銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 翌朝、賑やかな街を出て大通りを外れ、人があまり通っていない細い道へと入った。
 王都に向かうにしてはずいぶんと寂しい道だ。それにリアムから逃げるには、人通りが多い方が都合がいい。だからもしリアムが気の向くままに進んでいるだけなら、再び大通りに戻って欲しいと思い馬をリアムの隣に並べた。

「ねぇ、どこに行くの?この道の先にリアムの城があるの?」
「ん?ないよ」
「えっ?城に戻ってるんじゃないの?」
「ああ。まだ戻らない」
「じゃあどこに…」
「フィーのイヴァル帝国とは反対側のトルーキル国に行く」
「…どうして?」
「俺は諸国を旅していると話しただろう?イヴァルとその向こう側の国には行ったが、反対側はまだだ。だから俺の妻になるのはもうしばらく待っていてくれ」

 僕はロロの手綱を引いてリアムの馬の後ろに下がった。
 それを見たリアムも手綱を引き、僕の隣に並ぶ。

「どうした?そんなに早く俺の妻になりたかったのか?んんっ、フィーがどうしてもと言うならすぐに城に戻って式を挙げても」
「違うよ」
「え?」

 このまま放っていたら本当に城に戻って式を挙げそうな勢いだ。
 僕はロロの足を止めると、まっすぐにリアムの目を見つめた。

「リアム、僕はリアムの妻になると承諾していない。だから旅が終わってもリアムの城には行かない。なんなら旅の途中で僕を放り出してもらってもいい」
「嫌だ」
「…え?」

 リアムは馬の身体が触れるくらいにピタリと寄ってきて、左手で僕の右手を握りしめた。

「俺はフィーを放さない。放したくない。傍にいて欲しい。妻になって欲しい。でも…無理強いはしない。フィーがその気になってくれるまで待つ。だから…一緒に来てくれ」
「リアム…」

 あまりにも真剣な眼差しに、僕はつい小さく頷いてしまった。
 途端にリアムが安堵したように笑って、顔を寄せて僕の頬にキスをする。

「あっ!我慢するって言ったのに!」
「無理だっ!フィーが可愛すぎて無理だっ」

 僕はリアムの顔を押し退けた。しかしその手を掴まれて手の甲にもキスをされてしまう。唇が触れた所が熱くてこそばゆくて、僕は慌てて手を引いて胸の前で固く握りしめた。
 リアムがポンっと僕の頭を軽く撫でてゆっくりと進み出す。

「さっ、行くか。この先少し怪しい森を抜ける。俺から離れるなよ」
「…わかってる」

 僕は先を行くリアムの広い背中を見ながら、胸の中が痒いような変な気持ちになって、トントンと拳で胸を叩いた。
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