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第六章・女帝戴冠
帝プロへの扉
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直美がチャンピオンを獲得後、しばらくしてブレバリーズのSNSにて、次の試合カードが発表された。
《あの帝国プロレスリングの若きエース・白川大斗が、ブレバリーズのリングにやって来る!
迎え撃つのは、新チャンピオン・直美
ブレバリーズ王座・直美 vs 帝プロ・白川大斗
エキシビジョン・マッチ、決定!》
最強軍団・帝プロの現役選手、それも人気急上昇中の白川大斗である。
その選手が、まさかブレバリーズのマットにやって来るとは……
まさにサプライとと言える発表であった。
女子選手たちは、一気に盛り上がっていた。
「直美さん、いよいよ帝プロとの闘いのはじまりですね」
しかし直美は冷静だった。
「……いや、ただのエキシビジョンだから」
周囲の興奮をよそに直美は試合については、ほとんど語ることがなかった。
ひたすら毎日静かに、自らの力を上げるための練習を積んでいた。
ずっと、その先を、見据えているようであった。
試合が近づくにつれて、ブレバリーズの空気はさらに熱を増した。
「直美なら勝てる」
「いや、さすがに帝プロのスターは強いだろ」
「でも直美なら……!」
修平は、黙々と練習を続けながら直美を見ていた。
――とんでもないスケールの勝負になる。
自分も、いつかあんな舞台に立てるのだろうか。
***
エキシビジョン当日。
帝プロの若き看板選手・白川大斗の登場に、会場は大いに沸いた。
それを直美が、ブレバリーズの新王座として、堂々と迎え撃つ形となった。
試合時間は10分。
前半は、直美が帝プロの若き看板選手・白川大斗を圧倒していた。
技の切れ、体幹の強さ、タイミングすべてが上回り――
会場を沸かせたのは直美の方だった。
あと一歩まで追いつめながら、終盤は形勢逆転。
ラストは大斗が押しに押して直美を攻めたて、帝プロの強さを見せ付けられる結果ともなった。
……が実態は、解る者には解る試合内容であった。
直美の攻撃に防戦一方であった大斗は、直美からの裸締めの前に、タップをしてしまう寸前であった。
しかし、このまま大斗を潰してしまっては目的とする直美の帝プロリング参戦に差し支えかねないと、
沙也加が機転を利かせ、直美を制していた。
タップする寸前で、直美に対し、手を抜いて相手の攻撃を受けるよう合図を送っていたのであった。
要するに、エキシビジョンとして引き分けの結果で締めくくられたものの、
帝プロに対し、直美が強さを存分に示した試合内容なのであった。
***
控室の奥、
一般観客には見えないゾーンで――
阪口は腕を組んでその試合を“密かに”見ていた。
開始前は余裕だった。
(まあ、女子の技だ。大斗なら受けきれる)
しかし試合が進むにつれ、焦りの募りが止まらなかった。
直美の蹴りが大斗のガードごと吹き飛ばし、
大斗がよろめいたとき、
阪口の表情が変わった。
(……強い。
予想以上どころではない。
これは……帝プロの“男たち”でも止められんぞ)
そして最後、
大斗が倒され、締め上げられ、敗北寸前となった瞬間――
「……参ったな」
阪口は苦笑を漏らした。
その笑みには、
敗北した男の誇りと、
未来を見た男の期待が混ざっていた。
***
試合後、沙也加が控室に戻ると阪口が待っていた。
「……沙也加さん」
「はい」
「俺の負けだ。直美を帝プロに上げよう」
沙也加は、その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなった。
「阪口さん……ありがとうございます」
阪口は続けて言う。
「そして、もう一つ。
帝プロでは毎年12月に“最強決定リーグ”がある。
世界・国内から、団体の枠を超えて選ばれた8人が争う……帝プロ最大の大会だ」
沙也加は息を呑む。
「そこに――
直美を“女子として初めて”出場させる」
部屋の空気が揺れた。
沙也加は震える声で言った。
「本当に……本当にいいんですか……?」
「直美はその資格がある。誰が見てもな」
沙也加は深く頭を下げた。
涙が出そうだった。
(ここまで……ここまで長かった……)
《あの帝国プロレスリングの若きエース・白川大斗が、ブレバリーズのリングにやって来る!
