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第3章:魔の森攻略編
第84話 精霊樹へ…
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樹の幹に向かって手を伸ばしていたレンが、突然に意識を無くして倒れてしまった。それを見ていた者達は慌ててレンに駆け寄る。
「レン、レン!大丈夫か?しっかりしろ!」
「ダメだ、ビクともしない」
レンの口元に手を沿え、胸に耳を持ってくるアリシア。ミーリアはレンに向かって回復魔法をかけようとするのをアリシアは止める。
「大丈夫、規則正しい息はしている、胸の鼓動もあるようだ。死んではいない。それに…リンゴも一緒のようだ」
アリシアはレンの懐で同じく意識を失くしているリンゴを抱え上げ、寝かせたレンの横にそっと寝かせる。
「もしかしたら…。」
「もしかしたら、精霊樹の世界へと意識が飛ばされたのかもしれない」
「だったら、それは精霊女神様の……。」
「ああ、そうだな。このまましばらく様子をみよう」
バッファは皆に指示を出した。
「ミーリアはそのままこの場の浄化に意識を集中してくれ。この場所の浄化が進めば、レンの意識も覚醒するかも知れん。
他に皆は、ここにキャンプを張るので準備を頼む。交代で周囲の見張りを行うぞ。何か問題は起こったら、すぐに連絡を頼むぞ。ではよろしく頼む」
見張りの配置と順番は『黒竜の牙』のゴルグがまとめる事となり、その手配が済んだ所で、皆は自分の仕事をするために散っていった。
◇◇◇
そこは塔の内部のようだった。目の前に螺旋階段があり、その上の方から声が聞こえてくる。その声に導かれるように僕はその階段を昇って行った。リンゴは僕の懐から顔を出して何か嬉しそうにクーンと鳴いた。
どれ位昇っただろう。下を見れば床は見えない。かなりの高さを昇ったのか、相当数の段数を上がったはずなのだが全くもって疲れてはいないし、身体が異様に軽いのだ。味覚や臭覚のような五感もある様なのだが、何かこう現実味に欠ける感じがする。これは現実ではなく意識の中で体験させられていると言う感覚なのだろうか。
所謂、
◇――――――
BCI<ブレイン・コンピューター・インターフェース>、脳波VRのようなもの。今、僕は仮想空間でのアバターの様なものかもしれない。
そう言えば、仮想空間で生きる世界を描いたSF映画があったけど、実はそれは本当に起こっている現実なのかも?って一時真剣に考えてた時期があった。
だってさ、眠った意識下で生々しい夢を見る事って、なんて摩訶不思議なんだろうって思わないかい。
実際に全身麻酔下で夢を見た身からすれば、どっちが本当の現実なんだろうと思う事が多々ある。それは―――
真っ白な空間に人とは思えないような美しい女性がいた。その女性は『君はまだここに来るには早すぎます』との意識を僕にかけてきたんだ。
でも、そこは、とても居心地のいい場所だったんだ。それで、僕はそこから離れる事がとても嫌だと感じ、すごく駄々をこねたんだと思う。
『帰りなさい』と言う合図の後、頭がぐるぐる廻って、意識も廻って、そして誰かの声が聞こえた事で僕は覚醒した。それは手術が終わった事を告げる医者の声だった。
そう、僕は一度、バイク事故で死にかけたんだ。
――――――◇
そんな事をつらつら考えながら、それでも上へ上へと昇っていった。そして昇りきったそこには、真っ白な何もない静寂な世界がただ広がっていた。
頭の中に声が響く。そしてその時、強い光が輝いた事で、とても眩しくて目を開けられなくなってしまった。しばらくして目を開けたところ、僕の前に白く輝く女性が宙に浮いていたのだ。
「あ、あなたは……」
『わたくしは精霊女神アルフォーニス―――私の声が聞こえますか?
