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1》深窓の令息
しおりを挟む並ぶ文箱。
さてさて、今日はまともな文と香りである事を祈ろう。
床の間に皆な集まって私の手が動くのを待っている。
コレって妙な圧を感じて手汗をかきそうなんですけど…。かきはしないが少々息苦しい。
華族の藤堂家に生まれた男性Ω。
男性のΩは珍しい。
表に出てくるのが珍しいだけで存在しない訳ではないらしいが定かではない。
実際どうかは知らないが、必ずαを産むと言われてる事もあって、それらしい子が産まれると、バース性が未確定の就学前に囲われるらしく、日の目を見る事がないからなのではと言われている。
私は自分でも言うのもだが、太りも痩せ過ぎてもないごく普通の体型で、手足はすらっとしていて、全体に色素が薄いからか西洋人形のようだと言われる見目麗しい外見をしている。
背は兄たちに比べれば低いが一般女性よりは高い。β男性の平均身長だ。ごく普通の背丈とは言えるが、兄たちに挟まれると小さく感じてしまう。
顔も日本人離れしてるって言われてる。瞳も黒というよりは茶色がかっていて睫毛も長い。唇も頬もほんのり桜色。引き篭もってからは日焼けもそれ程しなくなったから肌は白くなって尚のこと人形じみてきてる。このちょっと垂れ目な感じも柔和に見えるんだろうなぁ。
鏡を見る度に、確かに西洋人形だなと客観的に思っては、嫌だな…となっていたが、今は別段なんとも思っていない。
そんな外見にも関わらず、誰かに囲われたりされる事もなく腕白に過ごしてた日々だったが、バース性が確定してからは、周囲の目が珍獣でも見る目つきでじろじろと…。
あの視線に耐えられず、引き篭もり人生が始まった。
引き篭もった事で誘拐などには遭遇する事はなかったが、出会いもなくなって…。学生時代の友人とも疎遠になって人の繋がりは小さいものになってしまった。
私の世界は家族と家に仕えてくれてる人々。
深窓の令息の出来上がり。中身は『深窓』などと言う響きとは程遠いが、噂はひとり歩きするものだ。
引き篭もってからの外の情報は家の者と、新聞と書物にラジオだけ。希少なラジオは外の流行歌などを文字ではなく音で教えてくれる貴重な情報源。
家族は祖父母と父母兄たち。祖父母は隠居して今は遠く離れた田舎で悠々自適に暮らしてる。
父はα。母は女性のΩ。
父も母も上位クラスのバース性で、二人の兄も二人ともに上位αであった。多分この家庭環境がその辺のαを寄せ付けなかったのだと今なら分かる。
常にスキンシップの激しい兄たちにもみくちゃにされてたから、α特有の威嚇臭がプンプンだったろう。
今でも外出時はぎゅうぎゅう抱きつかれて撫でられる。兄たちの香りは落ち着くのでされるがままにさせてるが、出る前に髪を整え直さないといけないからちょっと困る。
母が男性Ωであったら、生まれる子供は全てαだったろうが、女性では、高確率でαを産むが、能力的には上位でも確率的にはβもΩも生まれる。
士族や市井から突然変異のように上位αが稀に生まれるのは、これらが関わってると思われるが、これは余談。
余談がてらにもうひとつ。
αの多い貴族の家にΩが生まれるとαの兄弟たちと引き離されて離れて暮らす事が多いと言われてる。ヒートによる望まぬ『兄弟の番』の近親婚を避ける為だとか言われてる。
しかし、自分が証明してるが、兄弟間でフェロモンの誘惑作用は起こらない。
両親の血を受け継いでる兄弟間ではヒート時に強い香りを感じても性的な何かは起こらないのだ。不思議でもなんでもないこれが自然の摂理と感じてる。なので、介抱も出来る。兄たちとは男のゴニョゴニョを相談したりもした事もある。
要するに、離されるような事態が起こったのは血の繋がりが薄かったと言う事だと思う。
従兄弟や再従兄弟辺りだと兄たちとは違う様な感覚が少し感じていた。
今も昔も近親婚は避けたいから離して暮らして、早々に婚約や結婚をさせてしまう訳だ。
人類の構成から見れば、ほとんどがβで、ひと握りのα。そして、その番と見なされるΩは更に少ない。Ωの伴侶を得るのは、華族や士族の一部の階級の家柄とも言えた。
