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3章【第二の予知と】

※お山その後

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 父がこちらに戻り6日後にそれは起こった。

 王都迄揺るがす地の揺れに市民も驚いたが事前に触れていたので大きな騒ぎにはならなかった。

 現場は・・・

 黒煙と白煙が入り乱れて天を覆っていた。

 大きな揺れの後に雷のような爆音が響きヴィヴィアンの言った通り中腹辺りに墳火口が現れそこからおぞましい程の熱を帯びたマグマが吹き出してきた。

 それは燃える川となり二つの壁の間を進んでいく。そこに存在する全て物を焼き尽くしながら海へとゆっくりと流れて行った。
 こちら側の関所は岩で封鎖したおかげで何とか持ち堪えていた。人の住んでいた場所までの侵入は防ぐことは出来、雪崩も最小限に抑えることが出来た。
 飛んで来た熱い灰や溶岩石が落ちた場所と壁の近くは熱による火災が起き燃えてしまったが、避難していた住人たちは救われたのだ。
 これ以上何を望むと言うというのか。

 噴火は数日間続いた。北の山が落ち着き始めると王都から視察団が現状を把握するために向かった。訪れた時、溶岩の赤い川は表面だけ冷え黒く固まっているように見えたがその下に見える部分はまだ熱を帯び赤く煮えたぎっているように見え、もう以前のように緑が生えることはないと思われる地を見て山の恐ろしさをひしひしと感じたという。

 隣国がどうなっているのかは分からない。
 知るには北の二つの山の先に連なる山脈を越えるか、溶岩が流れ込んだ海を大きく迂回していかねば知る由もなかった。


 神の神託により北の山周辺の人々を救った国王に国民は感謝し、今まで以上に敬いたたえる事になる。
 住めなくなった土地の代わりに新たな土地を開拓するために軍隊が貢献した。
 その先頭に立ち采配を振るった王弟の大公にも賛辞が送られた。

「神託なんぞと申したが、本当のところは違うしな」
 伯父上は苦笑してた。

「ヴィヴィアンのおかげで民は救われた。しかし「先読み」の加護は公表できないのだ。すまんな、王家がおまえの手柄を横取りして。これから先も先読み事に関してはヴィヴィアンの名前が出る事はないと思ってくれ」

「伯父上様・・・いいえ、陛下に謝られる事なんて全くないです。この国の子は皆陛下の子でもあります。国父のお役に立ててこんなうれしい事はありません」

 俺はヴィヴィの少女とは思えない言葉に驚いた。
 八才だった可愛い天使は六年間で自分の立場を理解していて国のために自分はあるのだとはっきりと自覚し言葉にしているのだ。

「大人になったのうヴィヴィアン」
 伯父上も目を細め感慨深げにヴィヴィの事を見ていた。

「このような惨事が起きたが皆復興に向けて頑張っておる。士気を高める意味もあるが、めでたい事も必要だ。次回のデビュタントは派手にやるぞ良いな、ウィル」

「ええ、そういたしましょう

「宰相!中断しておったデビュタントの準備を再開せよ」

「御意」


***


 年が明けヴィヴィは十五才となった。


「デビュタントのドレスが出来上がって来ましたわ」
 母上はこどれの仕上がりを見て上機嫌だ。

「まるでウェディングドレスのようですね」
 マギーもうっとりと見とれている。

「こんな豪華なドレスを着るんですか?」

「何を言ってるのヴィヴィちゃん。旦那様は王位継承権を放棄していても王族には変わらないのよ。陛下と高位貴族の前でのお披露目も兼ねているんですからね。装飾品も旦那様が手配をしてくださっているわ」

「何だか自信がありません」

 母の話を聞いてヴィヴィが青ざめていたのは言うまでもない。


 そしてデビュタント当日。

 ヴィヴィは早朝からマギーを筆頭に侍女らに磨き上げられ俺の前に姿を現した。


「・・・・・・・・」
「変ですか?」

 腰まであるウェーブの掛かった銀色の髪はサイドを編んでハーフアップにし髪飾りの周りには小さな生花が散らばめてある。
 ウェディングドレスを思わせるレースがたっぷりのドレスをまとい大きな菫色の瞳が心配そうに俺の顔色を伺ってくる。

「い、いや。あまりに美し過ぎて言葉を失っていただけだ」
 正直十五才の少女とは思えない程に美しかったのだ。

「そんなこと・・・」

 薄っすらと化粧をした頬を赤らめて俯いてしまうヴィヴィに後ろから声が掛かる。

「どこから見ても立派な公爵令嬢だな」
「当然ですわ」

 父は母上の腰を抱き満足げに頷いた。

 俺はヴィヴィの手を取り両親とともに王城へ向かうべく馬車に乗り込んだ。



★ヴィヴィの成人まであと2年10ヵ月★




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