副団長は次期公爵~幼き婚約者との10年

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2章【学院生活と加護の目覚め】

※突然の出来事

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 上機嫌の父を乗せて馬車は帰路を進んでいく。

 人通りの多い町中に差し掛かった時、突然ヴィヴィが叫び声を上げた。

「この道は駄目!お願い止まって!!!」

 そう叫ぶと身体を震わせて俺の腕にしがみついて来た。
 父が何かを察し御者に止まるように命じる。
 急ブレーキを掛けたように止まった馬車はガクンと大きく揺れた。
 大丈夫だからと彼女を抱き寄せ背中を摩りながら宥めていると突然大きな衝突音と共にガラガラと何かが崩れる音がした。
 窓から覗き込むが馬車の前は土煙が上りよく見えない。
 人々の悲鳴と騒ぎ立てる声が聞こえて来た。
「旦那様、前を行く馬車が衝突しました!」
 御者のテッドが震える声で報告する。
「分かった。そのまま待機していろ」
「はっ、はい」
 ようやく煙が落ち着て来たのを見て俺は父のヴィヴィを預け馬車から降りて状況を確かめる。
 俺たちの馬車のすぐ目の前には荷馬車が横倒しになり積み荷の瓦礫が崩れ手綱を引いていたと思われる男が投げ出され倒れていた。そしてその先に一台の衝突した馬車の馬が興奮し立ち上り暴れている。
 ヴィヴィが声を上げずそのまま進んでいたら俺たちの馬車も巻き込まれていたに違いない。

 俺は直ぐに怪我をした男を自分たちの馬車の横に引きずり出し声を掛け簡単な手当てを始める。
 父がヴィヴィに馬車から降りないように言っているのが聞こえ、馬車から降りてくると俺の様子を確認し、上着を投げ捨て暴れている馬の元へと走って行った。
 手当をしながら父の姿を目で追う。
 将軍と呼ばれた男は慌てることなく興奮し白目を剥きだしている馬をいとも簡単に力でねじ伏せたのだった。
 取り巻いていた人々から歓声が上がる。
 俺が絶対にこの男には敵わないと思った瞬間だった。

 目の前の怪我人に目を落とす。
 止血を施すも出血が酷く頭も打ったようで殆ど意識がない。瀕死の重傷だと分かる。
 俺は魔力を持っているが攻撃魔法なのでこういう時には役に立たない。
 助からないかも知れないそう思った時、いつの間にか馬車から降りて来たヴィヴィが俺の横に立っているのに気付いた。

「危ないから馬車の中に・・・」

 最後まで言う間にヴィヴィは怪我をした男の横に膝をつき折れている手を両手で握り祈るように瞳を閉じる。
 暫くすると体中にある裂傷から流れ出る血が止まり段々と傷口が塞がれていった。

「これが【治癒の加護】の力なのか」

 俺はただ茫然と見ている事しか出来なかった。

 父上が戻って来てその様子を見るや否やヴィヴィを担ぐように馬車に乗せ屋敷へと戻るように青ざめたままの御者のテッドに指示をする。
「アクセルお前も早く乗れ!」
 父の言葉に近くにいた人にまだ意識を戻していない怪我人を託し急いで馬車に乗り込んだ。
 邸に付くまで三人とも一言も口を開かず黙ったままで俺もヴィヴィの肩を抱いたまま馬車の揺れに身を任せていた。

 帰宅後直ぐに母上を呼び談話室に家族が揃う。

「ヴィヴィアンのお陰で私たちの馬車は巻き添えを食わずに済んだ。あのまま進んでいたら瓦礫をまともに受け馬車も潰されていたかもしれない。
 ありがとうヴィヴィアン」

「わたしは何も・・・ただ怖くて大好きなお義父様とアクセル様が怪我をしてしまうのが見えて・・・」
 ヴィヴィは小刻みに震えていた。

「ああ、ヴィヴィアンは儂らが怪我をするのが見えていたのか。【先読み】の加護をいつのまにか全部解放していたんだな」

 俺は彼女の震える手を自分の膝の上に置き握り締めた。

「ありがとう危険を教えてくれてヴィヴィちゃんのお陰で旦那様もアクセルも勿論ヴィヴィちゃんもあたくしの元へ無事に帰って来てくれたわ」
 母上はヴィヴィの反対の手を握り締め涙を流した。

「ヴィヴィアン今日の事で予知は偶然馬車が止まったと言い訳できるが、公表されている治癒の加護をお前が持っていると云うのを知られてしまった。たぶんうちの馬車の紋章で分かった者が多くいると思う。暫くは周りが煩くなると思うがアクセルが傍についているから心配するな。何かあったら直ぐにアクセルに言うんだぞ」

「はい・・・」

「元気を出せ。今日は色々あり過ぎて言い忘れていたが、一緒にパーティーに行けて楽しかったぞ」

「お義父様・・・」

 涙目で父の言葉を聞くヴィヴィ。

「疲れただろう?湯あみをしてもう寝てしまえ。今夜はアクセルに一緒に寝て貰えばいいさ」

「えっ!」

 俺は父上の顔を見る。

「そうね、不安でいっぱいですものね。そうして貰いなさい。マギー、ドリー、ヴィヴィちゃんの湯あみをお願い。済んだらアクセルの部屋へ連れて行ってあげて」

「畏まりました奥様」
「さっ、参りましょうお嬢様」

 二人に連れられてビビは部屋を出て行ってしまった。

「いきなり二つの加護を使ってしまったんだ。本人が一番驚いているだろうし不安にもなっている筈だ。お前と居れば不安は拭える」
「ええそうよ。優しく抱きしめてあげるだけで良いのよ」

 父と母に言われてヴィヴィの心情を察すことが出来た。

「分かりました」


 母上も穏やかに微笑み頷いてくれていた。

 俺は部屋に戻り今日の出来事を振り返る。
 楽しそうに踊っていた父とヴィヴィアン、思い出に残る筈だったヴィヴィにとって初めての学院でのパーティーの帰りに起こった事故。
 持っているとは分かっていたが今まで一度も出すことが無かった加護の力で父と俺は無事でいられた。
 いや違う今までは加護の力が必要ないほど何事も無く過ごしてこれただけだ。
 これから先その力が使われる事なく平和であって欲しい。

 そんな事を考えながら湯あみから戻って来るヴィヴィを待つのだった。





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