どうしようもない姉に婚約者を寝取られそうになったので、彼よりもっとハイスペックな殿方を紹介することにしました。※但し、完璧なのは見た目だけ

当麻月菜

文字の大きさ
15 / 24
むしろ遅すぎる(婚約者談)

しおりを挟む
 ただ、ハーピー二世ヴァネッサを見限ったとはいえ、やらなくてはならないことがある。

「あのう......ウェルドさま。お耳を少々お貸しいただいても?」
「ああ、どうぞ」

 あっさり耳を差し出してくれたウェルドに感謝しつつ、ティスタはそれに唇を寄せた。

「姉が大変ご迷惑をおかけしました。浮気を疑ってごめんなさい。許してください。なんでもします。あと......怪我はしてないですか?」

 ウェルドの肩に手を置いてそぉっと覗き込めば、彼に似つかわしくない薄っすらと笑みを浮かべていた。

「ご心配ありがとう、ティスタさん。怪我は無いですよ。でも、心に傷を負いましたが」
「ごめんなさい!」
 
 思わず叫んでしまったティスタだが、運悪くすぐ側にはウェルドの耳があった。

 当然ながら大声量を至近距離で受けたウェルドは耳を押さえて顔をしかめた。

「......重ね重ね申し訳ありません」
「......いや、これは俺の鍛練不足だ。気にするな」

 鼓膜を鍛える方法などあるわけないので、これはウェルドの優しさだ。嬉しい。そして、申し訳無い。

 ということを伝えたいが、現在激しい耳鳴りに襲われているウェルドに話しかけるのは酷だろう。

 だからティスタは、ウェルドの耳が復活するのを大人しく待つことにした。彼の膝の上で。


 ***


 待つこと数分、ウェルドの耳は復活してくれた。

 予想より早い回復ぶりにティスタは本当にウェルドは日頃鼓膜を鍛えているのかと尋ねたくなる。

 だがしかし、それを聞いてしまうと絶対に話が逸れる予感というか確信しかないので、ぐっと好奇心を押さえ込んでつい今しがた決心したことを彼に伝えることにした。

 ちなみにティスタは隙を見て、ウェルドの膝からベンチへとお尻の位置を変えている。

 それから、大きく深呼吸をすると、今しがた決意したことを口にした。

「ねえ、ウェルド。あのね......私、姉を見捨てる愚かな妹になりそうなんだけれど......良いかな?」

 ティスタは、これまでヴァネッサに踏みつけられて生きてきたせいで、あまり執着がない。

 何かを手に入れても、いずれは姉に取られるものだとどこか心の中で割りきっていた。

 でも、ウェルドに嫌われるのは、怖い。とてつもなく。

 世界中の全員に嫌われたってどうってことは無いが、彼に軽蔑されることは死と同義語だ。そして一般論として、家族を捨てる人間は畜生と同じでもある。

 そんな犬畜生と同じ位置に自ら立とうとする罪悪感と、軽蔑される怖さもあり、遠回しな決意表明になってしまった。

(......伝わった......かな?)

 覗き込んだ彼の顔は、驚いたというより、呆れたという表情に近く、でも怒りとか侮蔑とかそういう感情は無くって──── まぁつまり、言葉で表現できないほど微妙なものだった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・ 二人は正反対の反応をした。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...