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グリジットの懸念
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ファルナが部屋を去り、パタンと扉が閉じたのを確認すると、グリジットは肺が空っぽになるほど息を吐いた。
(......まいったな。まさかここまで条件の揃った女性が現れるとは)
グリジットが出した求人広告には、ほんのちょっぴり仕掛けがしてある。
未婚で、健康で、処女で、性の知識が乏しく、口が堅くて、どうしても働かなくてはいけない事情を抱えた妙齢の女性にしか見えないというもの。
それは魔法と言うには稚拙で、でも誰でもできるほど簡単なものでもなく、選ばれた者だけが使える呪いに近いそれ。市政の人間は、呪いの存在すら知らないだろう。
ちなみに呪いを使えるのは、レド国では十数名......いや、数名しかいない。
そんな稀少な術を使えるグリジットは、高貴な血が流れている。ほんの2年前まで国王陛下と呼ばれていた存在だったりもする。
ただ諸般の事情で、グリジットが国を治めていたことは限られた人間だけ。いわゆる影武者のような、または繋ぎ要員としてグリジットは国王陛下だった。
そんな微妙な経歴を持つグリジットは、手放してしまった地位にも名誉にもまったく未練は無い。運悪く側室だった母親が正室より先に自分を産んでしまったせいで厄介事を押し付けられてしまったと思っている。
だから正室の息子に無事玉座を渡すことができて、せいせいしている。
そして無事、自由の身になれたので趣味の夜のお薬開発に没頭している......わけではない。
グリジットがこんないかがわしい薬を開発する羽目になったのは、実はとある人から頼まれたから。失敗してしまった初夜をやり直すための補助薬を開発してほしいと依頼を受けたのだ。
グリジットは国王陛下時代に、何度も暗殺されそうになった。
面と向かって剣を向けられるなら良い方で、寝込みを襲われるなど日常茶飯事。政務中に毒矢が飛んでくるのはデフォルト。そして口に入れるものには、しょっちゅう毒が盛られていた。
もともとグリジットは王位などこれっぽっちも興味が無かった。
でも元国王陛下が急死し、正室の息子がまだ成人前で、適任者がいないだけという事情で国を治めていただけ。好き好んで玉座に座っているわけではなかったグリジットは、勝手に不穏分子扱いされることに大変遺憾だった。
いっそ玉座など蹴っ飛ばしてやろうかと思ったことなど数知れない。しかし、そうもできない事情があってグリジットは己の身を守りつつ、政務を行うことを選んだ。
その結果、無駄に毒の知識が増えてしまった。今では、レド国中にある毒薬をそらで言えるほど。ただこんな知識は、覚えたところで虚しいだけ。
しかしながら、毒は使い方次第では薬にもなる。
だからグリジットは、望んだつもりは一切無いのに得てしまった知識を、民の為に活かそうと決めた。そして、医者になった。
といってもグリジットは、まだ医者の看板を堂々と掲げることができない。
それはなぜかというと、今、グリジットは元国王陛下という立場になったけれど監視が付いている身で。そして、本当の自由を手に入れる為の取り引きの真っ最中なのである。
(......まいったな。まさかここまで条件の揃った女性が現れるとは)
グリジットが出した求人広告には、ほんのちょっぴり仕掛けがしてある。
未婚で、健康で、処女で、性の知識が乏しく、口が堅くて、どうしても働かなくてはいけない事情を抱えた妙齢の女性にしか見えないというもの。
それは魔法と言うには稚拙で、でも誰でもできるほど簡単なものでもなく、選ばれた者だけが使える呪いに近いそれ。市政の人間は、呪いの存在すら知らないだろう。
ちなみに呪いを使えるのは、レド国では十数名......いや、数名しかいない。
そんな稀少な術を使えるグリジットは、高貴な血が流れている。ほんの2年前まで国王陛下と呼ばれていた存在だったりもする。
ただ諸般の事情で、グリジットが国を治めていたことは限られた人間だけ。いわゆる影武者のような、または繋ぎ要員としてグリジットは国王陛下だった。
そんな微妙な経歴を持つグリジットは、手放してしまった地位にも名誉にもまったく未練は無い。運悪く側室だった母親が正室より先に自分を産んでしまったせいで厄介事を押し付けられてしまったと思っている。
だから正室の息子に無事玉座を渡すことができて、せいせいしている。
そして無事、自由の身になれたので趣味の夜のお薬開発に没頭している......わけではない。
グリジットがこんないかがわしい薬を開発する羽目になったのは、実はとある人から頼まれたから。失敗してしまった初夜をやり直すための補助薬を開発してほしいと依頼を受けたのだ。
グリジットは国王陛下時代に、何度も暗殺されそうになった。
面と向かって剣を向けられるなら良い方で、寝込みを襲われるなど日常茶飯事。政務中に毒矢が飛んでくるのはデフォルト。そして口に入れるものには、しょっちゅう毒が盛られていた。
もともとグリジットは王位などこれっぽっちも興味が無かった。
でも元国王陛下が急死し、正室の息子がまだ成人前で、適任者がいないだけという事情で国を治めていただけ。好き好んで玉座に座っているわけではなかったグリジットは、勝手に不穏分子扱いされることに大変遺憾だった。
いっそ玉座など蹴っ飛ばしてやろうかと思ったことなど数知れない。しかし、そうもできない事情があってグリジットは己の身を守りつつ、政務を行うことを選んだ。
その結果、無駄に毒の知識が増えてしまった。今では、レド国中にある毒薬をそらで言えるほど。ただこんな知識は、覚えたところで虚しいだけ。
しかしながら、毒は使い方次第では薬にもなる。
だからグリジットは、望んだつもりは一切無いのに得てしまった知識を、民の為に活かそうと決めた。そして、医者になった。
といってもグリジットは、まだ医者の看板を堂々と掲げることができない。
それはなぜかというと、今、グリジットは元国王陛下という立場になったけれど監視が付いている身で。そして、本当の自由を手に入れる為の取り引きの真っ最中なのである。
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