迎え撃つのは、新チャンピオン・直美
ブレバリーズ王座・直美 vs 帝プロ・白川大斗
エキシビジョン・マッチ、決定!》
最強軍団・帝プロの現役選手、それも人気急上昇中の白川大斗である。
その選手が、まさかブレバリーズのマットにやって来るとは……
まさにサプライとと言える発表であった。
女子選手たちは、一気に盛り上がっていた。
「直美さん、いよいよ帝プロとの闘いのはじまりですね」
しかし直美は冷静だった。
「……いや、ただのエキシビジョンだから」
周囲の興奮をよそに直美は試合については、ほとんど語ることがなかった。
ひたすら毎日静かに、自らの力を上げるための練習を積んでいた。
ずっと、その先を、見据えているようであった。
試合が近づくにつれて、ブレバリーズの空気はさらに熱を増した。
「直美なら勝てる」
「いや、さすがに帝プロのスターは強いだろ」
「でも直美なら……!」
修平は、黙々と練習を続けながら直美を見ていた。
――とんでもないスケールの勝負になる。
自分も、いつかあんな舞台に立てるのだろうか。
***
エキシビジョン当日。
帝プロの若き看板選手・白川大斗の登場に、会場は大いに沸いた。
それを直美が、ブレバリーズの新王座として、堂々と迎え撃つ形となった。
試合時間は10分。
前半は、直美が帝プロの若き看板選手・白川大斗を圧倒していた。
技の切れ、体幹の強さ、タイミングすべてが上回り――
会場を沸かせたのは直美の方だった。
あと一歩まで追いつめながら、終盤は形勢逆転。
ラストは大斗が押しに押して直美を攻めたて、帝プロの強さを見せ付けられる結果ともなった。
……が実態は、解る者には解る試合内容であった。
直美の攻撃に防戦一方であった大斗は、直美からの裸締めの前に、タップをしてしまう寸前であった。
しかし、このまま大斗を潰してしまっては目的とする直美の帝プロリング参戦に差し支えかねないと、
沙也加が機転を利かせ、直美を制していた。
タップする寸前で、直美に対し、手を抜いて相手の攻撃を受けるよう合図を送っていたのであった。
要するに、エキシビジョンとして引き分けの結果で締めくくられたものの、
帝プロに対し、直美が強さを存分に示した試合内容なのであった。
***
控室の奥、
一般観客には見えないゾーンで――
阪口は腕を組んでその試合を“密かに”見ていた。
開始前は余裕だった。
(まあ、女子の技だ。大斗なら受けきれる)
しかし試合が進むにつれ、焦りの募りが止まらなかった。
直美の蹴りが大斗のガードごと吹き飛ばし、
大斗がよろめいたとき、
阪口の表情が変わった。
(……強い。
予想以上どころではない。
これは……帝プロの“男たち”でも止められんぞ)
そして最後、
大斗が倒され、締め上げられ、敗北寸前となった瞬間――
「……参ったな」
阪口は苦笑を漏らした。
その笑みには、
敗北した男の誇りと、
未来を見た男の期待が混ざっていた。
***
試合後、沙也加が控室に戻ると阪口が待っていた。
「……沙也加さん」
「はい」
「俺の負けだ。直美を帝プロに上げよう」
沙也加は、その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなった。
「阪口さん……ありがとうございます」
阪口は続けて言う。
「そして、もう一つ。
帝プロでは毎年12月に“最強決定リーグ”がある。
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沙也加は息を呑む。
「そこに――
直美を“女子として初めて”出場させる」
部屋の空気が揺れた。
沙也加は震える声で言った。
「本当に……本当にいいんですか……?」
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