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第二話

加那太と本

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「どうしよう、俺はどうしたら…」

「レオ、とにかく落ち着いてよ」

屋敷に戻ってからもレオは真っ青な顔でずっと呟いていた。加那太の励ましも聞こえていないようである。

(意外とプレッシャーに弱いタイプなんだな)

加那太が冷静にそんなことを思っていると、レオが勢い良く立ち上がる。
おかげで彼が座っていた椅子が後ろに倒れた。

「レオ?」

加那太が恐る恐る声をかけると、レオが鼻息荒く言う。

「俺、ハルカを探す!」

「うん、それはいいけど、どうやって?」

「人海戦術に決まっている!」

(それもいいかもしれない。レオに付き合ってくれる人がいるかはわからないけど)

「うん。やってみたらいいんじゃないかな。
僕も違う方法を試してみるよ」

「ありがとう、加那太。君も千尋が心配だよな…」

レオが悲しげに言う。彼は優しい。
加那太は笑ってみせた。

「大丈夫。千尋は図太いもの。
僕たち、そうゆうところも似てるから」

「信じ合っているんだな」

「レオ…」

「俺は何をしてもハルカに認められない。
ハルカはいつも、俺の遥か先を走ってる。
俺じゃ一生追い付けない」

加那太はぽかり、と軽く彼の頭を小突いた。レオがぽかんとしている。

「そんな弱気なレオ、全然らしくないじゃん」

「加那太…。そ、そうだよな!
すまない!
俺、頑張ってみるから!」

レオがそう言って走っていくのを加那太は見送った。

(さて、僕もやること、やっておかないとね)

改めてレオの部屋に入る。
加那太は部屋にある全てのハルカの論文をかき集めた。

「ねえ、いるんでしょう?ハルカさん」

加那太がそう声をかけると、ピンク色の小さな光が浮かび上がった。今にも消えそうなくらい弱々しい光だ。

「なんで私がいるってわかったの?」

加那太は両手にその光をそっと乗せた。

「僕もこの力を使い始めてだいぶ経つからね。慣れってやつかな。君の気配くらいなら分かるよ」

「私を殺す?」


「まさか。君には僕たちに協力してもらいたいんだ。あっちのハルカさんと千尋を止めなくちゃ」

「そんなことできないよ。
だって向こうのハルカの方が強いもの」

「僕を引き金にしたら?」

「え?」

ハルカは戸惑っているようだ。
しばらく黙っていた。そして言う。

「た、確かに、加那太の力を借りればいけるかもしれない。
それより、どうしてそんなに力が強くなってるの?!」

ハルカの疑問に加那太は笑った。

「千尋がくれたみたいなんだ。
僕も今、気が付いた。
千尋はハルカさんから少しずつ力を奪い取ったんだろうね」

千尋はやっぱり千尋だった。
抱き締めてくれた時に加那太に譲渡したのだろう。千尋の中にはハルカがいる。
力の譲渡など造作もないことだ。

「千尋は心を抜かれている。どうして…」

「それは僕にもわからない。
でも千尋は生きている。ハルカさんと一緒に助けたい」

「わ、私、レオがあんなに頑張るとは思わなかった」

ハルカがつっかえながら言う。

「いつも泣き虫でドジなレオが、あなたを無理やりさらってまで私を助けたいって」

「うん。レオは君が好きだからね。
手段なんて選んでいられなかったんだよ」

「加那太、私を本当に使ってくれるつもり?」

「もちろん。僕の中にいなよ。君の魔力が枯渇する前に」

「加那太、ありがとう」

(これで僕にできる事はやった)

加那太はふと、地図を見つけた。


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