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【夜の治験 卒業編】 メイドは一晩限りの過ちを望む
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一晩の過ちを望んだファルナであったが、グリジットを騙して媚薬を飲ませることには最後まで抵抗があった。
もちろん崇高な医者とて白衣を脱いだらただの男だと軽んじたわけでもなかった。
でもファルナは知っている。もう夜のお薬を研究する必要が無いことを。
しかしグリジットは、まだ研究途中だという体で自分に協力を求めた。言い換えるなら、彼にだって大なり小なり自分に触れたいという欲求があったはず。
......なのに。
......なのにグリジットは椅子から立ち上がると、ファルナから距離を取った。
「今すぐここを出ていきなさい」
そう言った後、はぁっと熱っぽい息を吐きながら、グリジットは苦しげに己のシャツの胸元をぎゅっと握りしめる。
「ファルナ、聞いているのか?今すぐこの部屋から出ていくんだ」
拒絶の言葉を吐かれ深く傷つくファルナに、グリジットは同じ台詞を繰り返す。
「......い、嫌です」
これまで一度もファルナはグリジットの命令に背いたことが無かった。でも今日に限っては、雇用主の命令などくそくらえだ。
「先生が抱いてくれるまで出ていきません」
「っ......困らせないでくれ、頼む」
一瞬、怒鳴り付けようとしたのだろう。グリジットの目がつり上がった。けれども瞬きをする間に、その表情は弱りきったものに変わる。
「......先生」
壁にもたれながら息を荒くするグリジットにもどかしさを覚え、ファルナはショールを脱ぎ捨て一歩近づく。
「来るな」
「......嫌です」
「本当に......頼む。良い子だから、今日は自分の部屋に戻るんだ。話は明日聞く。だから」
「嫌っ」
この期に及んでまだ自分を子供扱いするグリジットに腹が立つ。そしてずっと隠していた本音が耐えきれずに溢れてしまう。
「せ......先生にとって私はただの助手でしかないんですか?どんだけ頑張っても、女性とし見ることはできませんか?私はそんなに魅力が無いですか?......これまで触れていただいた時、ちょっとでも私とそういうことをしたいって思ってくれたことはないのですか!?」
感情が高ぶって、まるで子供のような舌っ足らずな言い方になってしまった。
(ああ......きっと私のこういうところがダメなんだ)
恥ずかしさと悔しさと情けなさで、身体が自分の意思とは無関係にぶるぶると震えてしまう。
「......ファルナ。私は───」
「あのね、先生。私......私は先生に触れられて嬉しいって思ってました。約束なんて無効で良いとすら思ってたんですよ」
グリジットから紡がれる言葉を聞くのが怖くて、ファルナは彼の言葉を遮ってそう言った。もう、どうにでもなれと自棄になった気持ちで。
そんなファルナの告白を聞いたグリジットは、何度も口を開いて、閉じて。それを何度も繰り返してようやっと言葉を絞り出す。
「君の気持ちは良くわかった。でも今日は部屋に戻りなさい。......今日はダメだ。これ以上、君の話を聞くことはできない」
「......っ」
結局、自分の主張を曲げないグリジットにファルナは失望した。
─── だから、奥の手を使うことにした。
「そうですか。......わかりました、先生」
つい今しがた癇癪を起こしたのが嘘のように、ファルナは冷めた目で頷くと数歩後退する。そしてしっかりグリジットと距離を取ると、手に持っている小瓶の蓋を開けた。
「なっ......待て、ファルナっ。それは」
ファルナが何をするのか気付いたグリジットは、大股でこちらに近づく。けれどタッチの差でファルナは小瓶に入っていた液体を飲み干した。
次いで手の甲で口許を拭うと、唖然とするグリジットに向け口を開く。
「先生、私、間違って媚薬を飲んでしまいました。だから今すぐ治療してください」
急患を見捨てることなんでできないでしょう。だって先生はお医者様なんですから。
感情を一切乗せない声でファルナはそう言った。
もちろん崇高な医者とて白衣を脱いだらただの男だと軽んじたわけでもなかった。
でもファルナは知っている。もう夜のお薬を研究する必要が無いことを。
しかしグリジットは、まだ研究途中だという体で自分に協力を求めた。言い換えるなら、彼にだって大なり小なり自分に触れたいという欲求があったはず。
......なのに。
......なのにグリジットは椅子から立ち上がると、ファルナから距離を取った。
「今すぐここを出ていきなさい」
そう言った後、はぁっと熱っぽい息を吐きながら、グリジットは苦しげに己のシャツの胸元をぎゅっと握りしめる。
「ファルナ、聞いているのか?今すぐこの部屋から出ていくんだ」
拒絶の言葉を吐かれ深く傷つくファルナに、グリジットは同じ台詞を繰り返す。
「......い、嫌です」
これまで一度もファルナはグリジットの命令に背いたことが無かった。でも今日に限っては、雇用主の命令などくそくらえだ。
「先生が抱いてくれるまで出ていきません」
「っ......困らせないでくれ、頼む」
一瞬、怒鳴り付けようとしたのだろう。グリジットの目がつり上がった。けれども瞬きをする間に、その表情は弱りきったものに変わる。
「......先生」
壁にもたれながら息を荒くするグリジットにもどかしさを覚え、ファルナはショールを脱ぎ捨て一歩近づく。
「来るな」
「......嫌です」
「本当に......頼む。良い子だから、今日は自分の部屋に戻るんだ。話は明日聞く。だから」
「嫌っ」
この期に及んでまだ自分を子供扱いするグリジットに腹が立つ。そしてずっと隠していた本音が耐えきれずに溢れてしまう。
「せ......先生にとって私はただの助手でしかないんですか?どんだけ頑張っても、女性とし見ることはできませんか?私はそんなに魅力が無いですか?......これまで触れていただいた時、ちょっとでも私とそういうことをしたいって思ってくれたことはないのですか!?」
感情が高ぶって、まるで子供のような舌っ足らずな言い方になってしまった。
(ああ......きっと私のこういうところがダメなんだ)
恥ずかしさと悔しさと情けなさで、身体が自分の意思とは無関係にぶるぶると震えてしまう。
「......ファルナ。私は───」
「あのね、先生。私......私は先生に触れられて嬉しいって思ってました。約束なんて無効で良いとすら思ってたんですよ」
グリジットから紡がれる言葉を聞くのが怖くて、ファルナは彼の言葉を遮ってそう言った。もう、どうにでもなれと自棄になった気持ちで。
そんなファルナの告白を聞いたグリジットは、何度も口を開いて、閉じて。それを何度も繰り返してようやっと言葉を絞り出す。
「君の気持ちは良くわかった。でも今日は部屋に戻りなさい。......今日はダメだ。これ以上、君の話を聞くことはできない」
「......っ」
結局、自分の主張を曲げないグリジットにファルナは失望した。
─── だから、奥の手を使うことにした。
「そうですか。......わかりました、先生」
つい今しがた癇癪を起こしたのが嘘のように、ファルナは冷めた目で頷くと数歩後退する。そしてしっかりグリジットと距離を取ると、手に持っている小瓶の蓋を開けた。
「なっ......待て、ファルナっ。それは」
ファルナが何をするのか気付いたグリジットは、大股でこちらに近づく。けれどタッチの差でファルナは小瓶に入っていた液体を飲み干した。
次いで手の甲で口許を拭うと、唖然とするグリジットに向け口を開く。
「先生、私、間違って媚薬を飲んでしまいました。だから今すぐ治療してください」
急患を見捨てることなんでできないでしょう。だって先生はお医者様なんですから。
感情を一切乗せない声でファルナはそう言った。
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