もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜

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【最後で最高の女】になった女と、利を得た男が語るその後

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 日差しが穏やかな午後、窓から差し込む陽の光を受けてイルアのの髪が金に染まる。の瞳は、猫のように細くなっている。

 大鍋に入った薬草が独特の香りを放ちながら沸騰した湯の中で踊る様を、イルアはこれ以上ないほど真剣な表情で見つめていた。

「よし。次は……あれ?えっと」
「リンデンフラワーだね」
「あ、そうでした。すみません……って、ああ……また煮出し過ぎてしまいました。重ねて申し訳ありません」
「いいさ、いいさ。そう簡単に覚えられちゃとしたら困るからね。材料はいっぱいあるんだから、何度でも練習をしな。失敗した数だけ上手くなれるもんさ」

 見た目は意地悪く、怪しいローブをまとった魔女は、寛容な言葉をイルアに言ってこの場を去る。

 手取り足取り教えるのは性に合わないようで、魔女はイルアが困った時だけ的確な指示を与えてくれる。大変、良い師匠叔母だ。






 フレデリックと別れて、1年が経った。

 イルアは家を売り、魔女こと叔母とともに住処を移した。

 新しい住処は、他領地の山間の静かな村だった。遍歴医すら滅多に立ち寄ることが無い辺境の村では、薬草に精通している魔女は医者のような扱いを受けている。無論、つま弾きに合うことも無い。

 移住をして、イルアは魔女である叔母に弟子入りした。

 まだまだ失敗続きの毎日であるが、それでも魔女は筋が良いと褒めてくれる。多分、師匠は褒めて伸ばすタイプなのだろう。

、今日の修業はここまでにしな」
「え?どうしてですか?」

 失敗した飲薬を捨て、再挑戦をしようとしていたイルアは、つい不満げな表情を浮かべてしまう。

 しかし魔女は苦笑を浮かべながら、窓を見ろと顎で示す。すぐさまそこに視線を移したイルアは、魔女の言葉の意味を理解した。

「お茶の準備を始めておきます。師匠も飲みますよね?」
「ああ、気が利くね。ただ、薬膳茶はやめておくれ。あれは苦くて飲めたもんじゃない」
「……」

 一年前に魔女からそれを出され、しかも完飲を強要されたイルアは物言いたげな顔になる。

 だが、それでも無言で一般的な茶葉の缶を手に取った。





 ───カラン、コロン。

 来客を告げるゲートベルが鳴る。
 
 イルアは来客を迎えるために玄関扉を開けた。

「いらっしゃいませ。はるばるお越し頂き、ありがとうございます」
「いや、こちらこそ急な訪問になってしまい申し訳ありません」

 腰を折ったイルアに、旅服を身にまとった客人は慌てたように早口で言った。

 そして顔を上げたイルアに、丁寧に礼を取った。その姿は、まるで貴族令嬢に向けてのそれ。

「ルーア嬢、今日はあなたに改めて礼を伝えたかったのです。中に入っても?」
「ええ、どうぞ。お茶の準備も整ってます。お入りくださいませ、

 イルアはかつて愛した男の弟───アルフレッドに向けにこっと笑みを浮かべると、彼が入室しやすいように身体を扉に寄せ、手のひらを奥へと向けた。
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