ですが、今、あなたが見ている姿はあなたの中いある精霊女神アルフォーニスの幻影。今の私は精神体であり、姿形は存在しないのですから。
ここへ封じられてから外の世界の状況が私の中に入っては来なくなり、とても辛い思いをしていました。私の子供達の事が心配で仕方なかったのです。
ですが、あなたが私に触れた瞬間、あなたの存在を感じる事ができるようになったのです―――。
あなたを、感じます。』
女神がそう言うと、僕の中にも様々な女神の意識が流れ込んでくる。その時、僕は全てを理解する事ができたのだ。
「はい、分かりました。迷惑とは思っていません。僕なりに頑張ってみます」
そう女神に伝えると、女神は僕と僕の懐にいたリンゴに目を落とし嬉しそうに微笑んだ。
『そう、その者がリンゴですね。私のかわいい子供を助けてくれましたこと、本当に感謝しますわ―――。
それと、ここの空気が変わるのを感じます。この森の澱みが薄められて行くのを感じます。ああ。それはきっと、あのかわいい聖女さんのお陰かしら』
女神は目をつぶり森の中を見回しているようだ。
『あなたを感じる事が出来たお陰で、私の中の力がみなぎってくるのが分かります。このヴォーバルニャの大地の隅々まで張りめぐらせた精霊樹の根から、情報や力が私へと流れてくるのです』
女神は僕を外に出した後、その力をここに解放するように言ってきた。
『もう、大丈夫です。子供達はきっと、この試練に打ち勝てますよ』
そして最後に、女神は僕に確認をして来た。
『六番目の地球の勇者レン、あなたには感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。それに、あなたの世界の人々にとても迷惑をかけました。私の力が復活できたのは、あなたとあなたの世界【地球】のお陰なのです』
そう言って、女神は勝手に繋げた地球のダンジョンを消滅させましょうか?と問うてきた。
「いえいえ、それはちょっと勘弁してください」
ダンジョンのお陰で地球側も潤った事でもあるし、もし僕の一存で消滅させましたーってなったら、神田さんに絞め殺される。
「それより、お願いがあるのですが、聞いてくれます?」
僕は女神に願いを聞いてもらった事で、下界へ帰る事になった。女神は僕にリンゴの事をくれぐれもよろしく頼むと言った後、再び、僕の意識は暗転する事になる。
「レン、レン!大丈夫か?しっかりしろ!」
「ダメだ、ビクともしない」
レンの口元に手を沿え、胸に耳を持ってくるアリシア。ミーリアはレンに向かって回復魔法をかけようとするのをアリシアは止める。
「大丈夫、規則正しい息はしている、胸の鼓動もあるようだ。死んではいない。それに…リンゴも一緒のようだ」
アリシアはレンの懐で同じく意識を失くしているリンゴを抱え上げ、寝かせたレンの横にそっと寝かせる。
「もしかしたら…。」
「もしかしたら、精霊樹の世界へと意識が飛ばされたのかもしれない」
「だったら、それは精霊女神様の……。」
「ああ、そうだな。このまましばらく様子をみよう」
バッファは皆に指示を出した。
「ミーリアはそのままこの場の浄化に意識を集中してくれ。この場所の浄化が進めば、レンの意識も覚醒するかも知れん。
他に皆は、ここにキャンプを張るので準備を頼む。交代で周囲の見張りを行うぞ。何か問題は起こったら、すぐに連絡を頼むぞ。ではよろしく頼む」
見張りの配置と順番は『黒竜の牙』のゴルグがまとめる事となり、その手配が済んだ所で、皆は自分の仕事をするために散っていった。
◇◇◇
そこは塔の内部のようだった。目の前に螺旋階段があり、その上の方から声が聞こえてくる。その声に導かれるように僕はその階段を昇って行った。リンゴは僕の懐から顔を出して何か嬉しそうにクーンと鳴いた。
どれ位昇っただろう。下を見れば床は見えない。かなりの高さを昇ったのか、相当数の段数を上がったはずなのだが全くもって疲れてはいないし、身体が異様に軽いのだ。味覚や臭覚のような五感もある様なのだが、何かこう現実味に欠ける感じがする。これは現実ではなく意識の中で体験させられていると言う感覚なのだろうか。
