もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜

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【最後で最高の女】になった女と、利を得た男が語るその後

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「どうぞ。苦くないですから」
「は?……あ、いえ。ありがとうございます。いただきます」

 少し離れた場所で師匠が噴き出すのが見えたけれど、イルアはすました顔でアルフレッドの向かいに着席する。

 住まいが新しくなっても魔女の賤家しずやは狭い。

 もちろん客間など無いから、イルアはアルフレッドと作業場を兼ねたキッチンのダイニングテーブルで向き合っている。

 アルフレッドは謎めいた魔女の秘薬の材料がひしめき合っている異空間に通されても、不満を口にすることも、出されたお茶に警戒することも、不平を述べることもなく、ティーカップを持ち上げた。

「───……兄の葬儀が無事におわりました」

 味わうように飲み干し、空になったティーカップをソーサーに戻しながら、アルフレッドは静かに言った。

「そう」

 イルアも同じように静かな口調で答える。知らない誰かの訃報を聞いたような感じで。

「それと、兄は……昼夜問わず、あなたの名前だけを口にしています」
「……っ。そう」

 今度はイルアは小さく息をのむ。しかし、すぐに小さく頷いた。

 アルフレッドが矛盾する発言をしたことに訝しむこともなく、ただただ、受けた報告を丁寧に心の中に仕舞うだけ。







 イルアの選んだ復讐は、自分と同じ思いをフレデリックにさせることだった。




 かつて自分がフレデリックにされたように、狂言を信じ込ませ、そして取り返しがつかないような状況に陥れば良いと思っていた。

 何を言われても、どう責められても、自業自得だと言ってやれるように。

 だからずっとフレデリックにとって都合の良い女を演じ続けた。
 彼を神のように崇めて、信者のように盲目的に慕い、徹底的に尽くした。

 その結果、彼はイルアの言葉を受け入れ、その通りにしてくれた。

 女性を乱暴に扱うこと。
 横暴にふるまうことが、男らしいと態度だと思うこと。
 領民を己の私物だと勘違いすること。

 誰の意見にも耳を貸さない愚鈍な男に成り下がること。

 全てイルアが意図的にした。持てる全てを使って、フレデリックをどうしようもない男に仕立て上げたのだ。

 しかし彼が自分が愚かだったことに気付けば、全てとは言わないがある程度は取り戻せるはずだった。

 予定通り王都に住む貴族令嬢とだって、結婚できたかもしれない。

 しかし、ここでイルアの前に一人の男が現れた。それが、アルフレッド。

 アルフレッドはイルアに協力を求めた。兄フレデリックが二度と次期領主の座を望めないよう、徹底的に潰して欲しいと。

 彼もまたフレデリックの被害者だった。

 幼少の頃から兄より優秀だったアルフレッドは、フレデリックから陰湿な嫌がらせ行為を受け続けていた。

 それだけなら、アルフレッドはある程度の年齢になったら自立して、兄と距離を置くことで身を守ることができた。

 しかしその前に、フレデリックはアルフレッドの恋人を奪った。

 いや、奪っても責任を取るならまだ良かった。

 寝取られた事実は深い傷となるが、自分にも非があったと無い理由を探して遠い地へ流れればいつか傷も癒えるだろう。

 兄と恋人が末永く幸せになるなら、何とか折り合いをつけることもできた。

 けれどフレデリックは、力づくでアルフレッドの恋人を奪ったのにも関わらずもてあそぶだけもてあそび、子供がおもちゃに飽きるように捨てたのだった。
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