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3.暖炉とお茶と、紙の音
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パチッ、パチッと暖炉の薪が爆ぜる音と、カサッ、カサッという紙がめくれる音が重なる。
昼食を食べ終えた今、居間にはモニカとクラウディオの二人っきりだった。
エバは裏庭を掃除している。
騎士であるビトとアリーザ、そして政務補佐のハイネは外側の窓拭きをしている。
庭師であるガダリスは、荒れ果てた花壇を整えてくれている。
ここはモニカの自宅である。ファネーレ邸の使用人にだけ働かせるのは申し訳ない。
だが使用人一同から『是非とも旦那様のお傍に!』と頭を下げられてしまえば、モニカは嫌だと強く出ることができなかった。
「お茶……飲みますか?」
「いただこう」
手持ち無沙汰と沈黙に耐え切れなくなったモニカは、いそいそとキッチンへと移動した。
やかんに火を掛けたモニカは、棚からまだ未開封の茶葉の缶を取り出す。
先日ディエゴが届けてくれたものだ。飲めれば良いという概念から茶葉には詳しくないが、きっと良質なものだろう。
そしてポットに茶葉を入れる前に、お湯を注いで良く温める。次いでティースプーンを使って茶葉を入れる。
コポコポと沸騰したヤカンを両手で持って少し上から勢い良くお湯を注ぎ、すぐに蓋をして、じっくりと蒸らす。
並々ならぬ恩を感じているディエゴに淹れた時より丁寧で、自分でも若干引いている。両親にだって、こんな手順でお茶を淹れたことなんて無い。
どんなにズボラな性格でも、好きな人のためなら手間を惜しまない。
これこそが恋の力なのだが、モニカはまだそれに気付いていない。
きちんとティーカップにお茶を注いで、ミルクも砂糖もブランデーもトレーに入れて居間に戻れは、既にクラウディオの手によってテーブルは片付けられていた。
「危ないから私が貰おう」
モニカが何か言う前にクラウディオは素早くソファから立ち上がると、トレーを奪いテーブルに置く。
次いで茶器全てを素早く並べた。ただブランデーだけはモニカから離れた場所に置いた。
「別に飲んだりしませんよ」
「わかっている。だが、万が一のことがあるから念のためだ」
クラウディオがそう言うと、ブランデーが何だか劇薬に思えてしまうのは何故だろうと思う。
でもそんなことを言えば、憎まれ口を叩いているとしか思ってくれないはず。
クラウディオと過ごす日々は、まだ短い。手探りで彼の事を知る毎日だ。
そんな中、今のようなやり取りをされると、自分は彼の中ではあの春のお祭りの年齢まま止まってるのでは無いだろうかと疑ってしまう。
(どうやっても歳の差は埋められないんだから、私は一生、クラウディオから女性として見られることは無いのかなぁ……)
不意に湧いたそれは、思っていた以上にと寂しい気持ちになってしまった。
「もう少ししたら、これを飲めるようになる。それまでしばらくは我慢だ」
ブランデーを取り上げたことに拗ねていると判断したクラウディオは、場違いな慰めをモニカに言った。
そうですねと、言う代わりにモニカは肩をすくめることで返事とする。
そして切ない気持ちを隠すために、お茶を飲む。
ディエゴがくれたお茶は、とても香りが強く、鼻の奥がつんと痛んだ。
昼食を食べ終えた今、居間にはモニカとクラウディオの二人っきりだった。
エバは裏庭を掃除している。
騎士であるビトとアリーザ、そして政務補佐のハイネは外側の窓拭きをしている。
庭師であるガダリスは、荒れ果てた花壇を整えてくれている。
ここはモニカの自宅である。ファネーレ邸の使用人にだけ働かせるのは申し訳ない。
だが使用人一同から『是非とも旦那様のお傍に!』と頭を下げられてしまえば、モニカは嫌だと強く出ることができなかった。
「お茶……飲みますか?」
「いただこう」
手持ち無沙汰と沈黙に耐え切れなくなったモニカは、いそいそとキッチンへと移動した。
やかんに火を掛けたモニカは、棚からまだ未開封の茶葉の缶を取り出す。
先日ディエゴが届けてくれたものだ。飲めれば良いという概念から茶葉には詳しくないが、きっと良質なものだろう。
そしてポットに茶葉を入れる前に、お湯を注いで良く温める。次いでティースプーンを使って茶葉を入れる。
コポコポと沸騰したヤカンを両手で持って少し上から勢い良くお湯を注ぎ、すぐに蓋をして、じっくりと蒸らす。
並々ならぬ恩を感じているディエゴに淹れた時より丁寧で、自分でも若干引いている。両親にだって、こんな手順でお茶を淹れたことなんて無い。
どんなにズボラな性格でも、好きな人のためなら手間を惜しまない。
これこそが恋の力なのだが、モニカはまだそれに気付いていない。
きちんとティーカップにお茶を注いで、ミルクも砂糖もブランデーもトレーに入れて居間に戻れは、既にクラウディオの手によってテーブルは片付けられていた。
「危ないから私が貰おう」
モニカが何か言う前にクラウディオは素早くソファから立ち上がると、トレーを奪いテーブルに置く。
次いで茶器全てを素早く並べた。ただブランデーだけはモニカから離れた場所に置いた。
「別に飲んだりしませんよ」
「わかっている。だが、万が一のことがあるから念のためだ」
クラウディオがそう言うと、ブランデーが何だか劇薬に思えてしまうのは何故だろうと思う。
でもそんなことを言えば、憎まれ口を叩いているとしか思ってくれないはず。
クラウディオと過ごす日々は、まだ短い。手探りで彼の事を知る毎日だ。
そんな中、今のようなやり取りをされると、自分は彼の中ではあの春のお祭りの年齢まま止まってるのでは無いだろうかと疑ってしまう。
(どうやっても歳の差は埋められないんだから、私は一生、クラウディオから女性として見られることは無いのかなぁ……)
不意に湧いたそれは、思っていた以上にと寂しい気持ちになってしまった。
「もう少ししたら、これを飲めるようになる。それまでしばらくは我慢だ」
ブランデーを取り上げたことに拗ねていると判断したクラウディオは、場違いな慰めをモニカに言った。
そうですねと、言う代わりにモニカは肩をすくめることで返事とする。
そして切ない気持ちを隠すために、お茶を飲む。
ディエゴがくれたお茶は、とても香りが強く、鼻の奥がつんと痛んだ。
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