どうか、幸せになれますように

はやしかわともえ

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告白

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僕は中学生一年生になっていた。
卒業するまで、制服を着ているというより、ずっと着られてる状態だった。

普通、制服を新しく作る際、体が成長することを考慮して、少し大きめに作る。
でも僕の体はそんなに成長しなかった。
千尋はぐいぐい身長が伸びて、僕との身長差がますます増した。

ふとした瞬間に千尋が「男」なんだと理解して僕はドキドキしてしまった。
それがどんな感情か、今なら分かる。
「劣情」だ。
僕はずっと千尋が好きで仕方がなかった。
自分も男なのに、こんな気持ちを千尋に対して抱いてしまう自分が嫌だった。

中学生の頃、千尋は毎日部活で、朝が早かった。
僕が登校すると、必ず一人だけ休憩タイムに入っていて、先生に呆れられていた。
そもそも僕達の通っていた中学校の運動部はどれも普通レベルだったから、それが許されたんだろう。
千尋も多分それを分かってやっていたんだろうし。この頃から抜け目ないなぁ。

中学校に入って迎えた初めてのバレンタインデー。また僕は千尋にチョコレートを作るかどうか散々悩んで、作ることにした。
去年の千尋の笑顔が忘れられなかった。
もし断られても、冗談なんだから大丈夫だ、なんて僕は自分に言い聞かせていた。

僕はあくまで手作りにこだわった。
だって千尋にチョコレートをあげようとする女の子は大抵手作りのものを持ってくる。
負けるわけにはいかない。

バレンタインデーの日、千尋はもらったチョコレートを女の子に返すという作業をする。
好きじゃないという言葉付きで。
それで女の子に泣かれても千尋は気にしていないようだった。
じゃあ僕は?なんて思ってしまう。
僕のことはどう思っているの?なんて僕は聞けなかった。
僕はモヤモヤしながらもチョコレートを作った。千尋の気持ちを聞きたい、でも怖い。

僕はどうしたら…なんて思っていた。

バレンタインデー当日、やっぱり千尋は勝手に休憩タイムに入っていた。
千尋が僕に気が付いたらしい、声を掛けてきた。

「おはよう、加那」

「おはよう、倉沢」

僕は千尋をなかなか名前で呼べなかった。
名前で呼んだら甘えてしまいそうで嫌だったのもある。

「チョコレートもらった?」

一応聞いたら千尋が困ったような顔をした。

「返したら泣かれた」

「そ、そりゃそうだよ」

千尋はかっこいい。はっきり言って、なんで僕と一緒にいてくれるのか分からない。
学校というものは不思議なもので、それぞれ立ち位置が変わってくる。
僕は一番最下層にいた。
それはよく分かっていた。

でも千尋のおかげで、いじめられなかったし、変にからかわれたりもなかった。

「チョコレートってもらったらいけないの?」

教室でふと尋ねたら、千尋が言う。

「好きでもないのにもらえないだろ」

「そういうもんかね」

「そういうもんだよ。で、今年もお前のチョコレートはもらえるのか?」

千尋の言葉に僕は顔が熱くなった。

「り、力作です」

青いリボンが可愛らしく巻かれた袋を千尋に差し出すと、千尋が嬉しそうに笑う。

「ありがとうな、加那」

この時のことを思うと、千尋が僕からチョコレートをもらっているなんて誰も思わなかったんだろうな。よくある、「代わりに渡しておいて」的なやつだと思われていたんだろう。

こんな時に噂になっていたら僕は間違いなく不登校になっていたと思う。

その日、ふと千尋と二人きりになった。
なんでそうなったのかはよく覚えていない。

「加那、好きだよ」

「え?」

僕はそのまま千尋にキスされていた。
両思いだったって知って、僕はすごく嬉しかったんだ。
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