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「可愛いって言わないで事件」
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千尋と僕は小学校入学の時から一緒にいる。
だから、千尋が僕よりなんでも上手に出来るのを人一倍見てきている。
もちろん僕は全てにおいて何事も出来なかったから余計だった。
「どうせ僕なんて」と中学二年生になった時には、完全にいじけてしまっていた。
それで千尋に、「お前はやればできる」と励まされると余計いじける嫌な奴だった。
しかも中学生の僕は周りの成長にまるでついていけなかった。
だから周りの人からよく女の子と間違われていた。
僕はその度に拗ねて、いじけて、泣いた。
千尋はそんな僕の話を辛抱強く聞いてくれた。
優しいひとなんだよな、本当に。
でもそんなある日、事件が起きてしまったんだ。
「加那は可愛いよ」
千尋が僕のことを「可愛い」って言ってしまったんだ。「可愛い」はその頃の僕にとっての地雷ワードだった。
僕はわんわん泣いた。
馬鹿にされたんだって完全に思い込んだ。
千尋にとっての「可愛い」は僕が「好き」だよっていう意味の「可愛い」だったのに、僕にはそこまで考えるゆとりはなかった。
高校生の時に二人でこの事件について振り返った。この「可愛い事件」は絶縁レベルのやばいやつだったらしい。
僕は学校にしばらくいけなくなって、千尋は大変なことをしてしまったと相当焦ったようだ。
僕が同じ立場なら、絶対にパニックになってしまっている。
これが最初で最後の大喧嘩だったらいいな。
今の所、日常で喧嘩に発展することすらないから、そう願っている。
あの時、学校を休んでゲームばかりしていたら、僕はすっかり体がなまって具合が悪くなってしまった。
もとから僕は体力があるほうじゃない。
千尋はそんな僕をすごく心配してくれた。
ある日、千尋が僕の部屋にやってきてくれた。僕は無視してゲームを続けようとしてできなかった。
千尋が優しく僕を抱き締めてくれたんだ。
「加那、好きだよ。ずっと好きだ」
僕はその言葉にドキッとした。
千尋はかっこよくて頭が良くて優しい。
僕は千尋の前で泣いた。
「こんな僕が可愛いわけないでしょ!
こんなにいじけるのに!こんなに嫌なやつなのに!!」
僕はすっかり自分が嫌いになってしまっていた。千尋が驚いたような顔をしていたのをよく覚えている。
よく考えれば、この一件で恋人関係だったのがリセットされたのかもしれない。
僕は千尋のことを「倉沢」と呼ぶようになっていた。
親友だと思うようになっていたんだ。
千尋も僕を「カナタ」って呼んでいたな。
懐かしい。
「加那、最近なにをカタカタ打ってるんだ?」
千尋は今、僕の目の前に座っている。
僕は笑った。
「大事なことだよ!」
この記憶振り返り作業は僕にとって、大事な作業なんだよ。
だから、千尋が僕よりなんでも上手に出来るのを人一倍見てきている。
もちろん僕は全てにおいて何事も出来なかったから余計だった。
「どうせ僕なんて」と中学二年生になった時には、完全にいじけてしまっていた。
それで千尋に、「お前はやればできる」と励まされると余計いじける嫌な奴だった。
しかも中学生の僕は周りの成長にまるでついていけなかった。
だから周りの人からよく女の子と間違われていた。
僕はその度に拗ねて、いじけて、泣いた。
千尋はそんな僕の話を辛抱強く聞いてくれた。
優しいひとなんだよな、本当に。
でもそんなある日、事件が起きてしまったんだ。
「加那は可愛いよ」
千尋が僕のことを「可愛い」って言ってしまったんだ。「可愛い」はその頃の僕にとっての地雷ワードだった。
僕はわんわん泣いた。
馬鹿にされたんだって完全に思い込んだ。
千尋にとっての「可愛い」は僕が「好き」だよっていう意味の「可愛い」だったのに、僕にはそこまで考えるゆとりはなかった。
高校生の時に二人でこの事件について振り返った。この「可愛い事件」は絶縁レベルのやばいやつだったらしい。
僕は学校にしばらくいけなくなって、千尋は大変なことをしてしまったと相当焦ったようだ。
僕が同じ立場なら、絶対にパニックになってしまっている。
これが最初で最後の大喧嘩だったらいいな。
今の所、日常で喧嘩に発展することすらないから、そう願っている。
あの時、学校を休んでゲームばかりしていたら、僕はすっかり体がなまって具合が悪くなってしまった。
もとから僕は体力があるほうじゃない。
千尋はそんな僕をすごく心配してくれた。
ある日、千尋が僕の部屋にやってきてくれた。僕は無視してゲームを続けようとしてできなかった。
千尋が優しく僕を抱き締めてくれたんだ。
「加那、好きだよ。ずっと好きだ」
僕はその言葉にドキッとした。
千尋はかっこよくて頭が良くて優しい。
僕は千尋の前で泣いた。
「こんな僕が可愛いわけないでしょ!
こんなにいじけるのに!こんなに嫌なやつなのに!!」
僕はすっかり自分が嫌いになってしまっていた。千尋が驚いたような顔をしていたのをよく覚えている。
よく考えれば、この一件で恋人関係だったのがリセットされたのかもしれない。
僕は千尋のことを「倉沢」と呼ぶようになっていた。
親友だと思うようになっていたんだ。
千尋も僕を「カナタ」って呼んでいたな。
懐かしい。
「加那、最近なにをカタカタ打ってるんだ?」
千尋は今、僕の目の前に座っている。
僕は笑った。
「大事なことだよ!」
この記憶振り返り作業は僕にとって、大事な作業なんだよ。
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