43 / 49
05:アポカリプスまであと何秒
約束をして 2
しおりを挟む△▽△▼△▽△▼△▽△▼△▽△▼△▽△▼△▽△▼△▽△▼△▽△▼△▽△
「えっ! 渡來じゃん?!」
前方から聞こえてきた声にギョッとしてすぐさま手を離す。名残惜しそうに指先が伸ばされたけど、それをペシリと叩き落として前に目を向けた。
「え~~なんでなんで? 今日用事あるって言ってたじゃん!」
「うわビジュ最強すぎ……。浴衣って最高な日本文化だね」
「待て待て待て、お前まさかデートか?!」
「ええーーっ! ちょっと待ってショックすぎ!」
姦しい声が聞こえてくる。渡來の背中越しにチラリと覗けば、教室で見る派手な面々が勢揃いしていた。
女子生徒たちはそれぞれ気合の入った浴衣姿で、突然祭りの会場で出会った渡來に運命を感じているような表情で頬を赤らめている。
「うん、用事。二人で祭り行こうねって、去年から約束してたんだ」
「えっえっえっほんとにマジなやつ?」
「え…………ガチ?」
デートという単語を全く否定しない渡來に、からかい混じりだった男子生徒たちの勢いが無くなっていく。それと同時に女子生徒の間に動揺が広がっていった。
あの渡來に、彼女が? この男が選ぶなんてどれほどの美少女なんだ?
生徒達の間に伝播していく困惑の雰囲気にまずいと思った明呉は、渡來の広い背中からサッと顔を出して自己紹介をした。
「明呉、です。一緒に遊ぼうって話に、なってて」
さして話したこともないクラスメイトの前に躍り出るのは勇気がいった。それでも今ここで渡來が勘違いされてクラスの中で浮かないように、という一心で体が動いていた。
明呉を見た生徒達は目を丸くしたあと、ああなんだ、という空気を隠しもしない声音で反応してきた。
「ああ……明呉?」
「あーそうなんだー? え、そこそんな仲良いの?」
「明呉ってこういうトコ来るんだ。興味ないんだと思った」
「ええ~~~二人とか寂しくない?」
一緒にいるのが同性だと分かった瞬間、女達の囲い込みは早かった。どうせなら一緒に周ろうよ、という親切を装った仮面でグイグイと渡來の腕を引っ張り群れに引き摺り込もうとする。
「ごめんね、今日は二人で周りたい」
「またまた! いいじゃん今日くらい」
「そうだぜ~、お前いっつも付き合い悪いんだからさあ」
こいつが居た方が盛り上がりそうと察知した男子生徒達も渡來を囲い込む方向で結託し始める。さりげなく渡來との間に割いられた明呉は、されど強く声を上げることも出来ない。
「あっちに射的あった! 私とって欲しいのあるー!」
「いやいやそれより花火見る場所取りしないと」
「リサーチ済みでーす!」
「渡來君の浴衣綺麗だねえ、自分で着付けたの? すごーい!」
渡來を中心にした巨大な群れになった生徒達は、明呉を置いてするすると人混みの中を進んでいく。明呉の存在なんて無かったようにされている。
世界はいつもそうだった、と今更ながらに思い出す。都合の悪いものは見なかったことにされるのだ。
明呉は割と見なかったことにされる側だった。それをすっかり忘れていたのは、ひとえに渡來が都度都度振り返って手を差し伸ばしてくれていたからだ。
「ま、っ……!」
そのスピードに追いつこうと明呉も足を早めようとするが、勢いをつけた結果指の股は砂利との摩擦で悲鳴を上げる。日頃味うことのないタイプの痛みに顔を顰めているうちに、どんどんとグループとの距離は開いていく。
「……浴衣なんて、調子乗るもんじゃないな……」
ついに耐えきれなくなって、足を止めた。迷惑そうな顔をする人の流れを謝りながら横切って、屋台が連なるその裏の雑木林へと逃げ込んだ。
着付けて貰った時、喫茶店の店員総出で褒めちぎられた。店長は孫を自慢するような勢いで絶賛したし、名黒はきゃーきゃー騒ぎながら写真を撮りまくって、白塚は親戚の子供を見るような柔らかな視線で「よく似合っている」と言ってくれた。
その時ちょっと調子に乗ったのだ。きっと渡來は洒落た浴衣を着てばっちり決めてくるだろうけど、この姿ならその隣に立っても見苦しくはないんじゃないのかと。
そんなのは恥ずかしい思い違いだったのだ。どれだけ装飾を変えたとて明呉の内側が変わることはないし、今まで積み重ねてきた明呉自身の印象を覆すことはなかなか出来ない。
現に、教室で毎日のように顔を突き合わせているはずのクラスメイト達は、明呉の浴衣姿にほとんど反応しなかった。どうでもいいのだ、彼らにとって、明呉大地という存在は。
遠くで明呉、と呼ばれた気がした。でももうどこにも見当たらない。煌々と光る屋台通りはどこか遠い世界のように見えて、ああやっぱり渡來と自分は住む世界が違うんだなと思い知らされた。
ジクジクと足が痛む。この下駄を脱ぎ捨ててしまえたら楽なのに、と思いながらも、店長の嬉しそうな顔がよぎってそれは絶対に出来なかった。
人生、こんな事ばかりだな。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
白馬のプリンスくんには、どうやら好きな人がいるらしい
兎束作哉
BL
――これは幼馴染ニコイチが、幼馴染から一歩進んで恋人になるまでの物語。
白雪凛は188cmの高身長の高校2年生。しかし、授業の終わりには眠ってしまう生粋の居眠り魔であり、名前も相まって“白雪姫くん”や“凛ちゃん”と弄られる。
そんな凛を起こしてくれるのは、白馬燈司という155㎝の低身長の幼馴染男子。燈司は、低身長ながらも紳士的で名前を弄って”おうじくん“と呼ばれる文武両道の優等生。
いつも通りの光景、かわいい幼馴染の声によって起こされる凛は、当たり前の日常に満足していた。
二人はクラス内で、“白雪姫カップル“と呼ばれるニコイチな関係。
また、凛は、燈司を一番知っているのは自分だと自負していた。
だが、ある日、いつものように授業終わりに起こされた凛は、燈司の言葉に耳を疑うことになる。
「俺、恋人ができたんだ」
そう告白した燈司に凛は唖然。
いつもの光景、秘密もないニコイチの関係、よく知っているはずの幼馴染に恋人が!?
動揺する凛に追い打ちをかけるよう、燈司は「恋人とのデートを成功させたいから、デート練習の相手になってほしい」と頼み込んできて……?
【攻め】白雪凛×白馬燈司【受け】
鈍感高身長攻め(平凡)×王子さま系低身長受け(美形)
※毎日12:00更新です
※現代青春BLです
※視点は攻めです
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】いいなりなのはキスのせい
北川晶
BL
優等生×地味メンの学生BL。キスからはじまるすれ違いラブ。アオハル!
穂高千雪は勉強だけが取り柄の高校一年生。優等生の同クラ、藤代永輝が嫌いだ。自分にないものを持つ彼に嫉妬し、そんな器の小さい自分のことも嫌になる。彼のそばにいると自己嫌悪に襲われるのだ。
なのに、ひょんなことから脅されるようにして彼の恋人になることになってしまって…。
藤代には特異な能力があり、キスをした相手がいいなりになるのだという。
自分はそんなふうにはならないが、いいなりのふりをすることにした。自分が他者と同じ反応をすれば、藤代は自分に早く飽きるのではないかと思って。でも藤代はどんどん自分に執着してきて??
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜
紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉
学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。
ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──?
隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡
いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる