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第二章 組織
神とともにゆく田舎
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「……ああ、オッサン。わりい、プーアを逃しちまった」
ゴンザは報告をするために上司に電話をかける。
『あーん、もー。なーにやってんのよー! いーい? あの子はー、放っておけば神様議会の全てを覆しちゃうかもしれない危険因子なのよー? ゴンザくんには期待してたのになー、ざんねーん!』
相変わらず気持ち悪い口調だな、とゴンザは思う。
「それともう一つ報告だ。レンガイが裏切った」
『えー、ほんとー? あのレンガイくんがねえー。まー、プーアちゃんにご執心だったみたいだしー? 青春だねー』
「そんな適当でいいのかよ。……なあ、地球っつー世界のこと、なんか分かるか」
『地球ー? んー……ああ、ああ!! あそこね! はいはいはいはい! なるほどー』
「わ、分かんのかオッサン! だったら、俺を早くそこに飛ばしてくれ!」
『えー? ダメに決まってるでしょ! 君は自分が何したかわかってる? ん? ミスしたヤツにはお仕置きを。これがボクらの方針だろぉー? まずは処分を受けてもらうからねー』
「そ、それは……」
『もしかしてえー、君も従えないって言うのかい? だったらー、どうなるかー……分かってるよね』
「……了解。でもこれだけは言わせてくれ。その口調、ホントにやめてくれ」
ゴンザは通話を切ると、携帯電話を乱暴に床に叩きつけた。
「あのキモチわりいオッサン、いつか必ず殺してやる!!」
ゴンザはプーアに言われた一言を思い出した。そのせいで、また頭に血が上り、壁に穴をぶち開けてしまった。
真っ青な大空にでかい入道雲が浮かんでいる。遠くはどの方向を見渡しても、山、山、山……。道路沿いにオンボロな建物が点在している。セミがうるさい。うるさい。暑い。プーアはうんざりしていた。
「はあ……ここがアンタの管理する世界――地球?」
「そうだよ、プーアちゃん。その上、ここは地球の中でも小さな島国……日本。その日本の中でも最も地味な町。こんなヘンピなところまでは上界の連中も探しに来ないだろうって算段さ」
「アタシ、下界に来るのなんて初めて。でも、なんか期待と違うわね……」
プーアはしょんぼりとした。
「仕方ないよ。大陸や日本の首都のほうに行けばそれはそれは夢のような世界が広がっているけれど、そんな目立つところに居たら簡単に捕まってしまう。僕らは永遠の愛を誓った婚約者同士だけど、神の座を追われた身でもあるんだ」
「後半部分は賛成。でも婚約者ではないから。……それより、アタシ歩き疲れたの。いつまで歩くのよ」
レンガイは、プーアがイラつき始めているのを感じ取った。
「落ち着いて。んーとね、あと30分ぐらいで僕の隠れ家に付くから」
「さんじゅっぷん!? アンタ、自分でアタシのことお嫁さんとか言ってなかった? へえ、お嫁さんにそんなに歩かせるんだ」
疲れ果てたプーアは強権を発動した。レンガイは喜び、プーアのことをおぶって、また歩き始める。
「いやあ、嬉しいなあ。あはは。プーアちゃん、認めてくれたね、僕は君のフィアンセだよ。うん、事態が落ち着いたら、本当にここで結婚式を挙げよう! うん、うん」
「利用しているだけですケド……」
プーアは小さく呟いた。レンガイには聞こえていないようだった。
「ねえ、アンタってもしかして、アタシの為ならなんだってするの?」
「当たり前だよプーアちゃん! 君のためなら1000回でも死んでみせる!」
純粋な笑顔(気持ち悪いとは思う)で答えるレンガイを見て、プーアも思わず微笑んだ。「こんな日がずっと続けばいいなあ」そんなレンガイの呟きに、「そうね……」とプーアは一応頷いた。
「ちょっと。異様にボロくない? アンタの隠れ家どうなってるのよ」
2人が辿り着いた場所は、いかにも呪われてるような真っ黒な家だった。
「うーん。これは霊が住み着いちゃってるね。ボクらの新婚生活の前に、ひと仕事しないと……」
「ホントに調子のってるわね」
「ここから先は神様である僕の仕事だ。あの霊を追い払おう」
「え、アンタ、そういうことちゃんとできるんだ」
ただの変態ストーカーだと思っていたので、プーアは驚きが隠せない様子だった。
「うん……まあ、この地球に限っては、霊媒師とかいろいろ居るっぽくて、別に僕が直接手を下さなくてもいいんだけど」
じゃあ僕は行ってくるから!と言い残して、レンガイは家の中に入っていった。
プーアは考える。神様の仕事は、主に自分の管理している世界の見守りだ。あらゆる事象を操作して、下界に暮らす人々が平和に暮らせるようにする。今のレンガイの様子を見ていると、おそらくはしっかりやっているのだろう。
プーアはどうしようもないやるせなさを感じた。……レンガイは、アホみたいな性格で気持ち悪いヤツだけど、やるべきことはきちんとやるヤツだ。それに比べて自分は、神としての仕事もままならず、遂にはハメられて邪神へと成り下がってしまった。
「ふう! 成仏させたよ、プーアちゃん。なんか、この世の女の人に夢中な若い男の幽霊だったよ。うーん、なかなか共感できる話でね。泣きそうになった」
「……プーアちゃん? おーい。聞いてる?」
ゴンザは報告をするために上司に電話をかける。
『あーん、もー。なーにやってんのよー! いーい? あの子はー、放っておけば神様議会の全てを覆しちゃうかもしれない危険因子なのよー? ゴンザくんには期待してたのになー、ざんねーん!』
相変わらず気持ち悪い口調だな、とゴンザは思う。
「それともう一つ報告だ。レンガイが裏切った」
『えー、ほんとー? あのレンガイくんがねえー。まー、プーアちゃんにご執心だったみたいだしー? 青春だねー』
「そんな適当でいいのかよ。……なあ、地球っつー世界のこと、なんか分かるか」
『地球ー? んー……ああ、ああ!! あそこね! はいはいはいはい! なるほどー』
「わ、分かんのかオッサン! だったら、俺を早くそこに飛ばしてくれ!」
『えー? ダメに決まってるでしょ! 君は自分が何したかわかってる? ん? ミスしたヤツにはお仕置きを。これがボクらの方針だろぉー? まずは処分を受けてもらうからねー』
「そ、それは……」
『もしかしてえー、君も従えないって言うのかい? だったらー、どうなるかー……分かってるよね』
「……了解。でもこれだけは言わせてくれ。その口調、ホントにやめてくれ」
ゴンザは通話を切ると、携帯電話を乱暴に床に叩きつけた。
「あのキモチわりいオッサン、いつか必ず殺してやる!!」
ゴンザはプーアに言われた一言を思い出した。そのせいで、また頭に血が上り、壁に穴をぶち開けてしまった。
真っ青な大空にでかい入道雲が浮かんでいる。遠くはどの方向を見渡しても、山、山、山……。道路沿いにオンボロな建物が点在している。セミがうるさい。うるさい。暑い。プーアはうんざりしていた。
「はあ……ここがアンタの管理する世界――地球?」
「そうだよ、プーアちゃん。その上、ここは地球の中でも小さな島国……日本。その日本の中でも最も地味な町。こんなヘンピなところまでは上界の連中も探しに来ないだろうって算段さ」
「アタシ、下界に来るのなんて初めて。でも、なんか期待と違うわね……」
プーアはしょんぼりとした。
「仕方ないよ。大陸や日本の首都のほうに行けばそれはそれは夢のような世界が広がっているけれど、そんな目立つところに居たら簡単に捕まってしまう。僕らは永遠の愛を誓った婚約者同士だけど、神の座を追われた身でもあるんだ」
「後半部分は賛成。でも婚約者ではないから。……それより、アタシ歩き疲れたの。いつまで歩くのよ」
レンガイは、プーアがイラつき始めているのを感じ取った。
「落ち着いて。んーとね、あと30分ぐらいで僕の隠れ家に付くから」
「さんじゅっぷん!? アンタ、自分でアタシのことお嫁さんとか言ってなかった? へえ、お嫁さんにそんなに歩かせるんだ」
疲れ果てたプーアは強権を発動した。レンガイは喜び、プーアのことをおぶって、また歩き始める。
「いやあ、嬉しいなあ。あはは。プーアちゃん、認めてくれたね、僕は君のフィアンセだよ。うん、事態が落ち着いたら、本当にここで結婚式を挙げよう! うん、うん」
「利用しているだけですケド……」
プーアは小さく呟いた。レンガイには聞こえていないようだった。
「ねえ、アンタってもしかして、アタシの為ならなんだってするの?」
「当たり前だよプーアちゃん! 君のためなら1000回でも死んでみせる!」
純粋な笑顔(気持ち悪いとは思う)で答えるレンガイを見て、プーアも思わず微笑んだ。「こんな日がずっと続けばいいなあ」そんなレンガイの呟きに、「そうね……」とプーアは一応頷いた。
「ちょっと。異様にボロくない? アンタの隠れ家どうなってるのよ」
2人が辿り着いた場所は、いかにも呪われてるような真っ黒な家だった。
「うーん。これは霊が住み着いちゃってるね。ボクらの新婚生活の前に、ひと仕事しないと……」
「ホントに調子のってるわね」
「ここから先は神様である僕の仕事だ。あの霊を追い払おう」
「え、アンタ、そういうことちゃんとできるんだ」
ただの変態ストーカーだと思っていたので、プーアは驚きが隠せない様子だった。
「うん……まあ、この地球に限っては、霊媒師とかいろいろ居るっぽくて、別に僕が直接手を下さなくてもいいんだけど」
じゃあ僕は行ってくるから!と言い残して、レンガイは家の中に入っていった。
プーアは考える。神様の仕事は、主に自分の管理している世界の見守りだ。あらゆる事象を操作して、下界に暮らす人々が平和に暮らせるようにする。今のレンガイの様子を見ていると、おそらくはしっかりやっているのだろう。
プーアはどうしようもないやるせなさを感じた。……レンガイは、アホみたいな性格で気持ち悪いヤツだけど、やるべきことはきちんとやるヤツだ。それに比べて自分は、神としての仕事もままならず、遂にはハメられて邪神へと成り下がってしまった。
「ふう! 成仏させたよ、プーアちゃん。なんか、この世の女の人に夢中な若い男の幽霊だったよ。うーん、なかなか共感できる話でね。泣きそうになった」
「……プーアちゃん? おーい。聞いてる?」
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