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3.暖炉とお茶と、紙の音
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不機嫌なご様子のクラウディオ目にして、モニカは考えたくないことばっかり頭に浮かんでしまう。
クラウディオは、自分から何も奪う気は無いと言った。
自宅に戻りたくなったら、いつでも馬車を用意すると言った。
これからの生活において束縛する気は無いと、言ってもくれた。
なのに、この態度は一体何だというのか。
「無理にとは言いません」
しびれを切らしたモニカは、顔を上げて言った。
思っていた以上にキツイ口調になってしまったが、自分に非はないはずだと開き直る。
「急なお願いでしたし、私ごときが領主さまに願いを口にするのは出すぎた真似でした。申し訳ありません。......明日は、辻馬車を拾って自宅に戻りますので。では、これで」
たった5日のご領主様との生活に別れを告げたモニカは、荷造りのために部屋に戻ろうとした。けれども、
「待て、なぜそういう流れになるんだ?」
信じられないといった感じで目を丸くするクラウディオに、モニカは礼儀を忘れてムスッとする。
「なぜって、領主さまがそう望んでいるんじゃないですか?」
(だって、約束守ってくれないじゃんっ)
半ば拗ねながらモニカが訴えれば、クラウディオは「違う、そうじゃない」と、慌てて首を横に振った。
「説明不足だったことは詫びる。そして、不快な気持ちにさせたことも謝罪する。頼む、座ってくれ」
「...... はぁ」
そこまでへりくだった態度を取らなくても、と思ったけれどモニカは素直にクラウディオの言葉に従った。
「お茶でも飲むか?」
「いえ、結構です」
「なら酒は......っと、すまん。まだ早かったな」
「そうですね」
着席してすぐに彼なりの言い訳を聞かされると思いきや、まるでご機嫌を取るかのようなクラウディオの言動に、モニカの眉間に皺が寄る。
そうすればクラウディオは、ほとほと弱りきった表情になった。
「...... すまない。気を悪くさせた女性の対処法を、私は知らないんだ」
考えようによっては、随分なことを言ってくれたクラウディオだけれど、その自覚は無い。
ただ不遜な態度ではなく心底困っている様子に、モニカは呆れを通り越して思わず吹き出してしまった。
そうすればクラウディオは、ほっとしたような笑みを向ける。
「君が自宅に戻ることは反対はしない。いつでも戻りたいときに戻れば良いし、それは、ここに来てくれる条件だ。ただ......」
「ただ?」
「明日は困ると言いたかったんだ」
「そうですか。差し支えなければ、理由を聞いても良いですか?」
どうせ馬車が急に用意できないとか、その程度のことだろうと思った。
でも、返ってきた答えは斜め上のものだった。
「明日は、私はローナという町に行かなくてはならないからだ」
「......ん?」」
首の角度が肩にくっつきそうなほど傾げたモニカは、クラウディオが何を言いたいのかしばらく考える。
結果として、信じられない結論しか出なかった。
「つまりは、領主様は一緒に付いてくる気でいたんでしょうか?」
「それ以外に何がある?」
質問を質問で返されたことより、クラウディオの考えていることが全くわからなくて、モニカはしばらく固まってしまった。
クラウディオは、自分から何も奪う気は無いと言った。
自宅に戻りたくなったら、いつでも馬車を用意すると言った。
これからの生活において束縛する気は無いと、言ってもくれた。
なのに、この態度は一体何だというのか。
「無理にとは言いません」
しびれを切らしたモニカは、顔を上げて言った。
思っていた以上にキツイ口調になってしまったが、自分に非はないはずだと開き直る。
「急なお願いでしたし、私ごときが領主さまに願いを口にするのは出すぎた真似でした。申し訳ありません。......明日は、辻馬車を拾って自宅に戻りますので。では、これで」
たった5日のご領主様との生活に別れを告げたモニカは、荷造りのために部屋に戻ろうとした。けれども、
「待て、なぜそういう流れになるんだ?」
信じられないといった感じで目を丸くするクラウディオに、モニカは礼儀を忘れてムスッとする。
「なぜって、領主さまがそう望んでいるんじゃないですか?」
(だって、約束守ってくれないじゃんっ)
半ば拗ねながらモニカが訴えれば、クラウディオは「違う、そうじゃない」と、慌てて首を横に振った。
「説明不足だったことは詫びる。そして、不快な気持ちにさせたことも謝罪する。頼む、座ってくれ」
「...... はぁ」
そこまでへりくだった態度を取らなくても、と思ったけれどモニカは素直にクラウディオの言葉に従った。
「お茶でも飲むか?」
「いえ、結構です」
「なら酒は......っと、すまん。まだ早かったな」
「そうですね」
着席してすぐに彼なりの言い訳を聞かされると思いきや、まるでご機嫌を取るかのようなクラウディオの言動に、モニカの眉間に皺が寄る。
そうすればクラウディオは、ほとほと弱りきった表情になった。
「...... すまない。気を悪くさせた女性の対処法を、私は知らないんだ」
考えようによっては、随分なことを言ってくれたクラウディオだけれど、その自覚は無い。
ただ不遜な態度ではなく心底困っている様子に、モニカは呆れを通り越して思わず吹き出してしまった。
そうすればクラウディオは、ほっとしたような笑みを向ける。
「君が自宅に戻ることは反対はしない。いつでも戻りたいときに戻れば良いし、それは、ここに来てくれる条件だ。ただ......」
「ただ?」
「明日は困ると言いたかったんだ」
「そうですか。差し支えなければ、理由を聞いても良いですか?」
どうせ馬車が急に用意できないとか、その程度のことだろうと思った。
でも、返ってきた答えは斜め上のものだった。
「明日は、私はローナという町に行かなくてはならないからだ」
「......ん?」」
首の角度が肩にくっつきそうなほど傾げたモニカは、クラウディオが何を言いたいのかしばらく考える。
結果として、信じられない結論しか出なかった。
「つまりは、領主様は一緒に付いてくる気でいたんでしょうか?」
「それ以外に何がある?」
質問を質問で返されたことより、クラウディオの考えていることが全くわからなくて、モニカはしばらく固まってしまった。
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