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01:滅亡のはじまり
二回目の隣人 5
しおりを挟む「明呉には、言っちゃおうかな。俺に興味が無さそうだから」
木漏れ日でまだらに光が当たる中、両膝に両肘を乗せた渡來が下から覗き込むようにして言ってくる。足が長いと全体的に窮屈そうだ。
興味がないとは失礼な、と言いかけてやめた。あながち嘘ではなかったので。
興味がない訳ではない、そんな暇がないだけ。だけど明呉の中身なんて知る由もない他人から見れば、その無関心さは同義だった。
「何を?」
「あのさ、来年の八月三十一日にさ、――世界が終わるんだ」
突然スピリチュアルな話をされて目を白黒させる。世界滅亡。そう言われてパッと思い浮かぶのはノストラダムスだった。一九九九年に、恐怖の大魔王が降ってくる。でも結局予言は予言でしかなくて、その延長線上の未来で自分たちはこうして課題をこなしている。
そういうのに踊らされるタイプの人だったのだ、と見る目が変わる。勝手な想像だが、『馬鹿馬鹿しいよね、そういうの』と半笑いでスマホを眺めているようなタイプだと思っていた。
「信じなくていいよ。俺が勝手に信じてるだけなんだ」
「それは……ちょっと、困るかもしれない」
「どうして?」
「俺は早く大人になってとっとと家出たいんだ。その前に世界が滅びられると、だいぶ困る。俺の人生いいことないまま終わっちゃう」
明呉は渡來の言葉に心底真面目に答えた。
人生これから、その為に必死で勉強して家から遠いこんな進学校までやってきたのだ。家から学校までチャリで三十分かかる。それにバイトだって始めた。バイト先の店長も先輩もみんないい人そうだし、何より美味い賄いが出る。
全ては卒業後にこのクソみたいな環境から抜け出す為。そのためにこれからコツコツ努力しようと思ってるのに、志なかばで世界というそもそもの土台に崩れられたら大変困る。
「……ふ、あはは、最高。笑わないんだ、こんなこと言い出すやつ」
「信仰は自由だ。それがカルトでも陰謀論でも、俺に迷惑がかからないならどうだっていい」
キッパリと言いきる明呉を見てまた声をあげて笑った。こんなに子供みたいにケラケラ笑っている姿は初めて見たかもしれない。
教室の中の渡來はいつも椅子に座っていて、その周りに人が集まっている。周囲で嵐の如く飛び交うそれぞれの会話に軽く相槌を打って、何か話を振られたら一言二言溢すだけ。だから勝手に静かな人間だと思っていた。
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