副団長は次期公爵~幼き婚約者との10年

文字の大きさ
20 / 51
2章【学院生活と加護の目覚め】

※加護の余韻

しおりを挟む
「おいでヴィヴィ」

 ドアまで送り届けたマギーとドリーが一礼して扉を閉める。

「アクセル様」

 湯あみをしながら泣いていたのだろうか。目が充血して赤くなっている。

 ベッドに座らせ肩を抱き寄せた。

「アクセル様、わたし怖い」
「うん」
「荷馬車が崩れて目の前が真っ黒になるのが見えて」
「うん」
「気が付いたら怪我をしている人の手を握っていて」
「うん」
「何でこんな力がわたしに付いちゃったんだろう・・・」
「うん、でもヴィヴィのその力は悪い力ではないから悲しむことはない」
「・・・」
「困ってる人の為に使うなら誰も文句は言わない。ただ悪意を持った奴らに利用されることがあってはならない」
「はい・・・」
「大丈夫。俺がヴィヴィの事を守るから」
「アクセル様」

 ヴィヴィの頬を涙が伝う。俺は唇でその涙を拭った。

「ほらもう寝よう。ベッドに入って」

 ヴィヴィは上掛けの中に潜り込むようにしてベッドに横になった。
 俺はその横に寝そべり緩く抱き寄せ背中を摩る。
 子供とも少女とも言えないヴィヴィアン。

「アクセル様口づけして欲しいです」

 恥ずかしそうに強請られ額から瞼、鼻の頭に唇を落とし最後にピンク色の唇に口づけた。
 一度それを離し彼女の顔を見る。
 ヴィヴィは瞼を開け菫色の瞳を潤ませながら俺の目をじっと見ている。
 しばらく見つめ合った後もう一度顔を寄せ口づける。
 今度は触れるだけではなく啄むように何度も。
 くすぐったかったのかヴィヴィは小さく笑う。

「ヴィー可愛い」

 俺の言葉に頬を染める。

「アクセル様好きです」

「嬉しいよ、ヴィー愛してる」

 俺の背中に回しいている細い腕に力が入ったのを感じた。
 もう一度唇を寄せる。

 少し長いキスに息を止めていたヴィヴィが「んっはー」と息を吐き涙で潤んだ目で俺を見つめ返す。

 
「可愛いヴィ―嫌だったか?」
 ヴィヴィは頭を横に振った。

「もう少し大人になったらもっと大人のキスを教えてあげるからな」
 こくんと頷く。

 愛する天使を胸に閉じ込め何度も頭にキスをした。

「おやすみ俺のだけの天使」

 ヴィヴィは何も言わず俺にしがみ付いて眠りについた。
 が、、、、、、

ーーーん!まずい、これは非常にまずい!ーーー

 俺の股間が硬くなり彼女の下半身に当たって・・・いるのだ。
 彼女は気付いただろうか?
 
 前は女狐令嬢の所為でヴィヴィが成人した夢だったから仕方ない(←自分に言い訳をしている時点でアウト)
 横にいるは十二才子供だぞ(汗)
 そ、それに深い口づけといっても舌は入れてない(当然ですよ)
 あんな事故があって俺も興奮状態だったのだろうか?

