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仮初めの恋人と過ごす日々※なぜか相手はノリノリ
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カイロスに横抱きにされたアンナは、絶対に眠れるわけがないと思っていたけれど秒速で眠りに落ちた。
熱のせいで気を失ったという表現の方が正しいかもしれないが。
兎にも角にも、次に目を覚ましたのは随分経ってから。
ただ自発的に目を覚ましたわけじゃない。衝立の向こうから何やら揉める男子生徒と成人した女性の声が聞こえてきたからでーー
「困りますよ、殿下。それは絶対に使わないっていう約束じゃないですかっ」
「黙れ。お前が黙ってればそれで済む話じゃないかっ。あんまりごちゃごちゃ言うなら、今後余計なことを言わせないように舌を引っこ抜くぞ!」
「ちょ、それはもっと困ります。って、殿下。私、一応、私保健医だけど先生!あなたは生徒!!」
「で?」
「……え?”で”って……」
「だから何だ」
「いや……ですから、それを使っちゃ駄目って話で」
「うるさいっ。あいつが死ぬかもしれないんだぞ!?今使わずして、いつ使う!?」
「今でしょ!?なぁーんて、ノリ良く言ったりしませんよ!とにかく駄目です!!」
やいのやいのとうるさい。
それと、物騒この上ない。
アンナは真っ白な天井を見上げながら、衝立の向こうにいる二人に無言で突っ込みを入れてみる。
言い争っているのは、間違いなくカイロスだ。もう一人は女性で……口ぶりからしておそらく保健医だろう。
あと揉めているのは、どうやら自分が原因ということにもアンナは気付く。
「……あの」
アンナはベッドから身を起こして、衝立の向こうに声を掛ける。けれども、
「いい加減にしろっ。あいつが死んだら、どう責任取るんだ!?」
「だから死にませんって!単なる風邪です!!」
「ふざけるな!保身に走るのも大概にしろっ。このままだと、間違いなく死ぬぞ、あいつはっ」
「そんな大袈裟な!!」
最後は悲鳴に近い声を上げた保健医に、アンナは心底同情した。
確かに熱は高いが、この程度で死ぬことは無い。勝手に危篤扱いするカイロスの方がかえって失礼だ。
でもこんな切羽詰まった声を出してくれるカイロスに、アンナは呆れより申し訳なさと嬉しさで胸が苦しくなる。
それに今朝だって、カイロスは女子寮まで迎えに来てくれた。
女子用のネクタイをしている自分を見てムッとしていた。言い換えるなら、彼のネクタイをしなかったことに腹を立ててくれたのだ。
そのことを思い出し、アンナは両手を胸の辺りでぎゅっと押さえる。
嫌われたと思っていた事実が、もしかしたら違うかもという可能性に気付いて。
と、ここで言い争っていた二人だが、最終的に保健医が見ないフリをするという体で落ち着き、ガラリと保健室の扉が開閉する音が響く。多分、保健医が外に出たのだろう。
そうなると今この部屋にはカイロスと自分の二人っきりになる。
その事実にアタフタするアンナであったが、衝立の向こうにいるカイロスは遠慮を知らないようで、迷いなくこちらに向かってくる足音が響く。
急転した事態に混乱を極めたアンナは、一先ず毛布を被って狸寝入りをすることを選んだ。
熱のせいで気を失ったという表現の方が正しいかもしれないが。
兎にも角にも、次に目を覚ましたのは随分経ってから。
ただ自発的に目を覚ましたわけじゃない。衝立の向こうから何やら揉める男子生徒と成人した女性の声が聞こえてきたからでーー
「困りますよ、殿下。それは絶対に使わないっていう約束じゃないですかっ」
「黙れ。お前が黙ってればそれで済む話じゃないかっ。あんまりごちゃごちゃ言うなら、今後余計なことを言わせないように舌を引っこ抜くぞ!」
「ちょ、それはもっと困ります。って、殿下。私、一応、私保健医だけど先生!あなたは生徒!!」
「で?」
「……え?”で”って……」
「だから何だ」
「いや……ですから、それを使っちゃ駄目って話で」
「うるさいっ。あいつが死ぬかもしれないんだぞ!?今使わずして、いつ使う!?」
「今でしょ!?なぁーんて、ノリ良く言ったりしませんよ!とにかく駄目です!!」
やいのやいのとうるさい。
それと、物騒この上ない。
アンナは真っ白な天井を見上げながら、衝立の向こうにいる二人に無言で突っ込みを入れてみる。
言い争っているのは、間違いなくカイロスだ。もう一人は女性で……口ぶりからしておそらく保健医だろう。
あと揉めているのは、どうやら自分が原因ということにもアンナは気付く。
「……あの」
アンナはベッドから身を起こして、衝立の向こうに声を掛ける。けれども、
「いい加減にしろっ。あいつが死んだら、どう責任取るんだ!?」
「だから死にませんって!単なる風邪です!!」
「ふざけるな!保身に走るのも大概にしろっ。このままだと、間違いなく死ぬぞ、あいつはっ」
「そんな大袈裟な!!」
最後は悲鳴に近い声を上げた保健医に、アンナは心底同情した。
確かに熱は高いが、この程度で死ぬことは無い。勝手に危篤扱いするカイロスの方がかえって失礼だ。
でもこんな切羽詰まった声を出してくれるカイロスに、アンナは呆れより申し訳なさと嬉しさで胸が苦しくなる。
それに今朝だって、カイロスは女子寮まで迎えに来てくれた。
女子用のネクタイをしている自分を見てムッとしていた。言い換えるなら、彼のネクタイをしなかったことに腹を立ててくれたのだ。
そのことを思い出し、アンナは両手を胸の辺りでぎゅっと押さえる。
嫌われたと思っていた事実が、もしかしたら違うかもという可能性に気付いて。
と、ここで言い争っていた二人だが、最終的に保健医が見ないフリをするという体で落ち着き、ガラリと保健室の扉が開閉する音が響く。多分、保健医が外に出たのだろう。
そうなると今この部屋にはカイロスと自分の二人っきりになる。
その事実にアタフタするアンナであったが、衝立の向こうにいるカイロスは遠慮を知らないようで、迷いなくこちらに向かってくる足音が響く。
急転した事態に混乱を極めたアンナは、一先ず毛布を被って狸寝入りをすることを選んだ。
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