僕らのもう一つの物語

はやしかわともえ

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最終決戦?

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強い風が吹いている。陽の光が差し込んできていて眩しかった。
ここはどこだろう?
辺りを見回す、天井を支えていたらしい真っ白な何本もの白い柱。(肝心の天井はない)
地面にはひび割れた女性の像が倒れている。
そこを這うように植物がつたって花まで咲いていた。
ここはもしかして。

(神殿?)

僕はゲームでは定番の場面にいた。ゲームの世界ならとてもワクワクするところだけど、実際は静かすぎて怖い。

「加那太」

どうしたものか困っていると、名前を呼ばれる。
振り返ると彼だった。少しホッとする。

「加那太、僕はいい加減終わらせないといけないよね」

「何を言っているの?」

彼は寂しそうに笑った。

「ワクチンを打たれて、リバーズを壊したのは僕なんだよ」

「そう、だったんだ、じゃあ君がチヒロさんの弟さん?」

彼がはにかむ。
僕は今までずっと彼の力と一緒だった。だからわかる。
彼がとても優しい人であることを。

「君がリバーズを壊したのは、そのワクチンのせいだよね?
だから君のせいじゃないよ」

「兄さんもそう言ってくれたよ」

でも、と彼はうつむいた。
途端に彼の雰囲気が変わる。
あまりの威圧感に僕は後ずさった。
彼から耐えられないくらいの怒りを感じる。
いつの間にか、彼の姿も変わっていた。白い翼だったのに今では、蝙蝠こうもりのような真っ黒な翼に変わっている。
怖い。

「兄さんは優しかった。
ずっと僕だけを思ってくれた。
でもだんだん僕を忘れていく!兄さんのそばにいられる君たちが憎い!
僕はずっと封印されていたんだ」

許さない、そう彼は呟いて、手に持った剣で僕に襲いかかってきた。
彼は正気を失っているように見える。きっと本心じゃない、そう思いたい。
彼が剣を僕に向かって振り下ろす。

(やば!)

盾魔法の詠唱が、ぎりぎり間に合ってよかった。
それでも押されている事に変わりはない。



(どうしよう、このままだと殺されちゃう)

補助がメインである天使ジョブの僕に反撃の余地はなかった。ぐぐ、と彼が剣に更に力を込めてくる。

(盾が壊れる!)

「加那から離れろ!」

千尋だった。来てくれたんだ。
僕の盾は限界に来ていたらしい。あっけなく割れて消えた。
僕はその衝撃で後ろに弾き飛ばされる。
すかさず千尋が彼の剣撃を受け止めてくれた。
ギリ、と刃が擦れ合う。
千尋の方が遥かに体格は上なのに、彼は余裕そうに笑ってみせた

「君たちに僕の気持ちなんてわからないでしょう」

「そんなのわかるわけないだろ!」

千尋の言葉に彼はますます力を込めたようだ。千尋が苦しそうに彼の攻撃を堪えている。僕もぼーっとしている場合じゃない。
先程より強くて大きな盾になるよう詠唱する。

(千尋を守って!)


「無駄だよ、加那太。言ったよね?君の力の元は僕なんだ」

盾が形を成さない。

「そんな」

これじゃ、どうやって戦えば?

「加那、逃げ、ろ」

千尋が苦しそうに言う。

「やだ!」

僕は立ち上がった。もう魔力を使えない、それはよくわかっている。
でも諦めたくなかった。

(諦めない、二人とも助ける)

ある人の言葉が甦る。僕たちを守るためにもらったもの。
僕はそっと胸元を探った。
彼方姫がくれた赤い石のついたペンダント。
それを握ると輝きが増した。
あっという間に視界がホワイトアウトする。

「二人とも、無事か?よく堪えたな」

この声は?

「ミユ、もうよさないか」

チヒロさんだった。彼はミユという名前なのか。倒れている千尋の元に僕は駆け寄る。
怪我はしていないようだ。よかった。

「兄さん、また誰かの味方をするの?また僕を敵にするの?」

「ミユ、そうじゃない。俺はお前を」

「うるさい。兄さんに用はない。もう消えてよ」

「そうか」

チヒロさんが立ち上がる。そして武器を具現化した。剣を抜く。

「ミユ、俺と勝負しろ。お前が勝ったら俺はお前の言うとおりにしよう」

先程の戦いで、ミユがものすごく強いということは僕でもわかる。

「兄さん、何言っているかわかってる?僕に勝負を挑むなんてさ」

「そうだな。お前の方が遥かに強いのは承知している」

あんなに強いチヒロさんがミユには敵わないなんて。
だがな、とチヒロさんは笑った。

「俺も修行は積んできたつもりだ。前の俺よりは強いぞ」

「へえ」

ミユは邪悪に笑った。

「場所を変えようか。もっと二人にふさわしい場所に」

「好きにしろ」

ミユが指を鳴らすと、森の中に場面は変わっていた。ここは?

「兄さんがここに僕を封印した」

「あぁ、覚えている」

二人が音もなく戦いを始める。それは僕の目に捉えられるものではなかった。剣同士がぶつかり合う音が響く。

このままずっと二人は戦い続けるつもりなんだろうか。
それは絶対避けなくちゃいけない。

(僕に出来ること、なにか)

「加那」

下を見ると千尋が目を開けていた。
よかった。

「俺の太刀が何かおかしいんだ」

千尋が呻くように言う。僕はそばに刺さっていた太刀を持ってきた。
千尋がその太刀を握ると、ポンという軽い破裂音がした。なんだ?

「遅いよ、気が付くの」

それは小さいミユだった。え、どういうこと?
僕達が固まっていると、ミユは頬を膨らませて見せる。

「僕がワクチンで暴走しているのは分かってたけど、ここまでとはね。千尋の刀に隠れていてよかったよ」

「君、ミユだよね?」

「加那太、詳しい話は後だ。二人とも僕についてきて。あと魔力を渡しておくね」


千尋を助け起こす。どこに行くって言うんだ?
僕達はミユを追いかけた。
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