冷徹領主は、みなしご少女を全力で溺愛したいようですが。

当麻月菜

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3.暖炉とお茶と、紙の音

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「まさか君は一人で自宅に戻る気だったのか?」

 詰問に近いクラウディオの口調で、モニカは我に返る。

 でも「そりゃあ、そおっすよ」と返事ができなかった。クラウディオがまたムスッとしていたから。

「まったく呆れた奴だな」
「...... スミマセン」

 口先だけで謝ってみたものの、呆れられる理由がわからない。

 クラウディオは超多忙な身だ。そんな彼が、まさか一緒に行きたいなどと思うわけがないだろう。

 そんなふうに心の中でグチグチ呟いていれば、しっかり顔に出ていたようで、クラウディオは溜め息を吐きながら口を開く。

「道中、何があるかわからないではないか。それに先日の青年の件もある。カダ村の村長には厳重注意をしていたが、それでもまだ幾日も経っていない」
「...... はぁ」
「それにアクゥ砦の件も、まだ片付いていない。君の自宅には警備の者を配置してはいるが、それでも危険が無いとは言い切れない」
「...... はぁ」
「ゆえに、私が一緒ではないと絶対に安全とは言い切れない」
「はぁ?」

 失礼を承知で、モニカは最後は間抜けな声を出してしまった。

 長々と説明を受けたけれど、結局、クラウディオがどうして一緒に行きたいのか理解ができなかったからだ。

「あの......ご心配していただいて有り難いと思っています。でも、」
「”でも”ではない。君を送り出す私の身にもなってくれ。心配で仕事が手につかない。...... すまない、いつの間にか君を責めてしまうような口調になっていた」
「あ、や、いいえ」

 アワアワと両手を胸の位置で横に振るモニカの顔は赤かった。

 クラウディオの言葉は、なんだか独占欲を感じさせるものだったから。

(この人、自分が何いっているのかわかってるの?! むやみに心配とか言わないでっ)

 モニカはクラウディオに恋をしている。

 でも身分違いのこれは内緒にしておきたいし、相手に何かを期待する気持ちは最初から捨てている。

 とはいえ、取りようによっては期待できちゃうこの会話は、モニカにとってアルコール度数マックスのお酒のようだった。

 そんなふうにワタワタするモニカを無視して、クラウディオは顎に手を当て難しい顔をしている。

 そしてモニカがどうしたのかと尋ねる前に、おもむろに席を立った。向かう先は廊下へと繋がる扉で。

 中途半端な会話のまま、どこに行くのかとモニカが問い掛ければ、クラウディオは「よし、わかった。君の望みを叶えることにしよう」ときっぱりと言った。

 モニカは、更にわけがわからなくなった。
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