昔のΩはαを産む存在という扱いだから番いにせずに一族で囲って数を産ませていたとかなんとか…。番いになると他のαを受け入れられなくなるらしいからだとか…。
それも昔の話と言われてる…。
私の生家は、帝の血筋を汲むので華族の上位にはいたが末席に位置していた。小さいながらも名も通っているだけと周りの評価。
曾お爺さまが商いの才に恵まれ、小さな貿易商は大きな財を成して末席とは言えないような大きさにはなっていたが、家風か元々が質素倹約の家柄か、慎ましやかな家で目立たない存在だった。
大きな門に塀と森のような庭園の中の大きく古い和風と洋風の折衷の屋敷のひと部屋を好きな物で埋めて過ごしていた私も年頃になり、必要に迫られて見合いをする事になり注目の的だ。
そして、この文箱の儀式の始まりとなったのだ。
『嫌だ』とは言えず、貴族の仕来りの様な見合いをする事を数回。未だに初めの一歩で足踏みをしている。結婚なんて考えも浮かばないし、ヒートの度にやってるアレが誰かのとも考えられないから困った。
私はΩとしては欠陥なのかもしれないと思ったりもしている。
上位バースのおかげかヒートも狂おしい程の状態ではないと思っている。比較対象も無いのでなんともだが…。
この文箱の儀式。家紋入りの漆塗りの文箱に手書きの文が入れ、フサ付きの組み紐で封をされて届けられる。開けて、相手の香りを感じながらお手紙を読む訳なのですが…。
これは上流階級のαとΩには良くある見合いの仕方の様です。はっきり言って面倒くさい。
兄たちが仕入れてきた話では、開けた瞬間『この人かな?』というのがあるらしい。
なくても好みの香りが幾つかあるらしいのだ。
私には無いんですが???
香りは合格(上から目線でごめんね)でも文面が…。報告書でもまだマシな気がするんですけど…。私と番になったらどう有益かといった物や愛の言葉を書かれてる物もあったが、どれもこれも私の心には響かなかった。
そもそもこの文箱の成り立ちというものを考えれば…頭のいいαさんたちは判断できそうなものなのに、どうなってるんでしょうか。きっと私が引き篭もりの令息だから、なんとか興味を惹こうとしてるんでしょう…。
贅沢させてやるとかって、藤堂家の事が分かってるんだろうか。
貿易商は現当主の父の代で小さくはしたが、没落してる訳ではない。むしろ投資や何やらで財は曽祖父の財を食い潰すどころか増やして維持してる。
馬鹿にしてる。うんざりだ。
こんな文を寄越す方は、そんな事も知らないって事だ。表向きの状態しか見てないって事で却下。家の付き合いとしても及第点は上げれません(上から目線でごめんね)。
持参金ぐらい持っていくさ。それにこの投資事業は、私も噛んでいるんだよ。自分の事は自分で賄える。
多分、形式的には釣書のようなのを書けばいいと思うのに、余計な事をつらつらと書き綴って…。Ωの存在を軽視してるとしか思えない。引き篭もってるから学もないだろうとか思われてるのだろうか。人とも思われてない気もする。腹立たしい。
こういう輩はΩについても軽視してる傾向があると思う。否、女性に対してもだな。胸糞悪い。
時代は変わっていくものなのに…。いつまで経っても女性の参政権などは未だに認められない。
Ωなどαを産む道具としか見てない者の多い事か…。
長い漆塗りの文箱の中でみっちりと居座ってる文を見たら、蓋を戻したくなるってもんです。
一般的には、香りを気に入り、手紙という形式の自己紹介文を読んで、文を何度か交わし、顔お合わせして、決まるらしいんですが。気を惹こうと色々と書き過ぎだ。
文通は端折る事もあるらしんですけど、交わす事すらしてない。香りが合格水準でもね…。
目の前の両親が固唾を飲んで待ってる。両脇の兄たちも期待半分で見てます。
溜め息を呑み込みながら、深い色合いの紫檀の机に並ぶ文箱の端に手を伸ばした。
==============
あはは、また頭に湧いてきての追い出しで書いてます( ̄▽ ̄;)
さて、エッチをゴールに書いていきますよ~(^◇^;)
オメガバースの設定をお借りしての独自設定です。
よろしくお願いします。
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