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どんな精神状態でも美味しいと感じる食べ物は本当の好物だと言い切れる(検証済み)

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 ウェルドの冷たい視線を受けたティスタは、今のギャグは自分の全力じゃないこと。そしてそんなクソつまらないギャグを言うほどウェルドの発言が信じられなかったこと。

 それらを、しっかりウェルドに言葉にして伝える。
 特に辛口評価を得たギャグについては、強めに訴える。

 そして一通り説明が終わり、念のためもう一度ウェルドに本気でヴァネッサにアランを紹介する気なのかを確認し終えれば─── ティスタは望まぬ答えを貰ってしまったため顔を覆って俯いた。

 ちなみにティスタは、念には念を入れて12回もウェルドに確認を取ったが、彼はすべて「相手はアランだ」と言い切った。

「……もうこの国終わったわ」
「いや、勝手に終わらせんな。大丈夫だから」

 さらりと答えるウェルドに、ティスタは顔じゃなく頭まで抱えたくなる。

(ああ……何を根拠にそんなことを言うのだろう、この人は)

 ヴァネッサが侯爵夫人になるということは、狂戦士バーサーカーに伝説の妖刀を、外道に落ちた魔導士に無尽蔵に使える魔力を、生真面目さしか取り柄がない国王に傾国の美女を宛がうようなものだ。

 しかもヴァネッサは年々、陰湿さと暴虐さが増している。

 これまで伯爵令嬢というそこまで権力を持ち合わせていない時ですら、大勢の人間を不幸にしてきているのだ。

 更に権力と財力を与えてしまったら、夫となるアランがどんなに腕っぷしが良く、頭がキレる男であっても、彼女の暴動を止めることはできないだろう。
 
「やっぱり終わりだわ、この国。国王陛下さまごめんなさい。そして国民の皆々さまごめんなさい。でも、私ウェルドと結婚はしたい」
「だから、終らないって……あと、最後のやつもっかい言って。ヤバイくらい嬉しいな」

 前半はノリ突っ込みの軽さで、後半は照れながらそう言った後、ウェルドはそっとティスタを己の胸に引き寄せる。

 ただこれは、絶望の淵にいる婚約者を慰めるわけではない。嬉しさのあまり、ちょっと婚約者に甘いイタズラを仕掛けるつもりでもない。

 これから話すことは超機密事項のため、まかり間違っても他人の耳に入れてはいけない内容だから、密着しただけ。

「あのさ、実はこれまで黙っていたけれどアランはね───」

 ごにょ、ごにょ、ごにょ、ごにょ。

 ウェルドはティスタの唇に耳を寄せると、今後の作戦を詳細に語った。もちろんその中には、侯爵家を揺るがす極秘事項も含まれている。

 そうしてウェルドの言葉が耳に落とされるごとに、ティスタは信じられないと言った感じで空色の瞳が大きく開いていった。
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