所謂、
◇――――――
BCI<ブレイン・コンピューター・インターフェース>、脳波VRのようなもの。今、僕は仮想空間でのアバターの様なものかもしれない。
そう言えば、仮想空間で生きる世界を描いたSF映画があったけど、実はそれは本当に起こっている現実なのかも?って一時真剣に考えてた時期があった。
だってさ、眠った意識下で生々しい夢を見る事って、なんて摩訶不思議なんだろうって思わないかい。
実際に全身麻酔下で夢を見た身からすれば、どっちが本当の現実なんだろうと思う事が多々ある。それは―――
真っ白な空間に人とは思えないような美しい女性がいた。その女性は『君はまだここに来るには早すぎます』との意識を僕にかけてきたんだ。
でも、そこは、とても居心地のいい場所だったんだ。それで、僕はそこから離れる事がとても嫌だと感じ、すごく駄々をこねたんだと思う。
『帰りなさい』と言う合図の後、頭がぐるぐる廻って、意識も廻って、そして誰かの声が聞こえた事で僕は覚醒した。それは手術が終わった事を告げる医者の声だった。
そう、僕は一度、バイク事故で死にかけたんだ。
――――――◇
そんな事をつらつら考えながら、それでも上へ上へと昇っていった。そして昇りきったそこには、真っ白な何もない静寂な世界がただ広がっていた。
頭の中に声が響く。そしてその時、強い光が輝いた事で、とても眩しくて目を開けられなくなってしまった。しばらくして目を開けたところ、僕の前に白く輝く女性が宙に浮いていたのだ。
「あ、あなたは……」
『わたくしは精霊女神アルフォーニス―――私の声が聞こえますか?
ですが、今、あなたが見ている姿はあなたの中いある精霊女神アルフォーニスの幻影。今の私は精神体であり、姿形は存在しないのですから。
ここへ封じられてから外の世界の状況が私の中に入っては来なくなり、とても辛い思いをしていました。私の子供達の事が心配で仕方なかったのです。
ですが、あなたが私に触れた瞬間、あなたの存在を感じる事ができるようになったのです―――。
あなたを、感じます。』
女神がそう言うと、僕の中にも様々な女神の意識が流れ込んでくる。その時、僕は全てを理解する事ができたのだ。
「はい、分かりました。迷惑とは思っていません。僕なりに頑張ってみます」
そう女神に伝えると、女神は僕と僕の懐にいたリンゴに目を落とし嬉しそうに微笑んだ。
『そう、その者がリンゴですね。私のかわいい子供を助けてくれましたこと、本当に感謝しますわ―――。
それと、ここの空気が変わるのを感じます。この森の澱みが薄められて行くのを感じます。ああ。それはきっと、あのかわいい聖女さんのお陰かしら』
女神は目をつぶり森の中を見回しているようだ。
『あなたを感じる事が出来たお陰で、私の中の力がみなぎってくるのが分かります。このヴォーバルニャの大地の隅々まで張りめぐらせた精霊樹の根から、情報や力が私へと流れてくるのです』
女神は僕を外に出した後、その力をここに解放するように言ってきた。
『もう、大丈夫です。子供達はきっと、この試練に打ち勝てますよ』
そして最後に、女神は僕に確認をして来た。
『六番目の地球の勇者レン、あなたには感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。それに、あなたの世界の人々にとても迷惑をかけました。私の力が復活できたのは、あなたとあなたの世界【地球】のお陰なのです』
そう言って、女神は勝手に繋げた地球のダンジョンを消滅させましょうか?と問うてきた。
「いえいえ、それはちょっと勘弁してください」
ダンジョンのお陰で地球側も潤った事でもあるし、もし僕の一存で消滅させましたーってなったら、神田さんに絞め殺される。
「それより、お願いがあるのですが、聞いてくれます?」
僕は女神に願いを聞いてもらった事で、下界へ帰る事になった。女神は僕にリンゴの事をくれぐれもよろしく頼むと言った後、再び、僕の意識は暗転する事になる。
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