副団長は次期公爵~幼き婚約者との10年

文字の大きさ
43 / 51
最終章【長かった十年】

※公爵家のチャペルにて

しおりを挟む
 カーテンから漏れる光で目を覚ました。
 大きなベッドの上、隣には愛しい温もりがある。
 一糸まとわぬ姿で静かに寝息を立たているヴィヴィの髪をすくい口付けた。
 昨夜は、今までの思いを込めてヴィヴィを抱いたつもりだったが、やはり無理をさせてしまったな。
 やっと自分だけのものにできた喜びで胸が震える。
 俺はヴィヴィのすべてを愛した。

***一日前 式の当日***

 朝からヴィヴィの支度と式の準備が粛々と進められている。

 俺の支度はとうに終わっており、花嫁の支度が終わるるのを父と二人で待っている訳だが。
 一時間ほど前に逸る気持ちを抑えきれず様子を覗きに行き、マギーに締め出され、ヴィヴィの支度が整ったら知らせるので玄関広間で待つように叱られてしまったのだった。

 手持ち無沙汰に何度も紅茶の入ったカップを口に寄せていると唐突に父に話しかけられる。
 
「三十になった息子に言うのも何なのだが・・・この十年よく頑張ったな。王命とは故、あのように幼い子の婚約者にしておまえを縛り付けてきた。男盛りであったのに申し訳けなかったと思っている。それでもヴィヴィアンのことをこれほどまで大切に思い守ってくれたことを父親として感謝している。ありがとう、アクセル」
 突然の父の言葉に俺は・・・
 将軍と呼ばれていた威厳を持つ父が立ち上って息子に頭を下げたのだ。 
 俺は父の前へ進み両手を握った。
「父上、頭を上げてください。私はあの雨の日に父上がヴィヴィを連れて帰って来た時から・・・幼い少女だったヴィヴィを受け入れる決意をしました。今では彼女のことを心より愛しております。私の方こそ天使を私のもとに連れてきてくれたことに感謝しています」
「ああ、ありがとう」
 父が俺の体を抱き締めてきた。
 父に抱きしめられたのはいつ以来だろうか。
 もう記憶にないくらい昔のことだと思う。背は俺の方が少しばかり高くなったが、熊のようにガッシリとした父の体は逞しく年輪を重ねた男の優しさを感じた。

「ヴィヴィアン様のお支度が整いましたので、玄関の方へどうぞ」
 マギーの声に父と二人顔を見合わせ、お互いに照れながら玄関広間へと向かった。

 ヴィヴィがドリーに手を取られながら二階から階段を降りてくる。
  純白のウェディングドレスに身を包みほんのり頬を染めて俺の顔を見ながら一段ずつ足を進める。
 その姿は女神が天から舞い降りて来たかのように美しい。
 階段の下で待つ父が手を取ると頬を合わせてから俺の前までエスコートされてきた。

「ヴィヴィ、綺麗だ」
 ヴィヴィは少し目を伏せ、それから俺を見上げるようにして微笑む。
「ありがとうございます。アクセル様もとっても素敵です」
 俺はヴィヴィの手に口づけた。
「さぁ、行こうか」
「はい」

 玄関前に付けた馬車に父と三人で乗りチャペルへ向かう。

「ヴィヴィアン、綺麗だぞ。最高の花嫁だな。ここへ連れてきて養女にしたが、アクセルと婚姻を結んで本当に娘になってくれる。嬉しいよ」
 前に座っている父が涙を浮かべながらヴィヴィに微笑みかける。
「お義父様、ありがとうございます。ヴィヴィもお義父様の娘になれて本当に幸せです」
「アクセルのことを頼んだぞ」
「はい」
 馬車の中は暖かな空気に包まれていた。
 
