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【夜の治験 中級編】 メイドは見た。ご主人様のアレを
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「ところでファルナ、君はなんでまたこんなところに居るんだい?」
気さくに話しかけてくるロガートは、ファルナの顔色が青白いのは寒さ故だと思っているようだ。
「ロガ……いえ、バリタさまこそ、どうしてこんな森の中にいらっしゃるんですか?」
すぐ近くにある病院で医師の専属メイドをしている、とは言いたくないファルナは、卑怯だとはわかっているが、質問を質問で返すことにした。
「俺は父上と狩りを」
「さようですか。良いご成果を出されることを祈ってます」
ロガートの言葉を遮って、ファルナは回れ右をした。
元婚約者にだって会いたくなかったけれど、その父親であるバリタ卿にはもっと会いたくない。
かつてファルナの両親の訃報を聞いたバリタ卿は、一目散にファルナの屋敷を訪ねてきた。
てっきりお悔やみの言葉を頂けると思っていたファルナは、馬鹿丁寧にバリタ卿を客間に迎えてしまった。
しかしバリタ卿は、お茶を飲む時間すら惜しんで、ファルナに一方的な婚約破棄を告げた。そしてあまりの急な展開に呆然とするファルナを残して、さっさと帰宅した。
そんな過去を持つバリタ卿に対して、ファルナは憎しみより恐怖のほうが強かった。
しかし婚約破棄となった経緯を父親からどう聞いたのかわからないが、ロガートは再び「待って」とファルナを引き留める。
「なぁ、久々の再会なのに、ちょっと素っ気なさ過ぎるんじゃない?」
「……そう見えてしまっていたなら、お詫びします。申し訳ありません」
「その言い方も、他人行儀」
「……もう他人ですから、この話し方で問題ないかと」
「へぇー、随分と切り替えが早いんだね、ファルナは」
「なっ」
随分なことを言われたファルナは、思わず激高する。
しかし、目の前にいる元婚約者は、もっと不機嫌だった。
「あのさ、俺、心配してたんだよ?それなのに、その態度って何?それに父上から聞いたけれど、婚約破棄だって君から望んだそうじゃないか。そりゃあ、今となったら君の家は大変な状況になったから婚約は破棄するしかなかったけど、それでも、婚約者である僕を無視して父上に告げるのはちょっとどうかと思うよ?」
「……ごめんなさい」
口では心配してると言いつつ、言葉として出てくるのは蔑ろにされたことに対する不満だけ。
(婚約を破棄したのは、あなたのお父様なのよ)
そう言ってやりたかった。
しかしロガートは、盲目的にバリタ卿の言葉だけを信じている。彼の口ぶりからして、一度だって自分の父親に疑いの目を向けたことはなさそうだ。
「なあファルナ、答えろよ」
「……ごめんなさい」
「何が”ごめんなさい”なんだよ」
「……ごめんなさい、ごめんなさい」
「そうじゃなくってさ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
(謝るから、いっぱい謝るから、どうかもう放っておいて。お願いだから)
ファルナは馬鹿の一つ覚えのように謝罪の言葉だけを繰り返す。
何が悪かったなど、わからない。そんなの、こっちが教えて欲しい。でも誰に何を聞けば良いのかすらわからないんだから、答えなんて出ない。
両親だって好きで死んだわけじゃない。財産を根こそぎ奪った親せきだって、こっちが頼んで呼んだわけじゃない。
なのに一方的な目線でだけで責められるのなら─── もうファルナは謝ることしかできなかった。
けれどもロガートは益々苛立ちを募らせる。そして、とうとうファルナの腕を掴んだ。
「離して!」
ファルナの口から悲鳴に似た声が出る。怖気が全身に走る。
咄嗟に掴まれた腕を振りほどこうとしても、ロガートは離すもんかと益々力を込める。
「嫌っ、お願いっ、離して!!」
ファルナが再び悲鳴を上げ、渾身の力でもがこうとしたその瞬間───
