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どんな精神状態でも美味しいと感じる食べ物は本当の好物だと言い切れる(検証済み)
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ティスタが姉ヴァネッサを見限ることを決意し、それがきちんとウェルドに伝われば───この場は浮気裁判から、作戦会議へとシフト変更した。
***
「───……へぇー、当人がいない場所で、そんなでっち上げをしてくれたんだ、へぇー。で挙句に、当人不在なのに結婚するなんていう強気な宣言をしてくれたんだ。へぇー」
先日、ヴァネッサが家族に向け言い放った全ての事をウェルドに伝えた瞬間、彼はものの見事に半目になった。
そして、また「へぇー」と呟く。
事を重ねるごとにウェルドの「へぇー」は冷気と重みを増していき、ティスタはもうちょっと柔らかい言い方をすれば良かったと後悔した。
しかし、どれだけ湾曲に伝えたところで、結局は同じ内容なのだという結論に至る。
「お姉さまの物欲は半端無いから、きっと言葉で説得しても無理だと思う。っていうか、それができるなら、今頃ハーピー二世なんていう異名で呼ばれたりなんかしないし。……人語で説得する以外の方法あれば良いんだけれど……」
姉を見限り、ウェルドと無事結婚したい。
これが一番の望みであり、これだけしかティスタは望んでいない。
声に出すことはできないが、いっそのことヴァネッサには、この世から引退してもらうのも手ではないかとすらティスタは思ってしまう。
もちろん、ちょっと思っただけだ。
実行する気は無いし、それに両親は、まだヴァネッサのことを娘だと思っており、人並みの幸せを望んでいる。
そんな気持ちから、ティスタは途中で言葉を止めてしまった。
「ま、確かにティスタの言う通り、ハーピー二世相手に人語で説得するのは無理だろうなぁ」
4度目の「へぇー」を言い終えてから、ウェルドはのんびりとした口調でティスタに同意した。
けれど、彼はティスタのように行き詰っているわけではない。
もう既に秘策を考えていたりする。
「そう気を落とすな、ティスタ。あと5分足らずで諦めるな。要は諦めさせるんじゃなくて、ヴァネッサ嬢が自らの意思で俺との結婚を白紙にするっていう流れにすれば良いだけだ」
「そんなことできる?」
国王陛下だって、稀代の魔術師だって、それこそ神様だってそんな奇跡を起こせるわけがないと決めつけているティスタに、ウェルドはあっけらかんと笑う。
「できるんだなぁー、これが。俺なんかより、もっとハイグレードな奴を紹介すれば良い」
「……」
「……なぁティスタ、今、できるわけないって思っているだろ?」
「私、あなたのことが好き」
「……くそっ、上手い誤魔化し方だな。嫌いじゃない……むしろ堪らない……じゃなくって」
くそっともう一度言いながらウェルドはガシガシと頭を掻く。
そして気持ちを切り替える為に、コホンと咳ばらいしてからこう言った。
「いるんだよ。そして、相手もきっとヴァネッサ嬢を気に入ると思う」
「……嘘」
「嘘じゃない」
自信に溢れた表情で、ウェルドは「俺の友達ダチの一人が」と付け加えた。
***
「───……へぇー、当人がいない場所で、そんなでっち上げをしてくれたんだ、へぇー。で挙句に、当人不在なのに結婚するなんていう強気な宣言をしてくれたんだ。へぇー」
先日、ヴァネッサが家族に向け言い放った全ての事をウェルドに伝えた瞬間、彼はものの見事に半目になった。
そして、また「へぇー」と呟く。
事を重ねるごとにウェルドの「へぇー」は冷気と重みを増していき、ティスタはもうちょっと柔らかい言い方をすれば良かったと後悔した。
しかし、どれだけ湾曲に伝えたところで、結局は同じ内容なのだという結論に至る。
「お姉さまの物欲は半端無いから、きっと言葉で説得しても無理だと思う。っていうか、それができるなら、今頃ハーピー二世なんていう異名で呼ばれたりなんかしないし。……人語で説得する以外の方法あれば良いんだけれど……」
姉を見限り、ウェルドと無事結婚したい。
これが一番の望みであり、これだけしかティスタは望んでいない。
声に出すことはできないが、いっそのことヴァネッサには、この世から引退してもらうのも手ではないかとすらティスタは思ってしまう。
もちろん、ちょっと思っただけだ。
実行する気は無いし、それに両親は、まだヴァネッサのことを娘だと思っており、人並みの幸せを望んでいる。
そんな気持ちから、ティスタは途中で言葉を止めてしまった。
「ま、確かにティスタの言う通り、ハーピー二世相手に人語で説得するのは無理だろうなぁ」
4度目の「へぇー」を言い終えてから、ウェルドはのんびりとした口調でティスタに同意した。
けれど、彼はティスタのように行き詰っているわけではない。
もう既に秘策を考えていたりする。
「そう気を落とすな、ティスタ。あと5分足らずで諦めるな。要は諦めさせるんじゃなくて、ヴァネッサ嬢が自らの意思で俺との結婚を白紙にするっていう流れにすれば良いだけだ」
「そんなことできる?」
国王陛下だって、稀代の魔術師だって、それこそ神様だってそんな奇跡を起こせるわけがないと決めつけているティスタに、ウェルドはあっけらかんと笑う。
「できるんだなぁー、これが。俺なんかより、もっとハイグレードな奴を紹介すれば良い」
「……」
「……なぁティスタ、今、できるわけないって思っているだろ?」
「私、あなたのことが好き」
「……くそっ、上手い誤魔化し方だな。嫌いじゃない……むしろ堪らない……じゃなくって」
くそっともう一度言いながらウェルドはガシガシと頭を掻く。
そして気持ちを切り替える為に、コホンと咳ばらいしてからこう言った。
「いるんだよ。そして、相手もきっとヴァネッサ嬢を気に入ると思う」
「……嘘」
「嘘じゃない」
自信に溢れた表情で、ウェルドは「俺の友達ダチの一人が」と付け加えた。
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