 モントレー公爵家の広い敷地内にあるチャペルで俺とヴィヴィの結婚式が行われる。
 本邸から馬車でチャペルまで向かうが、途中に新しく建てられた東の館が見えてきた。
 ヴィヴィのデビュタントの時に母が冗談のように言った俺たちのための館が三年の月日を掛けて本当に建てられてしまったのだ。
 最終的には父と母が住むとはいえ、ワインを飲みながら口にした数週間後にいきなり設計図を広げ、ヴィヴィにいろいろと希望を聞き始めたのには驚かされた。
 そして、二カ月前には家具や調度品が全て収められいつでも住める状態にとなっていた。
 今夜から俺とヴィヴィはこの館で新婚生活を始めるのだ。

 馬車がチャペルへと続くアプローチの前で停まる。
 個人のチャペルなのでそれほどお大きくはない。中に入れない人たちが中央のアプローチを囲むようにして二人のことを待っていた。俺の腕に手を添えたヴィヴィと並んで歩いていく二人を暖かなまなざしで迎えてくれている。
 扉が開くと参列者が一斉にこちらを振り向く。
 一足先にドリーと結婚したエリオス騎士団長の姿が見えた。
 反対側ではバムフォード伯爵夫人となるマリンがヴィヴィの花嫁姿を見て既にハンカチで目頭を押さえている。
 一番先には伯父と伯母である国王陛下と王妃陛下が満面の笑みで迎えてくれている。
 二人の後ろを歩いてきた父が待っていた母の隣に座るのを見届けてから、二人で小さく頭を下げ階段を上り神父のもとへと向かった。
 ヴィヴィは緊張しているのかわずかに震えていたので
「大丈夫、俺が隣りにいるんだから」
 と耳元で囁くと小さく頷いて微笑み返してきた。

――ああ、なんて可愛いんだ。
 もうこのままあの新しい館に連れて行ってしまいたい。
 愛しいヴィー、愛してる――

 皆に見守られながら誓いの言葉を交わし二人で婚姻証明書にサインをして指輪の交換、そして誓いのキスを交わす。
 やっとヴィヴィと夫婦になれたんだ。
 参列者の祝う拍手とおめでとうの言葉を受けながら外へ出るとまた大勢の人たちから祝福を受けた。
 ヴィヴィを抱き上げて口づけるとさらに歓声が上った。
 ヴィヴィも涙を浮かべている。
 そのまま目の前の庭園にセッティングされたガーデンパーティーの行われる場所へとヴィヴィを抱いたまま歩いて行く。
 乾杯を終えると両陛下は時間の都合でここで城へ戻るため二人でお礼を言い見送った。
 その後は百名以上いる客とともにガーデンパーティーで過ごし、夜には上位貴族と大公及びモントレー公爵領の領主たちとの晩餐パーティーとなる。
 二人きりになれるのはまだまだ先のようでもどかしいが仕方がない。

 晩餐でヴィヴィが着たドレスは俺の瞳と同じブルーの生地に彼女の髪色の色の銀糸で流れるような刺繍がされ、それに沿うように宝石が散らばめ縫い付けてある。俺のフロックコートは彼女の瞳の色である菫色で襟元、袖口、裾には俺の髪色の金糸で豪華な刺繍が施されいた。

 ヴィヴィの美しさに会場からため息が漏れる。
 俺もただ見惚れるばかりだった。
 一通り挨拶に回り、軽く料理を口にしているとトーマスがさりせなく俺に耳打ちをしてきた。
 宴が続く中、ヴィヴィもマギーに促されて、俺とヴィヴィは会場をあとにする。
 そして我が家となる東の館へと向かったのだった。




_______________________________

※次回で最終話となる予定?一回の更新で終われそうもありません。
 R18と謳った割にはそのシーンは殆ど無く・・・
 最後に思いっきり甘く出来るか?
 キーボードに手を乗せたまま固まっています。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。 けれどその幸せは唐突に終わる。 両親が死んでから何もかもが変わってしまった。 叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。 今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。 どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥?? もう嫌ーー

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」 「……は?」 そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!? 精霊が作りし国ローザニア王国。 セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。 【寝言の強制実行】。 彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。 精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。 そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。 セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。 それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。 自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!! 大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。 すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

責任を取らなくていいので溺愛しないでください

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。 だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。 ※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。 ※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

処理中です...