「何でも欲しがる妹に、嫌いな婚約者を押し付けてやりましたわ。ざまぁみなさい」という姉の会話を耳にした婚約者と妹の選択

当麻月菜

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妹リリーナの独白

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 自分に自信が持てないリリーナは、完璧な姉の持ち物を良く観察するようになった。

 自分の好みではなく、姉がどういう物を選ぶのか。どんな理由でそれを選んだのか。

 それが知りたいがために、リリーナは頻繁にアンジェラにこう言った。

「お姉様の、それ……とても素敵ですね」と。

 ハンカチやリボンといった小物に始まり、ドレスや靴などの衣類に至るまでリリーナは目に付いたアンジェラの私物に向けてそう言った。

 最初の頃はアンジェラは、褒められたことに素直に喜んでくれた。

 時には、もっと良く見れるように自らリリーナに手渡してくれた。
 
 今ならわかることだが……そこでリリーナは、間違った行動を取ってしまったのだ。

 手渡された物をつい自分の身体に当て、姿見に映してしまったのだ。

 傍から見たらそれは「欲しい」という意思表示にしか見えなくて、姉であるアンジェラは、そうされればリリーナに譲るしかなかった。

 下心も、まして強請る気持ちも無かったリリーナは、アンジェラの小さな誤解を訂正できないまま素直に受け取ってしまった。

 そのことをリリーナは、酷く後悔している。

 あの時、アンジェラの誤解に気付いてちゃんと違うと訂正すべきだったのだ。

「違うの。私はお姉さまの私物を奪う気なんてなかったの。ただ……どうすればお姉さまのように趣味の良い人間になれるのか知りたかっただけ」

 そう言えば良かった。

 でもあの頃ーー10歳にも満たない子供が、己の気持ちをきちんと言葉にするのは難しいことだった。

 まして憧れの姉が私物を差し出してくれたとなると、リリーナは嬉しい気持ちが勝ってしまった。

 こんなやりとりは、姉妹なら珍しいことではないはずだ。そして一度だけのことなら、小さな誤解で済んだし、アンジェラもすぐに忘れたことだろう。

 なのにリリーナは、その後も姉に向け同じセリフを言い続けた。差し出される度に、拒むことなく受け取ってしまった。

 そんなやり取りが2年ほど続いたある日、アンジェラにこんなことを言われた。

「ねえ、どうしてそんなに私の物が欲しいの?お父様やお母様に言って新しい物を買ってもらいなさい」

 ーーもう、いい加減にしてちょうだい。

 苛立ちを隠すことなくそう言ったアンジェラの顔と、在りし日の母エルアの顔が重なった。

 とても怖かった。
 
 姉にまで突き放されるのかとリリーナは、恐怖に怯えた。

 あの時こそが誤解を解く、絶好の機会だったというのに、冷静な判断ができなかったリリーナの口から出てきた言葉は己を守る言い訳だった。

「だって……私、上手に選べないから」

 俯き震える声で呟いたリリーナは、アンジェラがどんな表情をしているのか見ることができずにいた。
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