強がりな邪神ちゃんのストーカーは僕

おかだしゅうた。

文字の大きさ
25 / 36
第三章 能力の覚醒

心眼は邪気眼か?

しおりを挟む
「レンガイの兄ちゃん。人の姉ちゃんの手を急に握って、『サイダー買ってきて』ってどういうことだよ?」
 その指摘を受けて、慌てて手を放すレンガイ。謎のジェスチャーを加えながら、言い訳を始める。
「べ、別にサイダーは買ってこなくていいから! ……というか、急に頭に浮かんできたんだよ。なんでか分かんないけど」
「……それは、私の、思考、だ。神レンガイ、お前は、『心眼』の、スキルが、覚醒したんだ」
 思考を読み取られたらしいヒナノは、レンガイに向かって言い放つ。あまりに突然のことだったので、レンガイは気難しい顔をする。『心眼』の意味をあまり理解できていないヒュウガは、ヒナノに聞いた。
「『心眼』って、どういうスキルなんだ?」
「……私も、文献でしか、知らない。それには、こう書いて、あった……『目に見えない真実を見抜く力』……」

「……世界を、作り出した、能力……」



 電灯もほとんどない一本道。心地よい涼しさを味わいながら、プーアは農道を歩く。
 暗闇は苦手だが、自然と恐怖は感じない。恐らく、この地球という世界の、穏やかな環境のおかげだろう。
 プーアは、その美しい世界を見守り続けていた神――レンガイのことを、頭に思い浮かべた。ここ最近、どうもレンガイと一緒にいると居心地の悪さを感じてしまう。理由は分かる。結果的に失敗に終わってしまったとはいえ、レンガイへの気持ちを直接伝えたからだ。……「好き」と伝えた訳だが、そもそもその気持ちが本物かすらも分からない。一時の感情の昂ぶりだったのではないか……プーアは思った。
「自分の気持ちすら完璧に分からないなんてね」
 無意識にプーアは呟く。
 体が冷えてきた。そろそろ家に戻ろう。そう思い、来た道を折り返す。プーアはそのまま道なりにのんびりと歩いていく。その時、後ろから突然声をかけられた。
「おい……プーア」

 全身が震える程の悪寒をプーアは感じた。何か、ただならない、威圧されるような感覚を覚える。ビクビクしながら、プーアは振り返った。
「……ゴンザ……!」
 特徴的な笑い声をあげながら、ニヤリと笑うゴンザ。形容し難い恐怖を感じたプーアは、反射的に一歩後ずさりをした。
「どんな気分なんだ、おい。神プーアが、邪神へ成り下がり、今度はになるってのはよ」
「……?」
 ――何を言っているんだ、コイツは。
 プーアは首を傾げた。神の座を剥奪され、邪神になったのは分かる。だが、になったというのはどういうことなのだろう。
 いまいち理解していないプーアを見て、ゴンザは唖然とした表情をする。ため息をつき、その説明を始めた。
「レンガイの野郎なら、説明していると思ったんだがな。いいか? お前は邪神である以前に、神様議会を追放された身だろう。この意味、分かってねえのか」

 ――神様議会脱退は、神様の称号を剥奪されることを意味する。しかもだ、そうなると君はただの人。強大な魔力も特殊な能力も何も使えなくなってしまう。下界に落とされ、下界の人間のように生き、下界の人間のように死ぬ。プーアちゃんには耐えられないだろうね――

「――あっ」
 プーアは思い出した。神様議会からの通告があったあの日、議会に入る前に、レンガイが言っていたセリフを。あの時は、レンガイのからかいや求婚にウンザリしていて、ほぼ聞き流していたが、まさか……。
「議会のシステムってのはなかなか面倒でな。お前の神様議会脱退の刑が正式に施行されるまでに、ずいぶんと時間がかかったんだ。――だからこそ、今、聞く」

ってのは、どんな気分なんだ? プーア」
 高々と、ゴンザは笑う。その笑い声は、いつまでも鳴り響いていた。




「世界を作り出した能力って言われてもな。で、僕の『心眼』では、具体的に何が出来るのかな。心を読むとか?」
「……心を読む、も、その1つ。ただ、能力は、『真実を見抜く』だから、それに、限定は、されない」
 なんだかとても複雑なスキルだ。レンガイは思う。
「よく分かんないけどよ。兄ちゃんのそのスキル、『プーアの心を見たい』って動機で覚醒したんだろ。それって、めちゃくちゃ気持ち悪くないか?」
 ヒュウガの呟きは、場の雰囲気を凍らせてしまった。数十秒ほどの沈黙が、部屋中を支配する。
 その状況を打開する為、ヒナノは咳払いをし、話し始める。
「……使いように、よっては、戦闘にも、役に立つ。扱いは、難しいが、強力な、スキル、だと、思う」
 レンガイは、自分の手をまじまじと見つめた。正直なところ、このスキルを有効活用する方法がいまいち思い浮かばなかった。そもそも、今はプーアによってスキルの使用が禁止されているので、使用することができないが。
「とにかくこれで、オイラ、姉ちゃん、レンガイの兄ちゃんが後天的スキルを開発したんだな。じゃあ、あとはプーアだけか」
「……ああ、後は、邪神プーア、だけ……」

「あら。もうあの子は邪神ですらないわよ」
 透き通った声が、部屋中を支配する。部屋にいた全員は、声がした方向に目を向けた。いつの間に入ってきたのだろうか。扉の前に、堂々と立つ女性が1人いた。全員の注目を集めた女性は、気品のある声で話し始める。
「アンナプルナの思いつきにはうんざりするわ。2週間くらい前はプーアに手を出すなって言ってたくせに、今日になって急に、皆殺しにしろ、だってさ」
「……! 邪神ノエル……!」
「あら、のヒナノさん。その横にはヒュウガくんも……そこのちょっとカッコいい男は――ああ、レンガイさんだっけ? アナタ達も残念ね。プーアの味方をしたばっかりに、死ぬ運命にあるなんて」
 ノエルは、気の毒そうな表情をしながら、手に持っていた扇をあおいだ。
「……お前は、1番、許せない。あらゆる、悪事を、実行した、お前は……」
 感情をあまり表に出さないヒナノが、珍しく顔をしかめている。手を強く握り締め、ノエルへの憎しみをあらわにしている。ノエルはその様子を見ていたが、全く気にはせず、言った。
「仮にも同じ四将軍だったのに。アナタも同じでしょ? 何が違うのかしら。……それよりも、私には視えるの。アナタとヒュウガくんが、最悪な死に方をする未来がね」
「……どういう、意味だ」
「ああ、いくら物知りで情報通なヒナノさんでも、私のスキルを正確に把握していないのね。いいわ、教えてあげる」

「私のスキルは2つ……『予言』と『上書き』……予言はそのままの意味。未来を視ることができるの。上書きは、趣旨が変わらない程度に、人のスキルを変えることができるスキル」
 上書き、というワードに見に覚えのあったヒュウガは、声を荒げて聞いた。
「お、おい! オイラの『最高速』を変えやがったのは、やっぱりアンタだったんだな!」
「ふふ、そうよ。が視えたからね……。ほぼ役立たずも同然でしょう?」
「クソっ! お、オイラのスキルを元通りにしやがれ!」
 ヒナノもヒュウガも、今にでも襲いかかりそうな勢いだった。ニヤリ、とノエルは笑う。その表情を保ったまま、ノエルはレンガイに向けて、言い放った。

「さて、今、プーアちゃんはどうなってるんでしょうね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...