が奪う。
任せておいて」
「上手く行くといいけれど」
この前の千尋の立ち回りを思い出す。
全く無駄がなかった。
だがやるしかない。
(今できる最善の方法を試すしかない)
加那太はそう決意した。
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