子猫はご主人様の膝の上で眠りたい

はやしかわともえ

文字の大きさ
19 / 21
おまけ

千晶さんと遊園地

しおりを挟む
春が過ぎ去り、いよいよ初夏になろうとしている。4月も下旬。もうすぐゴールデンウィークだ。大型連休の前は世の中が浮かれるような気がする。
当然、千晶も浮かれている一人だった。

(連休、真司さんとどこかに行きたい!
でもどこに?
水族館…はいつでも行けるし…どこか近場で沢山楽しいところ…)

昼休み、千晶はスマートフォンで簡単に作れる夕飯のレシピを探しながらそんなことを思っていた。
同じ職場で働く真司と付き合っていることは、会社の人間には伏せているので、二人はいつも別々に昼食を取っている。
実際、二人が付き合っていることはほとんど周りにはバレているのだが、千晶は全く気が付いていない。 

(真司さんが楽しめる場所がいいよな。
いつも俺の都合ばかり押し付けている気がするし。あれ…真司さんって何が好きなんだ?)

千晶は固まった。血の気が引くような感覚がある。

(待てよ、俺って真司さんの好きなものも知らないのか?付き合ってもうすぐ三年目なのに?)

千晶はほとんどパニック状態に陥りながら個人的につけている日記帳を開いた。
真司の好きなものがそこに書かれているかもしれない。そう思ったのだ。

(だめだ…どうしよう)

三年前からざっと手繰ってみた千晶だったが、目ぼしいものは何も無かった。
スマートフォンの時計がもうすぐ休憩が終わることを告げて来る。
千晶は泣きそうになりながら歯を磨くために席を立った。いつもの習慣である。

「千晶、大丈夫か?顔色悪いぞ?」

席に戻ると真司に声を掛けられた。

「真司さん、ごめんなさい」

「な、何を謝ってるんだ?
弁当美味かったぞ?」

「後で話します」

「おう」

真司が自分の席に戻る。こちらを気にしている様だが、千晶は気まずくて、彼の方を見られなかった。

そんなことをしているうちに、午後の就業時間が始まった。
千晶はなんとか頭を切り替えて仕事をした。だが、ふとした瞬間にモヤモヤに襲われる。
千晶はそれを頭を振ることで解消した。

(真司さんは優しいからいつも俺の話を聞いてくれる。でも俺は…)

【自分は今まで、真司に対して思いやりが足りていなかった。】

千晶の頭の中で、こんな言葉がぐるぐる回っていた。
ドスっと脇腹を死角からナイフか何かで深く抉られたようだった。

(真司さんに後でちゃんと謝らなくちゃ)

千晶はそう決めて、今日の最後の仕事に手を付けた。
これをある程度片付ければ明日から少し楽になるはずだ。
千晶は改めて深呼吸した。

ーーー
「千晶、悪い。待たせたな」

「お疲れ様です、真司さん」

二人はいつも会社を別々に出ている。
千晶がそうしたいと真司に頼んだのだ。
未だに同性愛に関しては偏見や好奇の目で見られることが多い。

千晶はそれが嫌だった。
そんな自分を赦せない自分も嫌だった。

「千晶?どうした?」

「真司さん、俺って駄目ですよね」

千晶の瞳から大粒の涙が溢れてくる。
真司がそんな千晶を優しく抱きしめてくれた。いつも彼はそうである。
自分をこうして支えてくれるのだ。

「千晶、何かあったのか?」

千晶は答えられずしばらく泣いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―

なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。 ――はずだった。 目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。 時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。 愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。 これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。 「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、 年上αの騎士と本物の愛を掴みます。 全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

処理中です...