 いかん、いかん!どうしたんだ落ち着け俺の分身殿。。。
 
 俺は冷や汗を掻きながらヴィヴィを起こさないように静かに腰を引き落ち着くのを待った。



 翌日食堂へ下りると一人お茶を飲む母の姿が。

「父上は?」

「昨日の事で王城へ行ったわ」

「そうですか」

「ヴィヴィちゃんは大丈夫?」

「ええ、よく眠っています」

「そう良かった・・・」

 何か言いたげに俺の事を見ている。

「口づけ以上の事はしていませんからね」

「あらそう」

 お茶を飲みながら母は何かを考えているかのように目線をティーカップに落とす。

 余計な事は考えるのはよそうと俺の脳が判断したので黙って朝食を食べる事にした。

 その日の午後、朝から王城に上がっていた父上からの使いが来て俺とヴィヴィは陛下に呼び出されれたのだった。


◇◇◇


「ヴィヴィアン昨日はたいへんじゃったな。大丈夫か?」

「はい、陛下ありがとうございます。もう大丈夫です」

「そうか、ウィリアムから話は聞いた。【先読み】と【治癒】が両方使えたと」

「・・・はい」

「心配しなくて良い。ヴィヴィアンの力を今すぐどうこうと言う訳ではない」
 不安そうな顔をするヴィヴィに伯父上は大丈夫だと優しく頭を撫でた。

「はい」

「其方はまだ成人前だ。よっぽどの事がない限り力を貸してもらうとは儂も思っていない。今まで通り学院に通い普通に暮らして良いのだぞ」

「本当ですか?」

「ああ、本当だ。ただ何か先読みで何か見えた時は直ぐに知らせて欲しい」

「はい、分かりました」

 ヴィヴィは安心したのか涙をポロリと落とした。

「しかしな、ヴィヴィアンは昨日街中で皆が見ている中、治癒の力を使った。モントレーの馬車に乗っていたのも知られているだろうから名前も直ぐに分かるだろうよ。これから注目を浴び貴族どもから面倒な申し込みが来ることは間違いない。
 国内どころか他国からもだ。いくら婚約をしているとはいえモントレー公爵家は大変なことになると思うぞ」

 確かにその通りだ。加護を持つ者がいると云う事は公表しているが実際に誰かは知られてない。今回の事でそれがヴィヴィアンであると知られてしまったのだ。

 俺は隣に立ったままのヴィヴィの手を引き膝の上に座らせて手の甲に口づけた。

「私がヴィヴィアンの事を守りますから」

「「ククッ」」伯父上と父から笑いが洩れる。

「俺の愛娘を泣かせたらタダでは置かんぞ、覚悟して置け!」

「はい  げほっ!」

 父のごつい手で背中を思い切り叩かれた。

「アクセル守るのは良いがあまり溺愛し過ぎるなよ」

「それはお約束出来かねます陛下」

「「ぐわはは!」」

 暫くの間部屋に王と王弟の同じ笑い声が響いていた。

 屋敷に三人で戻り自室のベッドの上に体を投げ出し考える。
 
 これから彼女の周りは大きく変わっていくのかも知れない。
 家族みんなで支えていかなければならないな。
 体を起こし着替えを済ませ俺は父の執務室へと向かった。

「失礼します」
「おう、アクセルか入れ」
 部屋には母上も居り二人揃って何かを見ていた。
「早いわね」
「こう云う事はあっという間に広がるからな」

 両親が見ていたのは買い物に出た使用人が街で貰って来た号外だった。
 そのトップには大きく昨日の出来事が出ていた。

+++++++++++++++++++++++++++++

【治癒の乙女瀕死のけが人を救う】
 治癒の乙女は妖精を思わせる透き通るような銀髪に菫色の瞳の少女。
 怪我人を治療し命を救うと公爵家の馬車にて風のように立ち去る。
 神に選ばれし治癒の乙女はモントレー公爵家次期当主のフィアンセ。

+++++++++++++++++++++++++++++

 大きく書かれた見出しのすぐ下には想像で書かれた絵姿までご丁寧に載っているではないか。

「明日からヴィヴィアンの周辺は騒がしくなるな」
「暫く学院を休ませます?」
「休ませると言っても姿を見せないと余計に人々の興味が膨らんでしまうとも考えられる。深窓の令嬢とかに思われても面倒しな」

 両親の心配は尽きない。

「普通通りでいいと思いますよ。学院迄の往復も校内も今まで通り私が付いているのですから問題はありません」
「なんだ、開き直ったのか余裕をかましてきやがったな」
 父は俺の顔を見てにやりと笑った。

「お前の事は剣の腕も魔力も信用しているが送迎の馬車に護衛を一人付けよう。平服で御者の隣に座らせておけばいいさ」
「ええ、構いません」
 念の為ヴィヴィはもう一日学院は休ませる事にした。

 そしてこの夜も俺はヴィヴィと添い寝する事になるが、しっかりと自制していたので慌てる事は無かった。
 静かに寝息を立てるヴィヴィの髪をいつもの様に指で梳きながら寝顔を見ている。
 俺にとっては至福の時であった。


★ヴィヴィの成人まであと5年と7ヵ月★

____________________________________

※ヴィヴィちゃんが可愛くてついヴィ―と呼んでしまったアクセル様。
これ以降二人だけの時には「ヴィ―」とよぶようになります。
「くちづけ以上はしていませんが」(当然です!)
もう少し触れ合いを進めたかったのですがまだヴィヴィちゃんはまだ12才。
アクセル様まだしばらく我慢してくださいませ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。 けれどその幸せは唐突に終わる。 両親が死んでから何もかもが変わってしまった。 叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。 今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。 どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥?? もう嫌ーー

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」 「……は?」 そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!? 精霊が作りし国ローザニア王国。 セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。 【寝言の強制実行】。 彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。 精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。 そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。 セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。 それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。 自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!! 大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。 すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

責任を取らなくていいので溺愛しないでください

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。 だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。 ※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。 ※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

処理中です...