兄が届けてくれたのは

くすのき伶

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一緒にいたいです

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どのくらい時間が経ったのか、温めたご飯の湯気はとっくに消えていた。

2人がまだ抱き合いながら会話をする。

「ハルさん」

「はい」

「平熱、何度なんですか」

「あはは。37度近いです」

笑うハルの息が、タカの首に触れる。

「ええ、高すぎ」

「タカさんは……体はそんな冷たくないですね」

「体まで手みたいな温度なら、とっくに死んでます」

「うん、そうですね。体は温かくて安心しました。どうして手だけあんなに冷たいんですか」

「……」

ハルは、この時間がもっと続けばいいのに、そう思っていた。

「ハルさん、ありがとうございます。もう大丈夫です。ご飯、食べましょう」

そう言って、タカはハルから離れた。





その後、2人は夕飯を終え、タカが玄関へ向かう。

「タカさん、今日は来てくれてありがとうございました」

「いや、こちらこそですよ。駆けつけてきたくせに、僕の方が慰められるかたちになってしまいました。すごい失態ですね」

「あはは。いやいや。あ、じゃあ今日は僕たち一緒に号泣デーってことで」

「ですね。ハルさん、きっといろいろ思っていることあると思います。また連絡しますね」

「あ……はい。でも話したくなったらでいいです。というか無理はしないでください」

タカが黙って頷く。

「じゃあまた」

ガチャン、とドアが閉まる音。そして消えていくタカの足音。

テーブルに戻り、さっきまで座っていたタカの椅子に腰を下ろす。

まだ少し、温かかった。





翌朝。

ハルは目を覚まし、すぐにスマホをチェックした。タカからのメールはなかった。

昨日のタカの様子を思い出す。

あんな辛そうな顔……兄のことをすごく愛してたんだな、そう思った。

タカに、話したくなったらでいいと言ったが、タカが求めている言葉だったのだろうか。距離を置いたほうがいいのだろうか。自分の中で明確な答えが出ぬまま、ハルは文字を打ち込む。



「これからも、タカさんと一緒にいたいです」



メールを送信した。

タカからの返信は、その日もその翌日も来なかった。




3週間後、ハルのスマホが鳴った。

「返事、遅くなってすみません。話したいことがあります」

メールには、そう書かれていた。
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