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あの時のこと
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「真司さん、俺達一番乗りですね!」
朝から千晶はご機嫌だった。いよいよ待ちに待った週末である。千晶に急かされるように家を出て、目的の店の前で開店を待っている。天気はよかった。
途中、道に植えられていた梅はもう花開いている。
また春が来るのだ。
別れと出会いの季節である。
時間はどんどん過ぎていく。
「ここの写真、撮ってもいいか聞きたいなぁ」
千晶が呟いている。
「ブログに載せるのか?」
「はい。こうゆうの、今は動画でやられている方が主なんですが、俺は動画を撮るのは無理だし」
「千晶は可愛いから人気出そうだけど」
千晶が顔を赤らめる。
「俺、多分動画だとアガっちゃうから。それにブログを通じて、仲良くなった方も多いし」
「あぁ、ブログ、始めてよかったよな」
「はい」
開店時間が近付くにつれて、ちらほら客が真司達の後ろに並び始めた。
分かっていたことだが、やはり人気店らしい。昼間、アルコールはワインのみの提供で、必ず一品は料理を頼むのがこの店のルールのようだ。
いよいよ開店時間になった。
二人は店の中に入る。写真で見て知っていたが、やはり洒落た店内だった。
席に着き、二人はメニューを眺める。
「何にする?」
メニューにはピザやパスタをメインに、ワインのあてになるようなものがある。
「わー、どれにするか迷いますね」
千晶はしばらく考えて、ミートソースのパスタを選んだ。真司はカルボナーラソースのパスタにする。
二人でシェアしようとマルゲリータピザも頼む。
デザートは食べ終えてから改めて頼むことにして、二人は料理を注文した。
千晶は早速、店員に店の外観を撮影していいか尋ねている。
どうやらオーケーを貰えたようだ。
「ちょっと写真撮ってきますね!」
千晶はそう言って店外に出て行った。
しばらくすると千晶が戻ってくる。
「撮れましたよ」
そう言って真司にスマートフォンで撮った写真を見せてくれる。
千晶は写真を撮るのが上手いのか、店の雰囲気がよく伝わってきた。
「千晶はすごいな」
「あの…」
千晶が着ていたコートを脱いで、椅子に掛けながら言う。
「千晶?」
千晶はすとん、と椅子に座りしばらく黙っていた。
「この前、田中先輩と話していたの聞いちゃって」
千晶が真っ赤な顔で言う。
「俺のこと愛してるって…嬉しくて」
真司も自分の顔が瞬間的に熱くなるのを感じた。なんとも照れ臭い。
「し…真司さんは本当に俺を好きでいてくれてるのに、俺に自信がないから信じてあげられなくて…ごめんなさい」
「千晶は何も悪くないぞ!
田中に話しちゃったこと黙っててごめんな」
千晶は黙って首を横に振った。
「俺、すごく幸せです」
にっこりと千晶が笑う。
「俺もだよ」
店員が注文した料理を運んでくる。千晶は写真を欠かさず撮って、味や入っている具なんかをスマートフォンのメモ帳にメモしながら食べていた。
「美味しいですね」
「あぁ。夜はどんな料理を出すんだろうな?」
「あ、ちょっと調べたんですけど夜は本当に酒場になるみたいで、立食形式になるとかって」
「洒落てるな!」
幹事は誰だっただろうか、なんて真司は考えていた。
「林田さんです」
千晶が真司の思考を読み取ったのかこう答えてくれる。
林田というのは真司より少し年上の女性職員だ。
仕事がとにかくできるので、『デキる女』と陰では呼ばれている。
美人なのでファンも多い。
だが彼女が出来すぎるあまり、男の方が気後れするのだ。真司からすれば「くだらない」と思う。
「林田さん、酒好きなのか?」
「俺もあまり話したことないから…」
「ふーん」
真司は店内を改めて見回してパスタを再び食べ始めた。
朝から千晶はご機嫌だった。いよいよ待ちに待った週末である。千晶に急かされるように家を出て、目的の店の前で開店を待っている。天気はよかった。
途中、道に植えられていた梅はもう花開いている。
また春が来るのだ。
別れと出会いの季節である。
時間はどんどん過ぎていく。
「ここの写真、撮ってもいいか聞きたいなぁ」
千晶が呟いている。
「ブログに載せるのか?」
「はい。こうゆうの、今は動画でやられている方が主なんですが、俺は動画を撮るのは無理だし」
「千晶は可愛いから人気出そうだけど」
千晶が顔を赤らめる。
「俺、多分動画だとアガっちゃうから。それにブログを通じて、仲良くなった方も多いし」
「あぁ、ブログ、始めてよかったよな」
「はい」
開店時間が近付くにつれて、ちらほら客が真司達の後ろに並び始めた。
分かっていたことだが、やはり人気店らしい。昼間、アルコールはワインのみの提供で、必ず一品は料理を頼むのがこの店のルールのようだ。
いよいよ開店時間になった。
二人は店の中に入る。写真で見て知っていたが、やはり洒落た店内だった。
席に着き、二人はメニューを眺める。
「何にする?」
メニューにはピザやパスタをメインに、ワインのあてになるようなものがある。
「わー、どれにするか迷いますね」
千晶はしばらく考えて、ミートソースのパスタを選んだ。真司はカルボナーラソースのパスタにする。
二人でシェアしようとマルゲリータピザも頼む。
デザートは食べ終えてから改めて頼むことにして、二人は料理を注文した。
千晶は早速、店員に店の外観を撮影していいか尋ねている。
どうやらオーケーを貰えたようだ。
「ちょっと写真撮ってきますね!」
千晶はそう言って店外に出て行った。
しばらくすると千晶が戻ってくる。
「撮れましたよ」
そう言って真司にスマートフォンで撮った写真を見せてくれる。
千晶は写真を撮るのが上手いのか、店の雰囲気がよく伝わってきた。
「千晶はすごいな」
「あの…」
千晶が着ていたコートを脱いで、椅子に掛けながら言う。
「千晶?」
千晶はすとん、と椅子に座りしばらく黙っていた。
「この前、田中先輩と話していたの聞いちゃって」
千晶が真っ赤な顔で言う。
「俺のこと愛してるって…嬉しくて」
真司も自分の顔が瞬間的に熱くなるのを感じた。なんとも照れ臭い。
「し…真司さんは本当に俺を好きでいてくれてるのに、俺に自信がないから信じてあげられなくて…ごめんなさい」
「千晶は何も悪くないぞ!
田中に話しちゃったこと黙っててごめんな」
千晶は黙って首を横に振った。
「俺、すごく幸せです」
にっこりと千晶が笑う。
「俺もだよ」
店員が注文した料理を運んでくる。千晶は写真を欠かさず撮って、味や入っている具なんかをスマートフォンのメモ帳にメモしながら食べていた。
「美味しいですね」
「あぁ。夜はどんな料理を出すんだろうな?」
「あ、ちょっと調べたんですけど夜は本当に酒場になるみたいで、立食形式になるとかって」
「洒落てるな!」
幹事は誰だっただろうか、なんて真司は考えていた。
「林田さんです」
千晶が真司の思考を読み取ったのかこう答えてくれる。
林田というのは真司より少し年上の女性職員だ。
仕事がとにかくできるので、『デキる女』と陰では呼ばれている。
美人なのでファンも多い。
だが彼女が出来すぎるあまり、男の方が気後れするのだ。真司からすれば「くだらない」と思う。
「林田さん、酒好きなのか?」
「俺もあまり話したことないから…」
「ふーん」
真司は店内を改めて見回してパスタを再び食べ始めた。
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