もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜

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静かに始まる復讐、そして餞別

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 ───3日後、フレデリックはイルアの家の門を叩いた。

 数日前にあれほど心無い言葉を放ったことなど忘れたかのように、軽い足取りで。




「イルア、会いたかったよ」
「ええ、私もです。フレデリック様とお会いできるのを心待ちにしてました」

 ふわりと笑ったイルアは、さぁお入りくださいとフレデリックに入室を促す。

「ん?今日はなんか、この部屋暖かいね」
「ええ。めっきり冷え込んできましたから。フレデリック様が風邪など召したら大変だと思って。……暑すぎますか?」
「いや、丁度良いよ。それよりも、さ」

 我が物顔で部屋に入り、そして上着を当然のようにイルアに押し付けたフレデリックはチラリと寝室に目を向ける。

「ええ、フレデリック様。まいりましょう」

 イルアは丁寧にフレデリックの上着をハンガーにかけると、共に寝室へと向かった。








「───……素敵でした、フレデリックさま」

 情事が終わってすぐ、イルアはフレデリックの胸に顔を寄せ吐息交じりに呟いた。

「そうか。……珍しいね、君がそんなことを言うなんて」
「ええ。……でも、ずっとお伝えしたかったんです」
「へぇ。まぁ、それなりのことはしたからね、俺。それにしても今日のイルアは可愛いな。でも、はっきり口にされるとちょっと照れるよ」
「……ふふっ、私は本当のことを言っただけですわ」

 イルアから潤んだ目で見つめられたフレデリックは、まんざらでもなさそうに「ま、普通さ、普通」などと言う。

 そこでイルアはすかさず口を開く。

「ねえ、フレデリックさま。気を悪くせずに、聞いてください」
「……なんだい」

 前置きをしたというのに、フレデリックの口調は途端に固くなる。

 しかしイルアは敢えて気付かぬふりをする。

「女性は男性の強引なリードが大好きなんです。嫌、やめて、というのはあくまで建前。だって、淑女は恥じらわなければならないと教育を受けますから。でも、本音は違うのです。それは身分など関係なく、女なら」

 遠回しにこれから妻となる女性も、乱暴に抱いた方が喜ぶと伝えれば愚かにもフレデリックは「なるほど」と言って、真面目な顔で頷いた。

 イルアはそっとフレデリックの胸に顔をうずめる。噴き出すのをこらえるために。

「……俺は君に謝らないといけないな」
「あら、何をでしょう?」

 擦り寄るイルアの髪を撫でながら、フレデリックは掠れた声で続きを語る。

「俺はもしかしたら君が甚だしい勘違いをして、領主の妻になりたかったのだと思っていたんだ」
「まぁ」
「でもイルア、君はまるで熟練の娼婦のように俺に素晴らしいアドバイスをくれた。悪かった。君はちゃんの身の程を弁える人間だったんだな。ああ、つまり俺に見る目があったってことか。……ところで、イルア。君は娼館で働く気はないのか?」
「……なぜですか?」
「わからないのか?意外に君は頭が悪いな。だって関係が終わっても私は客として君に会える。君だってそのほうが割り切れて良い思いができるだろ?」

 そんな侮辱でしかない言葉を受けても、イルアは激高することはしない。 
 
 黙って受け入れ、そしてどんなふうにでも取れる笑みを浮かべた。 
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