「やめろ。この娘に何をしている?」
真冬の湖畔よりもっともっと冷たい声が、一面銀世界に覆われたた森の中に静かに響いた。
気さくに話しかけてくるロガートは、ファルナの顔色が青白いのは寒さ故だと思っているようだ。
「ロガ……いえ、バリタさまこそ、どうしてこんな森の中にいらっしゃるんですか?」
すぐ近くにある病院で医師の専属メイドをしている、とは言いたくないファルナは、卑怯だとはわかっているが、質問を質問で返すことにした。
「俺は父上と狩りを」
「さようですか。良いご成果を出されることを祈ってます」
ロガートの言葉を遮って、ファルナは回れ右をした。
元婚約者にだって会いたくなかったけれど、その父親であるバリタ卿にはもっと会いたくない。
かつてファルナの両親の訃報を聞いたバリタ卿は、一目散にファルナの屋敷を訪ねてきた。
てっきりお悔やみの言葉を頂けると思っていたファルナは、馬鹿丁寧にバリタ卿を客間に迎えてしまった。
しかしバリタ卿は、お茶を飲む時間すら惜しんで、ファルナに一方的な婚約破棄を告げた。そしてあまりの急な展開に呆然とするファルナを残して、さっさと帰宅した。
そんな過去を持つバリタ卿に対して、ファルナは憎しみより恐怖のほうが強かった。
しかし婚約破棄となった経緯を父親からどう聞いたのかわからないが、ロガートは再び「待って」とファルナを引き留める。
「なぁ、久々の再会なのに、ちょっと素っ気なさ過ぎるんじゃない?」
「……そう見えてしまっていたなら、お詫びします。申し訳ありません」
「その言い方も、他人行儀」
「……もう他人ですから、この話し方で問題ないかと」
「へぇー、随分と切り替えが早いんだね、ファルナは」
「なっ」
随分なことを言われたファルナは、思わず激高する。
しかし、目の前にいる元婚約者は、もっと不機嫌だった。
「あのさ、俺、心配してたんだよ?それなのに、その態度って何?それに父上から聞いたけれど、婚約破棄だって君から望んだそうじゃないか。そりゃあ、今となったら君の家は大変な状況になったから婚約は破棄するしかなかったけど、それでも、婚約者である僕を無視して父上に告げるのはちょっとどうかと思うよ?」
「……ごめんなさい」
口では心配してると言いつつ、言葉として出てくるのは蔑ろにされたことに対する不満だけ。
(婚約を破棄したのは、あなたのお父様なのよ)
そう言ってやりたかった。
しかしロガートは、盲目的にバリタ卿の言葉だけを信じている。彼の口ぶりからして、一度だって自分の父親に疑いの目を向けたことはなさそうだ。
「なあファルナ、答えろよ」
「……ごめんなさい」
「何が”ごめんなさい”なんだよ」
「……ごめんなさい、ごめんなさい」
「そうじゃなくってさ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
(謝るから、いっぱい謝るから、どうかもう放っておいて。お願いだから)
ファルナは馬鹿の一つ覚えのように謝罪の言葉だけを繰り返す。
何が悪かったなど、わからない。そんなの、こっちが教えて欲しい。でも誰に何を聞けば良いのかすらわからないんだから、答えなんて出ない。
両親だって好きで死んだわけじゃない。財産を根こそぎ奪った親せきだって、こっちが頼んで呼んだわけじゃない。
なのに一方的な目線でだけで責められるのなら─── もうファルナは謝ることしかできなかった。
けれどもロガートは益々苛立ちを募らせる。そして、とうとうファルナの腕を掴んだ。
「離して!」
ファルナの口から悲鳴に似た声が出る。怖気が全身に走る。
咄嗟に掴まれた腕を振りほどこうとしても、ロガートは離すもんかと益々力を込める。
「嫌っ、お願いっ、離して!!」
ファルナが再び悲鳴を上げ、渾身の力でもがこうとしたその瞬間───
「やめろ。この娘に何をしている?」
真冬の湖畔よりもっともっと冷たい声が、一面銀世界に覆われたた森の中に静かに響いた。
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