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当て馬になっても、やっぱり彼はカッコいい(のろけ)
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「それでは予定通り作戦を決行する。時計台の鐘が鳴ったら、二手に分かれて配置につくように。これは失敗が許されない。一瞬の油断が、生死を分けることになる。それを心に刻みつけろ。以上、質問は?」
ディスティール家が所有するプライベート庭園の端っこにある物置小屋の壁に張り付きながらそう言ったウェルドは、今から命がけの訓練を始める司令官のようなピリピリとした表情だ。
「万事問題ない」
「ないですよ」
今日の為に集まったメンバーことアランとリスラッドは、ウェルドに対して『何言ってんだコイツ』と呆れ顔をしている……と思いきや、むしろウェルドより緊張した面持ちでいた。
***
今を去ること10日前、ウェルドとティスタは二人っきりの作戦会議を終えた後すぐに、ティスタの自宅であるローウィ邸へと向かった。
表向きは「ヴァネッサの色仕掛けに落ちてしまったので男の責任を取る」という報告を、ラナウンドにするために。
結果としてラナウンドは、ウェルドの申し出─── ヴァネッサと結婚することを認めた。そして、すぐにヴァネッサを呼び、それを伝えた。
思い通りになったことでドヤ顔を決めたヴァネッサに対し、ティスタは「お姉さま、どうか幸せに、な……な……なって……うぇぇぇん」と泣き崩れた。
まぁ、これらすべては既に作戦の内なので、ウェルドもティスタも演技をかましているだけである。
内心では嘘泣きまでできる自分に、ティスタは驚き自画自賛したりもした。人間、命がけになれば、何でもできることを身をもって知った。
ちなみに、ティスタの両親はこの計画を知らない。
ローウィ邸に向かう途中、ギリギリまで作戦を両親に伝えるかどうか論議したけれど、侯爵家の極秘事項まで伝えなければいけないことがネックとなり、結局だんまりで行くことにした。
だから、何も知らない両親は泣き崩れるティスタを抱きしめ、「不甲斐ない私達をどうが許しておくれ」という言葉と共に一緒に泣いてくれた。
ものっすごく罪悪感を覚えたティスタは、本気の涙を流してしまった。
それが功を成したのかどうかはわからないが、ヴァネッサに計画は気付かれることなく、無事に今日を迎えることができた。
(ありがとうございます。お父様、お母様。そして、ごめんなさい。)
なぁーんてことを思いながら、ティスタも物置小屋に居る。
ただし、今日の服装はいつもの簡素なドレスではない。ディスティール邸のメイド服を身に付けている。
黒に限りなく近い深緑色のワンピースに、フリルがたっぷりとあしらった真っ白なエプロンは、悲しいことに普段着よりも良質だ。
ただ着心地は良いが、居心地は悪い。
なぜなら、これから当て馬になるウェルドを、この目で見ないといけないから。
ディスティール家が所有するプライベート庭園の端っこにある物置小屋の壁に張り付きながらそう言ったウェルドは、今から命がけの訓練を始める司令官のようなピリピリとした表情だ。
「万事問題ない」
「ないですよ」
今日の為に集まったメンバーことアランとリスラッドは、ウェルドに対して『何言ってんだコイツ』と呆れ顔をしている……と思いきや、むしろウェルドより緊張した面持ちでいた。
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今を去ること10日前、ウェルドとティスタは二人っきりの作戦会議を終えた後すぐに、ティスタの自宅であるローウィ邸へと向かった。
表向きは「ヴァネッサの色仕掛けに落ちてしまったので男の責任を取る」という報告を、ラナウンドにするために。
結果としてラナウンドは、ウェルドの申し出─── ヴァネッサと結婚することを認めた。そして、すぐにヴァネッサを呼び、それを伝えた。
思い通りになったことでドヤ顔を決めたヴァネッサに対し、ティスタは「お姉さま、どうか幸せに、な……な……なって……うぇぇぇん」と泣き崩れた。
まぁ、これらすべては既に作戦の内なので、ウェルドもティスタも演技をかましているだけである。
内心では嘘泣きまでできる自分に、ティスタは驚き自画自賛したりもした。人間、命がけになれば、何でもできることを身をもって知った。
ちなみに、ティスタの両親はこの計画を知らない。
ローウィ邸に向かう途中、ギリギリまで作戦を両親に伝えるかどうか論議したけれど、侯爵家の極秘事項まで伝えなければいけないことがネックとなり、結局だんまりで行くことにした。
だから、何も知らない両親は泣き崩れるティスタを抱きしめ、「不甲斐ない私達をどうが許しておくれ」という言葉と共に一緒に泣いてくれた。
ものっすごく罪悪感を覚えたティスタは、本気の涙を流してしまった。
それが功を成したのかどうかはわからないが、ヴァネッサに計画は気付かれることなく、無事に今日を迎えることができた。
(ありがとうございます。お父様、お母様。そして、ごめんなさい。)
なぁーんてことを思いながら、ティスタも物置小屋に居る。
ただし、今日の服装はいつもの簡素なドレスではない。ディスティール邸のメイド服を身に付けている。
黒に限りなく近い深緑色のワンピースに、フリルがたっぷりとあしらった真っ白なエプロンは、悲しいことに普段着よりも良質だ。
ただ着心地は良いが、居心地は悪い。
なぜなら、これから当て馬になるウェルドを、この目で見ないといけないから。
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